4話 当店は閉店いたしました
俺の名前は獅子王ガイ、勇気ある(後略)。勇者……らしい。ちなみに本名。
さて、俺はいま巨大な建物の前に立っている。この街にあるギルドの相談所らしい。相談所といっても相談を受け付けるだけじゃなく各ギルドの案内所兼相談所だそうだ。
俺的な神、三井さんに言われた通りどっかで下働きを募集している店を探すためにやってきたわけだが、ギルドの案内所はそんなことまでやってるとは実に驚きだ。
「さて、入るか」
俺は両開きの扉を押して中に入った。木造の椅子やテーブルが多く並んでいるそこは俺のイメージ通りの荒くれどもが酒を飲み騒いでいるようなことが容易にできそうなつくりをしていた。そう、つくりをしているだけで実際にそうしている人間はいない。というか、人間がいない。
「あの、誰かいませんか?」
受付らしい場所にすら誰もいない。カウンターの目の前に立って声をかけても返事すらない。いったいどこのゴーストタウンだ?
どうしようもないので、人が来るまで待つしかないだろう。俺は適当な椅子を引いて座ろうとした。
「?」
椅子の色がなんだかおかしい。昼間だが、広い建物内は明かりを焚かなければほの暗い。しかし、それ以上にこの椅子は奇妙な色をしている。
俺はとりあえず椅子の上に人差し指を走らせた。
「………………」
なんだか、いじわる小姑のおそうじ検査のようだが、すくなくとも激甘に見たところでこの状態じゃ合格できまい。汚すぎ……指が真っ黒だよ。
どうやら、この椅子はしばらく使われてなかったのだろうと判断した俺は別の椅子を引いて座ろうとした。……どうやらすべての椅子が同じ状態みたいだ。
なんか廃墟みたいだな。
疑問に思った俺は仕方がないので建物内を適当に調べてみる。すると入り口近くの扉に一つの張り紙を発見した。
『閉鎖しました。御用の際は各ギルドにてお伺いいたします』
………マジで!?