17話 新たな仕事は迷宮探索でした
レナがアリアさ……アリアの家に居候することになった翌日、俺は本日のお仕事を求めてギルドを訪れていた。
膝の上と同じく定位置になりつつある肩の上にスクルドを乗せ、今日はもう一人お供が増えている。レナだ。家で待っているように説得もしたんだが、スクルドがいるならたとえ火の中水の中って感じで聞かなかった。
説得はあきらめ白い目で見てくるアリアさんの出勤時間に合わせて冒険者ギルドへやってきたわけだ。
「なんだこれ?」
掲示板の前に普段は見慣れない人だかりができていた。人垣を縫って掲示板の前にたどり着くと一際大きな紙に『迷宮探索』の文字が躍っている。
昨日まではこんな仕事なかったし、周囲のざわめきを考えるとなかなかに珍しい仕事なんだろう。備考の欄に、ランクに制限は設けないがCランク以上推奨と書かれている。迷宮ってのは危険なんだな。
ちなみにこの街の冒険者は平均するとFとEランクの人間が多くなる。Dランクが数人いるが、Cランクはほぼいない。もともとはデブの国で首都と言われていたのにこんだけ人材がしょぼいのはどういうことだ?
「迷宮ってのはそんなに危険なんですかね?」
俺はさっそくギルドの受付の制服に着替えてカウンターに出てきたアリアさんに聞いてみた。
「あぁ、昨日見つかったらしいわね。とりあえず先遣隊が調べてみたけど強めのモンスターもいるしなかなか危ないみたいよ」
「へぇ~。やっぱり迷宮ってことはお宝とかがあるんですか?」
「たぶんあるんじゃない?昨日見つかったばかりだからまだ誰も最深部まで行ってないだろうから。一応先遣隊もいくつかアイテム見つけてきたわよ」
やっぱりゲームみたいに迷宮やダンジョンの類にはお宝があるのか。スキルで幸運を持っている俺ならなかなかいいアイテムを見つけられるかもしれない。けど、Cランク以上推奨か……
「さすがに俺が入るのはきつそうですね」
「う~ん、どうかしらね。ここだけの話今日ならバルデンフェルトの勇者とか騎士が迷宮に入るらしいから案外楽できるかもよ?明日以降になったらきついだろうけど」
これは思っても見ない情報だった。ばるなんちゃらの勇者ってのはたぶん三井さんのことだろう。もともと冒険者として活躍し、ばるなんちゃらにスカウトされるほどの実力者だったら少なくともCランクの迷宮なんて余裕じゃないのか?
せっかく知り合った人だし、なにか手伝いをするだけでも行く価値は十分にありそうだ。
「そういうことならあの仕事受けるよ」
「そう?まぁバルデンフェルトの人たちが入るとはいえ危険なことに変わりはないから気を付けてよ?」
「わかってる、大丈夫だと思う」
なにせこっちは幸運のレベルがカンストしてるんだ。討ちもらしなんかに強力なモンスターはいないと思う。まぁ、いても逃げればいい話だ。
仕事の登録を終えて街のはずれまで行くとちょうど三井さんたちも迷宮に向かうために出発しようとするところだった。
馬車に荷物を積み込んでいざというところだったので、とりあえず声をかけてあわよくば便乗させてもらおう。
「どうも、三井さん」
「ん?おぉ、ガイ君じゃないか。どうしたの?」
三井さんは馬車から降りるとこちらに駆け寄ってきた。この間昼飯を一緒した時とは違って鎧なんかを完全装備した様はかなり強そうだ。
「その後どうしてるの?働き口は見つかった?」
「いやぁ、実はあれからいろいろあって冒険者やることになったんですよ」
「え!?そうなの?俺が言うのもなんだけど冒険者なんて危ない仕事よくやる気になったね……もしかして」
「はい、俺たちも迷宮探索に行くんです」
「マジで!?え、だってあれから一週間も経ってないじゃないか。もうCランクまで行ったの?」
さすがに冒険者になっただけじゃなくて迷宮探索まで行くというのは予想外だったんだろう。驚いた様子の三井さんに俺は苦笑した。
「いや、お恥ずかしながらGランクです。お世話になってるギルドの人が今日迷宮に行くなら、三井さんたちがいるって言うから取りこぼしなんかを頂戴しようと思いましてね。ハイエナみたいですけど」
「ははは、この世界で生きていくならそういう狡賢さも必要だよ。なるほどね、そう言うことか」
「あ、当然三井さんたちの邪魔はしませんし、この間のお礼もありますから俺なんかでも手伝えることがあったらお手伝いしますんでなんでも言ってください」
「おっけ、わかった。ここで声をかけてきたってことは迷宮までも便乗したいってことでしょ?」
「はい」
「即答かよ。ははは、了解。じゃあ乗りなよ、せいぜいこき使ってあげるから」
三井さんに促されて俺は馬車の荷台に乗り込んだ。俺の後についてきていたレナも一瞬戸惑ったようだが、俺に続いて馬車に乗り込む。
俺とレナが馬車に乗ったのを確認して三井さんも荷台に乗り、御者が馬に鞭をうった。
さて、迷宮ってのはどんなところなんだろう。楽しみだ。
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