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26話 鬼人ってのはいろいろ大変みたいです

 今日も今日とて魔法の練習……ではなく、今日は街に来ていた。

 退屈そうにしていたプリルを見てアリアが遊んであげなさい!と命令してきたからだ。いや、俺としてもプリルと遊んでやるのはやぶさかじゃないからいいんだけどさ。

 元気よくあたりを駆け回るプリルに振り回されながら過ごす日も悪くはないかな。


「お兄ちゃん!次はこっち!」


 俺の手を引いて新たな店を目指すプリルをほほえましく思いながら後に続く。

 家族を失った悲しさを感じさせないその笑顔を見てプリルは強いんだなと心のどこかで思う。


「プリル。そんなに焦ったら転んじゃうぞ」

「大丈夫!」


 子供の元気の良さと無邪気さには閉口するほかない。地球にいたころは毎日こんな感じであいつに付き合わされていたことを思い出す。大人しそうに見えたってプリルも女の子で子供なんだ。


「なんだプリル、それが欲しいのか?」

「……うん」


 プリルは穴が開きそうなほど露店で売られている小さな花の細工がなされた髪留めを見つめていた。値段は、銅貨4枚か……まぁいいだろう。

 何でも買ってもらえると思うように育つのはよくないことだが、プリルには昨日、一昨日と倒れたことでたくさん心配させている。これぐらいならお詫びに買ってやっても問題ないだろう。


「おばちゃん、これちょうだい」


 俺は財布がありの巾着袋から銅貨を4枚取り出すと露店のおばちゃんに手渡した。


「いいの!?」


 ぱぁっと花が咲くように微笑むプリル。俺は微笑みながらプリルの頭をなでてやる。


「昨日も一昨日も心配させちゃったからな。そのお詫び。今日だけ特別だからな」

「ありがとう!」


 おばちゃんから受け取った髪留めをプリルに手渡してやるとプリルはさっそく今使っている髪留めを外して新しい髪留めをつける。


「どう?かわいい?」

「あぁ。プリルはかわいいよ」

「キュイ!」


 俺の考えには同性のスクルドも同じ意見なのだろう。二人(というか、一人と一匹)に褒めてもらえてご満悦のプリルは俺の手を引いて走り出す。


「つぎはあっち!」

「おいおい、プリルもっとゆっくり歩こうよ」


 プリルに手を引かれ苦笑しながらもまんざらじゃない。こうやって元気なプリルを見ているのは膝の上で眠っているスクルドを見ているのと同じくらい幸せだ。


「……」


 プリルに手を引かれながらも気になるのは俺たちの後をつけてきているらしい二人組の存在だった。

 肉体強化のスキルのおかげなのか瞬発力や気配察知などの感覚的な部分が最近めちゃめちゃ鋭くなっている。筋力なんかが変わっていないのは気になるところだけど、今は関係ない。

 こそこそと俺とプリルが移動するたびに後をつけてくる二人組はどうにも怪しいという印象しか与えてくれない。


「キュイ」


 スクルドも二人組の存在に気付いているのだろう。まるで俺に注意を促すように一鳴きした。わかってるよ、大丈夫だ。

 たぶんだけど、あいつらは大した使い手じゃない。尾行の仕方もなっていないし動きも素人くさい。俺だって素人に毛が生えた程度だけど場数は多少踏んできた。

 俺は先を行くプリルの手を引いて人通りの少ない路地裏へと向かう。


「……お兄ちゃん……ここで何する気?」


 プリルに予想外の勘違いをされた。いや、違いますよ。

 プリルに手を出すつもりなんてないし……というかプリル子供のくせになんでそんな思考が働くんだ!?


