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9話 かわいらしいペットを見つけました


 やってきました街の近くにある森。さりげなく地球産のものより葉っぱが多かったり全体的にでかい印象があるけどその辺は気にしない方向で。

 とりあえず鹿を探して捕まえなきゃいけないんだけども、どこを探せばいいのか見当もつかない。道なりにけっこう奥まで来たけど動物の影すら見当たらないのはどうしたもんか。

 モン●ンみたいにマップ移動したらデフォで何匹かモンスターがいるとかなら楽できるけど現実はそんなに甘くない。というか、現実にマップ移動とかあったら怖い。

 にしてもマジで動物の影も形も見当たらないのはどうしたらいいんだろうか、このままじゃ日が暮れても鹿が捕まえられない。収穫0で街に変えるのは勘弁願いたいんだが。


「ん?」


 なんかそこの草むら動きませんでした?とりあえずウサギでもなんでもいいんで動物がいることだけ確認したいな。と思って俺は草むらに近づいた。

 あまりに不用意に近づいたもんで、その一撃を俺はもろにくらってしまった。


「ぷげらっ!」


 人って空を飛べるんだ!浮遊感を味わう短い間に俺はそんな真理を悟った。人間はその気になれば空を飛べる。実にすばらしいことだ。たとえそれが体長3メートル近い熊に殴られたことが原因であっても事実は事実だ。


「グォォォオ」


 俺の胴回りの2倍近い太さの木に激突して地面に落ちるとダラダラと血が流れる顔を熊に向けた。デカい。

 熊ってふつう2メートルくらいじゃないんですか?異世界だからって熊がこんなにでかいのは反則だ。つか、顔が痛い。非常に痛い。子供の胴回りくらいある太さの腕でふっとばされて生きているのは奇跡じゃないのか?

 ていうか、まさかほんとに熊に会うはめになるなんて勘弁してくれよ。今の俺ってどう考えてもレベル1だろ?こんなデカい熊相手にしたら死ぬって。

 顔も痛むし逃げるしかない。立ち上がると同時に背中を向けてダッシュ。とりあえずあのデカブツを撒くまで走り続けるしかないな。


「………ちょ、ちょっとちょっとちょっとぉ!なんで速いんだよぉ!」


 あれじゃない?熊って動きがのろいんじゃないの?ものっそい速いんだけど。いくら走っても逃げ切れる自信が全くない。絶対捕まるって。

 じゃああれか?これはあいつと戦えっていう神の意思か?それも無理だよ。だってあいつの一撃で俺3メートルはふっとんだんだぞ。次にくらったら絶対死ぬって。

 なんとか逃げようと走り続けていると開けた場所に出てしまった。これじゃあ隠れることもできそうにないしまっすぐ逃げただけじゃすぐに捕まってしまう。


「覚悟を決めるしかないのか?」


 取り急ぎナイフを鞘から抜くと適当に構えてみる。剣を振ったこともないし構えなんて知ったこっちゃないけど手に持って威嚇するようにつきつけてやるだけでも牽制にはなるだろ。


「グルルルルゥ」


 案の定熊は距離をあけたまま動きを止めた。たぶん、また背中を向けた瞬間一気に襲い掛かってくるだろう。これで完全に逃げることができなくなってしまった。

 俺と熊はお互いに相手の隙をうかがうように動きを止めた。俺の方は隙なんてわからないけど意識がそれた瞬間にまた逃げてやる。




 5分ほどが過ぎたのか、まだ10秒もたっていないのか俺と熊が動きを止めてから俺の体感的には永遠ともいえる時間が過ぎた。このままこの熊が諦めてくれたら御の字なんだがそれはあまり期待できないだろう。

