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ぼくと碧の出会った日2

「将来はジオラマ作家? 建築模型士?」


 建築――父さんがやっている仕事。


 思わず、ひゅっと息を飲んだ。


 ぼくは平静さを装いながら、かすかに震える手でLEDライトを透明な小袋へ入れた。それからリュックの前面のチャックを閉じ、机の上にある作りかけの小さなレンガをプラスチックケースへ入れた。


「……将来はIT企業なんかの経理部門に行きたいですね」


「えっ、きみ、手先だけじゃなく計算も得意なの!? 理系の私立大学を目指してるってこと?」


 意外という様子で男は目を丸くした。


 それもそうだろう。


 私立のこの学校では成績順や進路によってクラス分けされている。一年は高校入試を受けた際の成績がよい人間から一組、二組と振り分けられているが二年以降は一組と二組は難関私立大学や国立を目指す特進クラス。三組と四組の有名私立大学や中堅私立大学を目指す進学クラス。五組から七組はエスカレーター式で大学に進学したり、短大、大学校や専門といった、そのほかの進路を目指す生徒で構成されている。


「計算は不得意ですし、勉強はできません。でも――いい大学へ行けば父や母が喜ぶし、そこから大企業に勤めれば両親の役に立てる。何より今まで育ててもらったぶんの恩返しができます。だから苦手な勉強をしているんです」


 目の前の男は口元に笑みを浮かべながら「同じだね」と笑った。「おれもね、母親に恩返しするために保育士になろうと思ってるんだよ。あっ、おれ、一年一組、特進クラスの伊藤碧! 調理部所属だよ、よろしくね!」


「よろしくするつもりなんてない」と思いながらも「どうも」と返事をする。


 この時点では、どうせ彼と二度と話すことはないと思っていたのだ。

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