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1話 いきなり捕まっちゃったんだぜ

2章開始です。


1章の時とは雰囲気とかちょっといろいろ違う面も出てくるかと思いますが、ご了承ください。


 俺の名前は獅子王 ガイ、勇気あるGGGの隊員……ではない。元高校生の勇者兼冒険者だ。ちなみに本名。

 ある日突然異世界に召喚されて、勇者だなんだ、冒険者がどうたらといろいろな紆余曲折を経て、召喚されてから暮らしていた街を離れ、隣国のイェメンへと向かっている途中だ。

 まぁ、イェメンに行くためにはいろいろと面倒なことがあって、今俺たちが向かっているのはイェメンではなくレナとスクルドの故郷であるエルフの里を目指しているわけだが


「まだつかないのか?」


 街道を1週間かけて東へ進み、森へ入ったのが昨日の話。初めて森の中で野営なんかしたけどいつモンスターに襲われるかってびくびくするせいでまともに寝られなかった。

 寝ずの番はレナがやってくれるっていうから、任せたけどこれなら俺がやってた方が気持ち的にもよかったかもしれない。

 森の中とはいえ、途中からそれなりの幅がある道みたいな場所に出たので、今は俺の乗る馬車とレナの乗る馬車は並走している。


「そろそろです」

「そろそろ、そろそろ、って昨日も言ってなかった?あと何時間で着くの?」

「見えました」

「へ?」


 レナが指差す先にはどう見ても今も左右に続いている普通の森の延長にしか見えない。が、言われてみるとどこか空気がゆがんでいるようにも見える。


「本来ならエルフ以外は通れない結界が張られているのですが、すでに解除はすんでいます」


 つまりは、空気がゆがんで見えるのは結界を解除してあるのが原因ってことでいいんだろうか?まぁ害がないっていうならそんなに気にする必要はないんだろう。

 俺の膝の上で丸まっていたスクルドの機嫌が心なしか悪そうだ。お前そんなに帰りたくないのかよ……

 スクルドの背中を軽く撫でてやっている間に空気がゆがんだ空間に馬の頭が入っていく。続いて御者の席に座っている俺もそこを越えたわけだが、目の前に広がる光景に思わず息をのんだ。


「おぉぉぉ」


 プリルとアリアも俺と同じ感想なんだろう。隣の馬車からこっちまで興奮した声が聞こえてくる。が、状況がわかっていなかった馬車を曳いている馬の方は突然景色が変わったことに混乱して足を止めた。

 当然と言えば当然だ。何の変哲もない森を越えたらそこにこんな世界が広がっているなんて誰も想像できない。

 集落と言っていいんだろうか?その中心にはたぶんおそらく神木って言われてそうな幹の太さが云十メートルっていう巨木が鎮座し、エルフの子供たちがそこかしこを走り回っている。木造の家や盛り上がった木の根の下に扉があるのは、ちょっとした竪穴式住居みたいな形で木の下に住んでいるエルフもいるんだろう。

 立ち並ぶ木々の間から差し込む陽光を受けるその集落は言葉にできないほど幻想的な光景だった。


「すげぇな。レナ、エルフの里ってこんな……」


 俺は言葉を最後まで続けることができなかった。

 なぜかって?俺の目の前を矢が通り過ぎたからさ。え、なにどゆこと?


「動くな!」


 俺たちが入ってきた入り口のすぐ横にある高台みたいな場所の上からこちらを狙っているエルフが4人。全然気が付かなかった……


「あの……怪しいものじゃないですよ?」


 銃を突き付けられた時みたいに降参って感じで両手を上げる。と、俺たちの前の方から一人のエルフが歩み寄ってくる。


「どうやってここに入ってきたかはわからないが、ずいぶんと不用意な人攫いだな」

「いや、人攫いじゃないです」

「?ならば、なぜこの場所に来たと言うのだ?君は人間だろう?」

「あの、ここに来たのはただ通り抜けるためでして、入った方法ってのもエルフの知り合いに入らせてもらったってだけなんで……」

「知り合い?」


 身のこなしからわかるが、このエルフの男はかなり強い。たぶん俺よりは間違いなく強い。ちょうど俺と三井さんの間くらいかな?

 そのエルフの男は俺から視線を外すとローブで顔を覆い隠しているレナの方に目を向けた。っていうか、レナ。さっさと顔見せて敵じゃないって知らせろよ。


「君がその知り合いかな?アンストロ」


 え!?気が付てる?顔隠しててもわかるなんてなんでだ?


「君ならばこの里に人間を入れるのが禁忌とされていることぐらいは知っているだろう。だというのになぜだ?」

「ウェルナー、あなたにはあのお方が見えないんですか?」


 レナがウェルナーと呼んだ男は、再び俺の方に目を向けた。と思ったら、目を見開いてその場に土下座する。え、なんで?