 不意に、本当に不意に近くの草むらが動いた。


「!」

「グルァァアァァ!」


 まるで神経をぎりぎりまで研ぎ澄ませた侍同士の立ち会いのようだった。熊は俺に襲い掛かり俺は熊の一撃を避ける。偶然なんだろうが俺のナイフは熊の左目を切りつけた。

 悲鳴のような叫びをあげながら熊は腕を振るって俺を殴り飛ばそうとする。それも間一髪で回避するが鋭い爪によって胸板が削られる。

 俺と熊はお互いの立ち位置を入れ替えるようにして再び対峙した。

 これで熊の方が諦めてくれるならよかったのだが、あきらめる様子はないようだ。獣らしく口からは涎をダラダラ、左目から血をダラダラと垂らしながら余計に殺気立ってこっちをにらんでる。ほんとに勘弁してくれよ。このままあきらめてくれればこっちだって大人しく街に帰れるのに。

 俺は何気なく一度ナイフを振って構えなおした。


「ギュルアァァ」


 なぜか知らないが熊は腕から血を流して悲鳴を上げる。なぜ?

 俺はもう一度ナイフを振ってみた。すると今度は腹が切れたのか熊の腹から血が噴き出した。


「もしかして……」


 実はおっさんが言ってた風の属性武器じゃないのか?突然血が噴き出した位置から考えても、かまいたちみたいな感じで切れたようにしか見えない。どっちにしろ使える。


「そりゃそりゃそりゃぁ!」


 俺は適当にナイフを振りながら少し離れた位置にいるはずの熊を切りつける。腕、足、腹、背中と次々血を吹き出しながら熊は悲鳴を上げる。


「ぐ、グゥゥ」


 最後の頭に放った一撃が致命傷になったのか熊は地面に倒れたまま動かなくなった。念のため頭と両手両足をもう一度切ってみるが声も出さず動く気配もない。


「……ふぅ」


 俺は気が抜けたようでぺたりと地面に腰を落としながらため息をついた。まさか熊に襲われるとは思ってなかったしそいつを返り討ちにするなんて夢にも思っていなかった。

 とりあえず危機も去ったことだし休んだところで問題はないだろう。


「ん?」


 さきほど気配がした草むらの方に目を向けてみると30センチくらいの小動物が目に入った。黄色い毛並みは鮮やかでさらさらしてそうだ。つぶらな瞳は緑色をしていて、顔が小さいわりに耳は片方につき20センチ近くありそうだ。なんとなくナウ●カのキツネリスを彷彿させる。

 トテトテと俺に近づいてくる黄色い小動物は腰を落として地面に手を付けている俺の手のにおいをふんふんと嗅いだ。とりあえず動くこともせずされるがままにしていると黄色い小動物はぺろりと俺の手をなめる。


「お前のおかげでこいつに勝てたよありがとな」


 少なくとも最初に草むらが揺れなければこの展開にはならなかったはずだ。草むらを揺らした黄色い小動物のおかげで勝てたのは間違いない。

 軽く手を差し出してみると黄色い小動物は手を伝って俺の肩に乗った。なんだか首を傾げたりしてかわいらしい所作をしている。ぶっちゃけペットにしたい。アリアさん怒るかな。


「まぁいいや、お前ついてくるか?」


 黄色い小動物はキュイ!と元気よく返事をする。言葉がわかっているのかは微妙だが肩から降りようとしないあたり俺についてくるのだろう。(そうだと思いたい)




 その後、偶然見つけた親子らしい3頭の鹿を発見した。熊との戦いでわかった風の属性武器かもしれないというナイフを実験がてら振ってみたところやはりかまいたちのような感じで3頭まとめて仕留めることができた。どうやら俺の意思次第でかまいたちの発生と大きさをコントロールできるみたいだ。ほんとうにこんないい武器を買うことができてラッキーだった。おっさんに感謝してもしきれないな。

 だけど、おっさんが属性武器じゃないと判断したのはなぜだろうか?その辺も確認しないといけないな。とりあえず街に帰るのが先決なんだが。


 さて、どうやってこの鹿を持って帰ろう。



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