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「よーし! あとはこのマッスル豪田に任せろ!」
マッスル豪田が、右手の人差し指と中指で眼鏡をクイクイッと上げる。
ちなみに彼の視力は裸眼で2.0である。
眼鏡はクイッがしたいだけらしい。
「おりゃあぁぁぁー!」
振り上げた右拳を、マッスル豪田が地面に叩きつける。
すると周りに衝撃が走り、全てのロボットを粉々に吹き飛ばした。
「リーダーロボットとか関係なくない!? てか、2人のキャラと役割、逆でしょ!?」
恵美が、ツッコむ。
ブレイン森田とマッスル豪田がハイタッチした。
「「俺たちのコンビは無敵だ!」」
2人にスクスイ真田が駆け寄る。
そして、こちらに振り向いた。
「ありがとう、恵美さん。助かったわ」
「わたし、何もしてないけど…」
スクスイ真田の礼に、恵美は戸惑う。
「「俺たちからも、礼を言うよ」」
ブレイン森田とマッスル豪田が、ニッコリと笑った。
3人に手を振り、見送られ、恵美とニャオスは先に進んだ。
しばらく歩くと広い川と、そこに浮いた大きな客船、そして川岸に立つ胸元を大きく開いた黒い着物姿の若い女が見えてきた。
女は頭蓋骨をトップにしたネックレスをかけている。
「あの船だな。あれに乗れば、元の世界に帰れるだろう」
ニャオスの言葉に、恵美はホッとした。
ようやくゴールが見えてきた。
「済みません」と、女に声をかける。
「あら、お客ね」
女がクールな眼差しを寄越した。
「私は第65代目の奪衣婆、妲・エヴァ。いつもは三途の川で亡者から駄賃を貰って、船に乗せてるの。金を持ってない奴からは着物を剥ぐわ」
「えー!」
恵美が怯える。
「それって、あの世の話じゃ…」
「最近は世知辛くてね。ここには、副業で来てるの。でも駄賃は同じ六文よ。無いなら脱がすわ」
「六文! 六文って言われても…」
「恵美、モモコから貰った硬貨があったろう」
「あ!」
ニャオスに指摘され、思い出した。
素晴らしい太もも娘、モモコに昔のお金を貰ったのだ。
財布から六文銭を出して、エヴァに渡す。
「毎度ありー」
ホクホク顔のエヴァが、立派な蒸気船の入口へと案内してくれる。
「またねー」
「あんまり早く会いたくない…」
愛想の良いエヴァに、恵美は困り顔になりつつ、船へと乗り込んだ。
甲板に上がり、下を見ると第65代目奪衣婆が、元気よく右手を振っている。
恵美も振り返した。
汽笛と共に、船が動きだす。
「ニャオス。ホントに、これで帰れるの?」
「ああ。ワタシも力を使っている。安心しろ」
ニャオスにそう言われ、改めて安堵した。
しばらく景色を眺めていると、辺りに7色の霧が立ち込め、視界を遮る。
そして、船が停まった。
タラップを下り、濃霧の中を歩きだす。
ニャオスの3つ眼が、ほんの少し先を照らした。
霧が次第に晴れてくる。
そこは。
帰省するために来た、新幹線のホームだった。
スマホを見れば、時間が戻っている。
「やった! ありがとう、ニャオス!」
「今度は間違えるなよ」
「うん」
恵美は本来、自分が乗るはずだった車両へと入った。
しっかりと車内を確認する。
(よし! 大丈夫!)
座席に座った。
何も、おかしなことはない。
「はぁ…良かった」
ホッと、ため息をついた。
「ニャオス?」
「何だ?」
「あなたは…どうするの?」
ニャオスがクルッと、こちらを向いた。
「ワタシは、この世界に滞在する。お前には、面白い力があるからな」
「ええ!? わたしに!?」
「ああ。お前は生まれつき、不思議なものを引き寄せる力を持っている。今まで何かで封印されていたが『混沌』に近づいたせいで、それが解かれたようだ」
「えー!? そ、それってどういうこと?」
「これから、もっともっと不思議な事件に巻き込まれるだろう。面白そうだから、ワタシも付き合ってやる」
「えー! そんなぁ…」
不安がる恵美に、ニャオスはナーオと鳴いて見せるのだった。
「あ! 猫みたい!」
「猫ではない!」
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/