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1話 召喚された国は本日滅びました

 俺の名前は獅子王ガイ、勇気あるGGGの隊員……ではない。普通の高校生だ。ちなみに本名。

 俺は今とある問題に直面している。さすがに期末試験の問題とかの類じゃなく、激しく疑問に思っていることがある。

 さて、では問題です。ここはどこでしょう。


「まじでどこだ?」


 あたりを見回してみてもドーム状の建造物の中には何もない。せいぜい、無駄に装飾のなされた服を着ているデブと、薄汚れたローブみたいなものをまとったじじいが一人ずつ立ってるぐらいで情報を聞き出せそうな相手も全く見当たらない。


「おぉ、ようやく勇者の召喚に成功したでおじゃる」


 お、おじゃるだと!?……まさか、現実におじゃるなんて口調な人間がいるとは思わなかった。なんか心情的にはツチノコ発見しちゃいましたぐらいの大発見なんだが、この感動を共有できそうな相手もこの場所には見当たらなかった。


「デ・ブー王、だから言ったじゃろ。わしは天才じゃと」

「むふふ、褒めてつかわすジ・ジーよ。約束通りお主は今から宮廷魔法使いでおじゃる」


 デブとじじいって見たまんまだな。


「むふふ、これで勇者を召喚した余の国なら最強でおじゃる。バルデンフェルト帝国に攻め入ってセリル姫を余の妃にするでおじゃる」

「さすが、デ・ブー王。そこらの凡人とは違うのぉ」


 なんか狂喜乱舞してる二人の邪魔しちゃ悪いな。とりあえず外にでも出よう。一つしかないし扉はあれだろ。


「これお主!どこに行くでおじゃる!」

「いや、なんか喜んでるし邪魔しちゃ悪いかと思って外にでも行こうかと」


 さすがに堂々と真横を通って外に出ようとしたのはまずかったみたいだ。あまり関わり合いになりたくない人種に呼び止められるとは俺もまだまだだな。


「むふふ、さすが余が召喚した勇者でおじゃる。さっそくバルデンフェルトへ攻め込む気だったでおじゃるな」

「はぁ?」

「わしわし、召喚したのはデ・ブー王じゃなくてわしじゃよ」


 さっきからこいつらの言ってる召喚やら勇者やらの不吉な単語からある程度答えは導き出されている。というか認めたくないところだが事実なんだろう。

 だからこそ、あえて俺はこのデブのいうことを聞きたくない。

 だってそうだろ。普通異世界召喚って言ったら、すっげーかわいい女の子が召喚して召喚された男(この場合の俺)と恋に落ちて世界を救ってハッピーエンドってのが王道だろ。何が好きでこんなじじいとデブのために働かなきゃならんのだ。


「さっさとバルデンフェルトを攻め落とすでおじゃる」

「はいはい、わかりましたよ」


 なんだかこいつらの相手をしていても疲れるだけだろうから適当にあしらって別れるとしよう。

 そう思って俺は扉を開けて外に出た。別に太陽が二つあったりしないが、あたりの風景は地球のものとは全く違うようだ。

 木々は地球のものより活力にあふれ、空には鳩を軽く10倍くらいにしたような鳥らしき生物が飛んでいる。間違いなくここは地球じゃない。少なくともその確認ができただけよしとしよう。

 俺は再び扉を開きドーム状の建造物の中に入った。


「デブ王様、ばるなんちゃらっての滅ぼしてきましたよ」

「むほほほ~い!よくやったでおじゃる」


 え、まじで信じるの?とりあえず適当にやる気のなさをアピールしてクビにでもしてもらおうと思ったのに。どうやら俺の想像以上にこのデブはおつむが弱いようだ。


「では、さっそく余はセリル姫を迎えに行くでおじゃる!帰ってきたらすぐに結婚式でおじゃる!」


 デブは俺が種明かしをする前にさっさとドームの中から出て行った。というか、ずいぶんデブのわりに俊敏だなあいつ……。



 翌日、俺にはよくわからないが国境でデ・ブー王がバルデンフェルトに討たれたという話が国中に流れたらしい。戦争状態の隣国にまともな護衛も連れずに向かい、「お主たちは敗戦国じゃから余に従うでおじゃる!」と言っていたらしい。

 さすがにあれだけの馬鹿でも国王が討ち取られたというのは国的にも一大事だし、どうやらあいつには世継ぎも何もいなかったらしい。長年に及ぶ戦争の末に王族はみな倒れ、最後の一人だったあのデブが討ち取られたこの国はバルデンフェルトに無条件降伏。俺が召喚された国は俺が来てからたったの一日で滅びてしまったとさ。



………………え、俺のせい?


 

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