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11話 思った以上にナイフはいいものでした

 この世界に来てから3日が過ぎた。まだ3日しかたっていないとは思ったけれど案外この世界にもなじんできた……気がする。昨日はアースベアーとかいう大物を倒したおかげで懐もだいぶ温まったしアリアさんに食費を払ってもぜんぜん金に余裕はある。

 俺は、当面冒険者として食っていくしかないと腹もくくったし今日は新しく装備を整えて明日以降の仕事をやりやすくしようと昨日もやってきた武器屋を訪れていた。


「お、今日も来たのか?金は大丈夫なのかよ」


 昨日までの懐具合しか知らないおっさんはそんなことを言いながらカウンターから出てきた。ふっ、今の俺の所持金を見てビビらせてやろう。


「まぁね、昨日働いたおかげでだいぶ稼げたよ」

「へぇ、また銀貨5枚で買い物でもするのか?」

「今日はもっと余裕あるよ。銀塊で3つ分くらいは買うつもりだ」

「銀塊3つだと!?」


 まさかいきなり前日の6倍の予算を持ってくることを予想してなかったおっさんは目を丸くした。まぁ、昨日冒険者として働きだしたばかりの若造がいきなりそんな大金を持ってきたら驚くのも当然だろう。


「おいおい、なんかやべぇ仕事でもしたのか?」

「いや、偶然アースベアーを倒せてね。おかげで懐がだいぶ温かくなったよ」


 まさか、冒険者なり立ての男がアースベアーを倒すとは思っていなかったのかおっさんはさらに目を大きく見開いて口もあんぐりと開けている。アリアさんは呆然とした顔も美人だったがおっさんはやっぱりむさいおっさんのままだ。

 俺は昨日みたいに金貨で5枚とかのばかげた武器は手に取らず自分の予算に見合った装備を適当に手に取った。やっぱり、剣とかの武器がほしいけど安くても銀塊で2つはするし防具なんかのことを考えるとまだちょっと手は出しづらいな。まぁ、普通の剣なんかよりもよっぽどいいナイフも持ってるしまだ剣は必要ないだろ。


「そういえば、昨日買ったナイフなんだけど」

「ん?どうかしたのか?まさか刃こぼれしたから取り替えろとかじゃないよな」

「まさか……さすがに自分で使って刃こぼれしたんならおっさんの責任じゃないだろ。そうじゃなくてさ、なんかあのナイフ風属性のやつだったみたいなんだけど」

「はぁ!?」


 俺は驚いた様子のおっさんにナイフを手渡した。おっさんはしげしげとナイフを見つめながら試し切り用の巻き藁に向かってナイフを振るう。しかし、巻き藁は微動だにせずナイフからかまいたちが発生した様子はまったく見受けられない。


「おいおい、違うじゃねえかよ」

「いや、俺がやったらなんか出たんだよ」


 俺はおっさんからナイフを受け取ると同じ巻き藁に向かってナイフを振った。展示されてる他の武器に当たって弁償とかの問題になったら大変なので出力はだいぶ抑え気味にしてだが。

 案の定巻き藁は上下に分断されどさりと地面に落ちる。その様子を見ておっさんは首をひねらせていた。


「こいつは属性付加じゃねえよ」

「え、違うの!?」


 じゃあなんであんなかまいたちが発生したんだ?漫画とかでものすごい速さで剣を振るってかまいたちを発生させるとかって表現があったけどそんなに速く振ってるわけでもないのに。


「こいつは魔力増強の宝石が入ってるみたいだな。たぶん無詠唱と単純な魔力の増強ってとこだろ。お前さん魔法使えたのか?」

「いや……魔法なんて使ったことないし習ってもないよ。使い方全く知らないし」


 おっさんいわく、ナイフに埋め込められていた宝石は風属性の魔法を強化し詠唱しなくても低難度の魔法なら威力を落とさずに使えるようにするもんだそうだ。俺が無意識に使えたのは今まで使ったことがないだけで魔法の才能があったからじゃないかと結論がつけられた。

 つまり俺は勉強さえすれば魔法が使えるようになるらしい。


「けっこういいもんだったんだな。銀貨1枚と銅塊5つなんかで売って大丈夫だった?」

「まぁな、わかってりゃもっと高値で売ってただろうが、売ったもんを返せなんて商売人として言っちゃいけねぇよ。まぁ、わかったうえで売ってたらもっと儲けられただろうがな」

「ちなみにおいくら?」

「ざっと見積もって銀塊1つってとこだ」


 やっべぇ、普通のナイフとして買ってよかった。これがなかったらアースベアーに勝てなかっただろうしかなりお得な買い物ができたみたいだ。


「まぁ、そんだけいいもん買ったんだ兄ちゃんには有名になってもらわないと困るわな」


 そう言っておっさんは俺の背中をバンバンとたたいた。かなり痛い。おっさんどんな馬鹿力してるんだよ。


「で、今度は防具を中心に買いたいんだけどいいもんない?」

「防具?しばらくは昨日買った胸当てだけで十分じゃねえのか?」

「いや、昨日のアースベアーとの戦いでこうなっちゃってね」


 言いながら俺は鉄板の部分がごっそりとえぐられた胸当てを取り出した。もはやほとんど使い物にならないのは誰が見ても明らかな状態だ。


「たしかに、こんな状態じゃ使いもんにならねえな」


 おっさんは防具が置いてあるコーナーに入るといくつかの鎧なんかを持って戻ってきた。


「とりあえずナイフでウィンドカッターが使えるし敵に近づく必要はないって思うんならこっち」


 と言って重厚というほどではないが胸当てとは比べ物にならないくらい丈夫そうな鎧を指差した。鈍い光方をしていて、タグには銅製と書かれている。


「で、いくらウィンドカッターが使えるとは言っても機動力を重視したいならこっちだな」


 こちらも昨日の胸当てよりも守られた範囲が広い腹と胸を鉄で覆われたそれはどことなくドラゴ●ボールに出てくるサ●ヤ人の戦闘服を彷彿させる。肩は出ているし腕の防御はできそうにない。


「そうだな、普段の移動も考えるとそっちの方がいいかな?」


 サ●ヤ人の戦闘服を指差しながら俺は言った。腕の方は手甲でも買って合わせれば充分だろ。

 結局、今日は手甲とサ●ヤ人の戦闘服、万が一の時の予備の短剣を買って店を出た。


 さて、とりあえず森に行って修行でもしてみるか。修行って……厨二か俺は……

 まさか自分でそんなことを考えるとは思ってもいなかった。



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