「おいお前、その鬼人のガキをこっちに渡しな」

「けがしないうちに言うこと聞いた方がいいぜ」


 案の定と言うか、路地に入ってすぐ二人組は俺たちの前に姿を現した。二人とも手にナイフを握り、薄暗い路地裏の中で異質な光を放っている。

 プリルがおびえた様子を見せるが軽く頭をなでてやり俺は双剣ウェイズとクロウを抜いた。さすがにこんな街中でヴァンヘルトを使うといろいろやばいかもしれないし、相手は二人とはいえ素人みたいだ。構えも何もなっていないナイフの持ち方からして俺の予想は確信に変わる。


「どういうつもりだ?お前らこそ怪我しないうちに逃げ出した方がいいんじゃないのか?」

「!」

「っ!」


 まさか俺が抵抗の意思を示すとは思っていなかったみたいだ。腰には剣が差されてるってのに本当に抵抗しないと思っていたのか?


「言っとくけど俺はワイバーンだって倒したことがあるぜ?けがするのはどっちなのかね?」

「ふ、吹いてんじゃねえよガキが!」


 ナイフを振りかぶって一人が俺に向かって駆け出してくる。剣やナイフを持った相手と戦うのは三井さん以外では初めてのことだが、男の動きはどうにも遅く見える。ワイバーンの突撃の速さに比べればそれこそハエが止まりそうだ。

 土と火の属性を持つ短剣、ウェイズの方で切りかかってきた男のナイフを払う。安物だったのか男のナイフは根元からぽっきりと折れていた。


「っな!?」


 男はまず飛ばされたナイフの刃を見てから自分の持つ柄だけになったナイフを見た。

 俺としてもナイフの刃を折るだなんて思っても見ないことだったけど、十分な脅しにはなるだろう。


「どうするんだ?逃げるっていうなら追いかけはしないけど」

「お、おい……どうするんだよ」

「くそ、覚えてやがれ!」


 二人組はありきたりなと言うには実際に聞くことは滅多にない捨て台詞を残して逃げて行った。ため息を一つついてから双剣を鞘に戻す。


「お兄ちゃんすごぉ~い!」


 簡単に事態を収めた俺をプリルが尊敬のまなざしで見てくる。俺はもう一度プリルの頭をなでてやるとプリルの手を取った。


「さ、行こうか?」

「うん!」

「キュイ!」


 たぶんさっきのやつらはプリルを鬼人と知って金目当てでさらおうとしたんだろう。レナが以前言っていたように亜人は奴隷として高値で取引されるらしいから目的はそれなんだと思う。

 力に優れた鬼人とはいえプリルは子供で女の子だ。そんなに危険もなく大金が手に入るとでも思ったのか?

 無邪気に俺の手を引くプリルを見ながら俺は考える。

 あまりプリルを表で連れまわすと今回みたいなことが増えるかもしれない。俺が冒険者として成功し、凄腕なんて言われるようになりでもしない限り、ただの17の男が一人で鬼人を連れているのだからあんな連中からすればいいかもと思われるだろう。

 今回は素人みたいな二人組だったからよかったけど、もっと多い20人とかの集団だったら?三井さんクラスの実力者が率いるグループだったら?最悪の事態を想像するとどうしてもいい考えが浮かばない。

 不意にぐぅ~~という気の抜けた音が俺の耳に届いた。


「……お兄ちゃん、お腹すいた」

「ははは、じゃあどっかで飯でも食べよう」


 プリルを前にしてそんなことを考えるのはよそう。要らない心配をかけたってしょうがないしな。

 近くの料理屋に入って適当に料理を頼む。外食するのは三井さんの時と合わせて二回目だから相変わらず料理名からどんな料理かの想像がつかない。まぁ、冒険してみてもいいだろ。



