はじまり
主な用語と登場人物の簡単な説明です。
読まなくても支障はありませんので
よろしければお読みください。
・登場人物
フィア:主人公の女の子。
ある使命があり、姉と共に旅をしている。
元気で素直。子供っぽい。
敏捷性に優れている。
ミュア:フィアの姉。語り手。
妹を見守りつつ、自分の使命を果たすため
旅を続けている。基本的に冷静で無愛想。
魔法に長けている。
ザイード:メラーヌの青年。
姉妹の行く末を見届ける者。
メルノ:キールの国の9代目王女。ルリッド。
魔法の基礎を作り上げた人物。
ルーフェン:ルリッドの青年。
世界の歪みの根本的な原因を作った魔術師。
・地名など
マナトの森:レーヌルたちの住む
コーリアのある神聖な森。
コーリア:レーヌルたち古いの神殿。
キール:遥か昔ルーンの地にあった大国。
ルーン:姉妹の住む小さく閉ざされた村。
フルーナ:フィアとミュアの目的地。
歪みの果てという意味を持つ。
レーヌル:コーリアに住む修道女たち。
キールの血を憎んでいる。
メラーヌ:キールの王族であった民。
現在はごく少数しかいない。
ルリッド:キールにいた民族。
・その他
ヒナ:1時、1月 フイ:2時、2月
ミリ:3時、3月 シノ:4時、4月
イル:5時、5月 ロン:6時、6月
ナリ:7時、7月 ハノ:8時、8月
クル:9時、9月 トコ:10時、10月
ヒイ:11時、11月 ユニ:12時、12月
使い方としては
例えば2月ならフイの月、4時ならシノの時
って感じです。
別にそれほど重要ではないのですが
参考程度にご覧ください。
付け足していくかもしれませんが
今のところは以上です。
この世界観をどうぞお楽しみください。
フイの月の日暮れは早い。
特にこのマナトの森では。
まだシノの時だというのに
前を行くフィナが見えにくくなるほどだ。
「ねぇ、早くってば!
すぐ帰ることになっちゃうよぉ!」
「ゆっくり行かなきゃ転ぶわよ。
そんなに急いだって変わらないわ」
「変わるもん!もう決めてるけど
ぜーんぶ見るもん!
やぁーっと自分のが持てるんだから!」
文句を言いながらも
足を止めず、前に進み続ける妹に
無駄だろうけど釘を刺す。
「あんまり時間はないからね。
ロンの時までには帰るんだから」
「えぇー!もう!!
自分にちゃんと合うのか見たいから
早く行こうって言ってたのに!!」
フィナが非難がましい声をあげ
ぷーっと頬を膨らませる。
が、すぐに弾んだ調子の声になり
「じゃぁ、早く帰って今日からしよっと。
いっぱーい練習して
お姉ちゃんと一緒に行くんだもん!」
とあどけなく笑って言った。
その曇りの全くない笑顔を見て
この子はまだ10歳なのだ…という思いが
胸におりてきた。
もう、あの世界に行かねばならない……
重い気持ちを断ち切るように尋ねる。
「…何にするの?」
フィナはその質問に可愛らしく笑うと
ひーみつ!と言った。
「言っちゃったら面白くないでしょ。
それに、すぐ帰るって言われるもん。
着いてからのお楽しみ…ってつーいた!」
コーリアが見えると
フィナは私の制止を振り切って
寂れた建物に入って行った。
……古くなった。前よりもずっと。
ぼろぼろになった柱を見上げて思う。
10年前は期待と不安とが
ないまぜになった気持ちで
この建物に呑み込まれた。
今は……嫌悪感しか浮かばない。
感傷を振り切るようにして中に入る。
風雨に晒され、建物自体は朽ち果て
いかにも侘しげな建物だが
中は外見からは想像できないほど
明るく暖かだった。
きっとレーヌルたちが火を灯したのだろう。
フィナのため……いや自分たちのために。
「おねーちゃん!こっちでしょー!」
フィナの少し呆れたような声が
私を思考の海から引き上げた。
フィナは若いレーヌルに付き添われ
私に手を振っている。
そのレーヌルの優しげな微笑を見たとき
怒りが身体の奥から湧き上がってきて
つかつかとフィナに歩み寄り
レーヌルから引き剥がすように
手を引いて歩きだした。
フィナは少し戸惑ったように
レーヌルは満足そうに私についてくる。
その2人が簡単に想像できたから
目的の部屋、メドゥリまで
一度も振り返らず歩き続けた。
メドゥリはコーリアの中心の広間だ。
奥にはミアリの間へ続く扉がある。
メドゥリには既にレーヌルが集まっていて
入ってきたフィナを興味深そうに見た。
フィナが無遠慮な視線を受けて
少し心配そうにこちらを見上げる。
大丈夫、とだけ囁いて
レーヌルの長であるパーリェに目をやると
パーリェは私の視線を受けて小さく頷いた。
……いよいよ始まるのだ。
フィナ、と呼びかける。
「今から選んでもらうけど…慎重にね」
私を見上げる少し曇っていた目が
きらきらと光を帯びた。
この子は私が守ってみせる。
ゆっくりと開いたミアリの間への扉に
駆け込んで行ったフィナを追いかけ
私もミアリの間へ入って行った。