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合法ショタの魔王様

「む。力加減が出来ていなかったか。壊してしまった」


 玄関から聞こえてきた幼い声。フードを被っていて良く見えないがおそらく男の子。そして130cmとかその辺の身長。

 よぉし殴ろ。

 私と目を合わせて一言目が謝罪か驚きの言葉じゃなければ殴る。


 ふと、フードの奥からその奥の男の子と目が会った気がした。


「おお? 住人がいたのか。之は済まない事をした。怪我はないか?」


 えー好き。

 ちっちゃいのに紳士じゃん。えー、好き。


「えー好き」

「え」

「あ」


 てんてんてん、と。数秒の間の後私は――


「大変申し訳ございませんでした」


 人生初の土下座を決めた。うわこの体制案外キッツ。


「結婚か?」

「え」

「好きなのだろう? ならば結婚するものだろう」


 ??????

 どうしよう、会話が成立していない気がする。ていうか結婚したら私裁かれちゃう。……あ、いや、この世界は別にそういうのないんだったな……。にしたって周りの目がクソ痛いから嫌だよ。しかもまだ顔すら知らねえし。そうだよそうだった、謝罪するときくらい顔見せろ。

 まあ、相手は子供だ。ここは穏便に行こう。


「あー、お姉さんが君と結婚するにはちょっと年の差がね〜」


 そう言ってなでこなでこしていると手を払われた。

 それはもう、きれいな音でスッパァン……と。

 何この子供とは思えない怪力。え、痛、かつてないほど痛い。三日目の口内炎を噛んだときくらい痛い。

 あ、そうだったこの子さっきドアをノックで吹き飛ばしてたもんね。……あれ、子供なのかこいつ。


「ななな撫でるな! 我はもう117歳なのだぞ!!」

「……」


 へえ。


「あっそう」

「反応うっす!?」


 うふふ、かわいいなあ。かわいい嘘つくなあ、うふふ、あはは、うふふふふ……………………嘘じゃないんだろうなあ。


 人外かなあ、そうだよね、それならドア壊したことも納得だ。見た目の身長こそ小学生低学年あたりのそれだが中身は三桁かあ、ふふ……。


 ぜってぇトリップして一人目で合うべきやつじゃねえ……。


 さっきまでのワクワク返してくれ……。泣きたい……。


「えー、それでだな、お前一体何者だ?」

「それはこっちのセリフだよ人外くん」

「…………何故我が人でないとわかったのだ!?」

「逆にわからねえやついねえわ」


 ここでね「鈍感純粋ヒロイン♡」とかなら「え〜こんな小さい子が117なんて数字言えるんだぁ! すごいなあ」ってなって、数年後くらいに全く成長してないこの器物破損野郎に「えぇ!? 人間じゃないの!?」なんてのを可愛らしい動作でするんだろう。いいな、素でそれができる人。心が汚れている(夢を見れない)私が惨め。


「まあ、先に聞かれたのでまずは私が答えるとしようか。私の名前は……名前は…………」


 日本名しかねえ……。しかも名乗っちゃったら戸籍ないのバレる……。

 …………………………まいっか!


「私の名前は菊永命黎。今日からここの住人になった人間。君は?」

「……我は魔王。名前はまだない」


 ……はあ、ほう。ほう、はあ。


「自己紹介の時くらいフードを取ったらどうなの?」

「さらっとスルーされた!? くっそ……何なのだこの人間は……」


 と言いながらもフードを取る魔王(仮)。


 そしてその素顔を見た瞬間――私は膝から崩れ落ちた。


「何なのだ!? 今度は何なのだ!!?」


 …………………………最推しの幼少期ィ……。まじの魔王じゃん……ラスボスじゃん……推しじゃん……。

 いやさ、本当、何度でも言うが、トリップして1日目に会う人じゃねえって。


 あと推しが合法ショタってなんかすごい悲しい。原作開始時の姿になる前に死ぬじゃん私。そんな事あるのかよ……。



 この世界の魔族は、幼少期が0〜10歳。少年期が10〜50歳。青年期が50〜200歳 。成人期が200〜500歳 。壮年期が500〜580歳。老年期が580〜600歳という感じである。