 頼んだ料理は正解だったようで、どれもうまいものばかりだった。プリルも満足したのか口元を汚して微笑んでいる。


「おいおいプリル。口の周りが汚れてるぞ。ほら、拭いてやるからこっち向け」

「ん~~」


 言うとおりに顔を向け拭きやすいようにちょっと顔を寄せてくるプリルの口元をぬぐってやるとプリルは席を立った。


「もう出るのか?」

「もう、お兄ちゃん。レディーに恥ずかしいこと聞かないでよ」


 あぁトイレか。いや……というかレディーってお前。

 なんでプリルはこんなませたことばっかり言うんだ?たぶんアリアあたりが要らない知識を与えてるんだろうけど、ちょっとプリルのキャラクターにあってないと思うんだ。

 このことは家に帰ってから話し合うことにしよう。なんだか子供の育成方針について母親と討論する父親みたいだと苦笑し、プリルが戻ってくるのを待つ。が、いつまでたってもプリルは出てこなかった。

 トイレを汚したりして四苦八苦してるのか?だったら、頭のいいプリルのことだからいったん戻ってきて俺に相談するだろうし……大きい方にしても長すぎるよな。


「すいません、このくらいの女の子見ませんでしたか?」


 ちょうど女子トイレから出てきた女性に俺は尋ねた。女子トイレの前で男がずっと立っているのだから奇妙な目で見られたし、訪ねた女性にも嫌な顔をされたがそんなことは関係ない。どうにも胸騒ぎがする。


「いえ、私以外は誰もいませんでしたよ?」

「!」


 女性の答えを聞くや否や俺は女子トイレの扉を乱暴に開いた。3つあった個室はすべての扉が開かれており、プリルの姿はどこにもない。

 換気のためにあるのか一番奥の個室の前には子供一人であれば容易にくぐれそうな穴があけられている。普通に考えれば高すぎて子供には届かないだろうが、もしも誰か大人が持ち上げたら?もしもそれを穴の向こう側で誰かが受け止めたとしたら?


「プリル!」


 俺は勘定もせずに店を飛び出し、店の裏側にたどり着く。

 女子トイレのあるあたりの穴の下、そこには今日俺がプリルに買ってやった髪留めが落ちているのだった。


「ぷ、ぷりる……」


 どこに行ってしまったのか。誰に連れ去られたのか何もわからない。

 俺は髪留めを拾い上げるとどうすればいいのかわからず、とにかく誰かに相談しなくてはと思い冒険者ギルドへと駆け出した。

 絶対にプリルを助け出す。奴隷なんかには絶対させない。


 俺はプリルの髪留めを強く握りしめながらとにかく走り続けた。



体力強化のスキルについてですが、基本的に瞬発力(AGI)と持久力(HP)の強化。殺気などを感じ取る感覚の強化がなされます。筋力についてはほとんど強化されません。

スキルのレベルに応じて強化される度合いが変わり、召喚されたばかりの時点でガイは一流アスリートなみの瞬発力とマラソンランナー並みの持久力を有していました。

現在は全力疾走でフルマラソンを完走でき、ライフルの銃弾とは言えないまでも種子島くらいの弾だったらかなりスローに見えます。

筋力は強化されていませんが、武器の扱いに関するスキル(剣士など)が育っているので、武器を使った攻撃の威力や熟達の具合は相当なものになります。

補足です。

魔術のスキルはどちらかと言うと威力上昇、MP増加的な要素をはらんでいます。魔術の熟達は各属性の名前が付きます。(例・風魔法Lv.5など)


さらに補足です。

レナのスキルにある回復魔術の項目に関してはエルフの特殊スキルです。

人族(ガイ)なんかが回復魔法を覚え、魔法を多用すると回復魔法というスキルが付きます。

これは、魔術や属性魔法のスキルとは別に、回復魔法で癒せる傷の規模が上昇するといったものです。


まとめると、


肉体強化および魔術のスキルはHPやMPの基礎ステータス上昇(AT、STR値除く)


属性魔法のスキルはその属性の魔法の熟達に関して


職業スキル(剣士、冒険者など)はスキルに関連する能力、剣を使った際の威力、熟達の上昇(剣士の場合)など


回復魔法のスキルは、回復値上昇って感じです。


以上、長くなりましたがこんな感じです。

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