「く、クレイ様!よ、よくぞお帰りくださいました」

「?あ、あぁ……」


 なるほど、そういえばスクルドってここで神様として扱われてたんだっけ?普通に子猫みたいな感じで相手してたから忘れてた。

 高台の方も見てみたら弓を下してこっちに礼を尽くしているのが見えた。こっちっていうかスクルドにだろうけど。


「キュイ」

「っは、すぐにクレイ様のご自宅にお送りさせていただきます」

「キュイ」


 いや、ウェルナーさん?たぶんこいつ違うこと言ってますよ?

 ウェルナーさんは首を左右に振っているスクルドのことなんか無視して俺たちの乗った馬車を曳く馬をひいて歩き出した。


「きゅ、キュイ!」


 スクルド……お前が何を言いたいのか俺には分かるぜ。

 そう思いながらもウェルナーさんを止めずに流れに身を任せる俺だった。だって下手に口はさんだら矢が飛んできそうなんだもん。






 ウェルナーさんにつれてこられたスクルドの家っていうのは、こんな小動物が住んでるっていうのになぜ?って思うくらいデカかった。

 外からパッと見ただけだと、この家で7人くらい暮らしているって言われても納得できるサイズって言えばわかるだろうか?

 俺の買った家よりは小さいけどスクルドのサイズを考えると異常だ。

 入り口は人間が入れるサイズだが、扉はない。スクルドは手が使えないんだからまぁ、当然のことだろう。


「さぁ、クレイ様到着しました」


 ウェルナーさんはひいていた馬から手を放すとこっち(スクルド)に向かって恭しく礼をする。

 とりあえず話もしなくちゃいけないだろうし、うまくすれば今日は野営なんかしないでここで一泊できるかもしれない。俺が立とうとする気配を察したスクルドが俺の肩に駆け上り、俺は軽く飛んで御者の席から降りる。

 スクルドを肩に乗せる俺のことを見てウェルナーさんが顔をしかめた。


「で、君は何者なのかね?」

「俺は獅子王ガイと言いまして、こいつの……」

「その男はクレイ様をペット扱いする極悪非道な人間です」

「は?」

「な!?」


 俺の言葉をさえぎって発せられたレナの言葉に場の空気が固まった。いや、みなさん殺気を向けるのをやめていただけませんか?

 つか、レナのやつ、ここまで来ていきなり極悪非道とか言い出すなんてどういうつもりだ?


「クレイ様をその肩から降ろしてください」


 いつの間にやら弓に矢をつがえてこっちを狙っているレナ。あの……本気ですか?

 レナに呼応するように何人ものエルフたちが俺に向けていた殺気を行動に移す。ちょ、お前らにとっての神スクルドが俺の肩にいるのにそんなことしていいのか!?


「おい、レナどういうつもりだ!」

「どういうつもりもありません。私はクレイ様をこの里に連れ戻すために里を出たんです。私の目的はなにも変わっていません」


 いや、そういう意味じゃなくてさ。やばい、下手に抵抗したら四方八方から矢が飛んでくる。


「スクルド……降りてくれ」


 武器でも抜こうものなら即座に矢は放たれるだろう。俺はなんの抵抗も出来ずにスクルドに方から降りるように言った。

 俺の肩から降りたスクルドは俺の足元に留まって申し訳なさそうにこうべを垂れていた。


「……キュウ」


 弱弱しいというか申し訳なさそうに鳴いたスクルドに微笑みかけて俺は両手を上にあげる。


「クレイ様を攫ったのが人間だったとはな。相応の覚悟はできているだろう?」

「攫ってなんかいないって、その辺の話はレナに聞けよ。ほんとのことを話すかどうかは知らないけど」


 数人のエルフに取り押さえられ武器もすべて取り上げられる。ヴァンヘルトが持てなかったのか重さのあまりに仰向けに倒れこんだエルフには思わず吹き出してしまった。


「っつ……で、俺をどうするんだ?」

「そうですね。クレイ様をたぶらかしたあなたは即座に処刑……と言いたいところですがあなたのような人間の血でこの里を汚したくありません。牢屋にご案内します」

「それはそれは……快適な場所なんだろうな?」

「えぇ、ベッドは削り出された岩でできていますので寝心地抜群ですよ」


 そいつは豪勢だな。ったく、エルフの里についていきなりこんな目に遭うなんて思ってもみなかったぜ。


「アリアにまでこんな乱暴な真似はするなよ?」

「安心してください。彼女はあなたと違って何の悪事も働いていません。しばらくこの里で落ち着いてもらったらあの街まで送り届けますよ」

「そいつはありがたいな」


 縄で縛られ担ぎ上げられた俺はアリアたちの乗る馬車から徐々に遠ざかっていく。プリルもロイもひどい目に合わないといいけど……

 ま、エルフはそんなに野蛮な種族じゃないだろ。乱暴に捕まえられたけど、それは俺が人間だからだろ。


 …………うん、そうだよな?






急転直下?の展開です。

なんでこうなったか、とかこれからどうなるの?っていうのはきっちりはっきり描きますので、よろしければお楽しみに

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