 そして、力が弱い魔族ほどそれぞれの期間が短く、強いほど長い。つまり成体になるのが遅い魔族ほど長生きであり強いのだ。因みにこれ「勇征(原作)」の公式設定。


 117歳で少年の姿……年齢詐称をしていないのであればこれだけでも魔王だという証拠として十分だ。

 そのへんにいる魔族なら50歳くらいでほぼ成体だからな……。


 名前がない、というのはあれだな。魔族は成人になった時に親から名前をもらうという風習があるからそれだろうな。親がいない魔物でも、自分ではつけずに誰かにつけてもらうことがほとんどだ。

 ただ魔王はそういえば自分でつけていたな。まあ、魔王だものな。名付けを頼める立場でもあるまい。

 いや、そこはつけてもらえよとも思うだろうが、魔王じゃなくて名付けを頼まれる側が可哀想なのだ。自分たちの王の名前を一人の魔人が決めるには荷が重いだろうし。

 ていうか、成人してから名付けるとなると普通の魔人でも50手前あたりまでは固有名ないのか。どうやって呼ぶんだっけかな〜番外編の小説に書いてあった気がするんだけど……。


 思い出せず唸っていると、下から服を掴まれた。おいこら爪を切れ服裂ける。


「おい人間」


 おい名前を教えた意味。


「そ、それで……式はいつにするんだ……?」


 …………私は、今日一日であと何回驚けば良いのだろう。


「だから結婚しねえって」

「しないのか!?」

「しねえよ??」

「好きなのに!!?」

「好きは好きでもその好きじゃないのと合法ショタはちょっと……世間の目が痛いかな」

「なっ……! 我を”しょた”などと……!!」


 魔族の恋愛事情とか詳しく説明されてなかったからわからんが……これは子供特有のアレなのか、それとも魔族だからなんかあるのか。

 にしても100を越しているというのに言動は随分と子供だ。原作時代の魔王様しか知らないからなあ、新鮮新鮮。年をいくら重ねようと、子供のように育てられれば子供の精神のまま育つのかしら。


「ていうか少年よ、何か用があって私の家に来たんじゃないのかい?」

「はっ……そうなのだ! 昨日急になにか大きな力がこの辺りで発生し、態々出向いたのだ。して、お主は何者だ? まさか本当にただの人間という訳ではあるまい」


 ここで「ただの人間だけどトリップ者だよ☆」くらいにはっちゃけられたらそれほど素敵なことはないだろう。トリップを隠すために精神力をこの先数十年と削りながら生きていくのは(こく)すぎる。家もバレてるし。

 ただトリップ者といえば説明地獄である。転生が題材になっている書籍がこの世界にあり、トリップや転生という言葉が一般化している可能性はある。。だが納得してもらえるかといえば別だ。もし私だったら絶対信じないし普通に頭おかしいやつだなって思う。


 うん、当初の予定通りすっとぼける方向性で行くとしよう。


「私自身は本当にただの人間なんだよなあ。でもね実は昨日何したか覚えてなくてねー。何だろねこれ。特発性記憶喪失?」


「HAHAHA☆」と笑って見せれば普通に引かれた。ああ、私が可哀想。


「あ、少年。聞きたいことがあるんだけど、ここってどっかの私有地だったりする?」

「私有地、という訳では無いが、人間からは魔族の森だと言われている」

「いや〜ん私も年かしらん。幻聴が聞こえましたわ。というわけで申し訳なくってよもう一回お願いします」

「ここは、魔族の、森だ」

「……………………………………」


 拝啓、神様的な存在へ。

 死ね!

 敬具、菊永命黎

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