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Ep.3 決別  《中半》  ダンジョン中盤編〜


「〝雷閃光〟ーー!」


バリバリバリッーー!と雷の落ちるような轟く波音がダンジョン内に響き渡るーー。


タイタントロールと対峙して30分ーー、ようやくカインのパーティーが対するタイタントロールが倒れたーー。



「ふぅ……こっちは終わった……!そっちはどうだい……?」


「ふんっ!口ほどにもない……やはりAランクと言えど、この俺を満足させる程ではないな……」


ボノフはタイタントロールを倒した際についた返り血をものともせず、ゴリラのような巨手をゴキゴキッと鳴らした。


「アシュリーの方は…………」



一歩アシュリーが担当している方では、アシュリーは戦わず他の冒険者が代わりに戦っていた。



「あいつ、何考えてんだよーー?俺たちに任せて自分は見てるだけなんて……!」


「本っ当に信じられませんわ!?この事はギルドに報告して問題にしてもらいませんと!!」


「正直ガッカリだぜ……自己中嬢ちゃんとは聞いていたが……まさかここまでとはな……」



結果何とか他の冒険者の力でタイタントロールを倒す事はできたが、アシュリーへの信頼は他に落ちたのだったーー。



ーーその日の夜。



「ずいぶんといい度胸だな……今すぐ引き返して一人でクエストを〝放棄する〟か、土下座してここに残るか選べーー!」


「頭まで血の昇り切ったボノフはアシュリーの胸ぐらを掴み、脅しかける」


「胸ぐら掴んで女の子に乱暴するなんて、ずいぶんはしたないマネするのね……これだからモテないゴリラは……」


「っーー!もう一度行ってみろ……その竹みたいな細い腕をへし折ってやるぞ……!?」


「ま、待ってよ……!ボノフ、さすがにこれはやりすぎだ……!アシュリーも挑発するような事言わないで、みんなに謝って……!」


「謝る……?何をーー?」



必死で懇願するように訴えかけるカイン。それをアシュリーはあしらうように聞き返した。


「今回ばかりは君の意図が見えない……、君の《星》の力を使えば今回だってタイタントロールくらいなら簡単に倒せたはずだ……!君がサボってばかりでいたから、その代わりに他の冒険者たちが戦ったんだよ?」


皆一様にうんうんと頷く。


と、そこに割り込む形でエネスが。



「あ、あの〜わたくしはアシュリー様が皆様のペース配分を考えてくれていらっしゃるから、あまり《治癒魔法》を使わずに済んでいるように感じるのですが……?アシュリー様は決して無駄な動きをしているわけではないと思いますよ……?」


「っーー!?そうなのかい……?」



驚きを隠せない様子のカインが聞き返すと、回復術師、付与術師は皆一様に悩むようなそぶりを見せる。



「確かに〜、本来なら〝勇者パーティー〟しか対応できないハズの白のダンジョンにしては大怪我とかあまり見ないわね?」


「まあ〜、ほんのちょっとくらい……かな?」



ボノフの掴む手が、少し緩む。


「すまないアシュリー、君がそこまで考えてくれてたなんて……」


謝るカインの言葉に、皆静まり返る。


しかしアシュリーは緩んだボノフの手をパシッとハタキ落とすと、


「別に……あなた達のためにやった訳じゃない……。私はただ面倒事がキライなだけーー」


何かをひた隠すようそう言って、自分のテントの中に戻って行ったーー。



「ふん!協調性の無いやつだ……」


「でも、僕らが注意不十分だったのは間違いないし、次からはペース配分にも気をつけよう……」



多少アシュリーの信頼は回復したものの、彼女の考えが読めない他の冒険者たちは皆一様に、アシュリーの行動を認められないままでいたーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『お師……何してるの?』


アシュリーは師匠ーーカーヴェラの扱う魔術をひっそりと眺めていた。



『これはね〜?〝星の魔術〟と言ってねぇ、自身が干渉したもので知りたい情報を何でも知れるものすごく便利な魔術さ…………』


『へぇ〜、すごい…………』



目をキラキラと輝かせながら、空中に浮いて神々しいオーラを放つカーヴェラに幼きアシュリーは視線を奪われる。



『そう思うだろう〜?でもね……、星の魔術は扱うのが困難な上に、ちょっとした()()があるのが厄介でね……』


『クセ……?』


『ああ、星の魔術は自身に干渉する()()()()()を得ることができるんだ……たとえば今わたしの足元にある本に書かれている情報、ここにある全ての本がーーだ。天井にあるシャンデリアにまつわる情報、本が置かれている机にまつわる情報に、今わたしの目の前にいる小さな小さな女の子の事まで何でもーーだ。どうだ……?』


『そ……それは、頭がパンクしそう……』


『だろ?』



ニィッ、と満面の笑みを向けるカーヴェラ。



『星の魔術は扱い手がよほど賢く、この魔術を扱えるだけのセンスと莫大な消費量をものともしない魔気の上限値、人や魔物が干渉するならそいつがもたらす行動から仕草、考え方まで頭の中に入ってくる訳だ……()()()()()がパンクしないわけがない……故に、星の魔術を扱えない奴は、星の魔術がどれだけ頭脳と精神をすり減らす術なのかさえ想像もつかない訳だ……』



どこか悲しそうに、カーヴェラは手に持つ本を閉じる。星の魔術により読まずとも情報が入ってくるはずなのだが、あえて本を閉じたーー。



『アシュリー……アンタは間違いなく〝魔術師〟としては天才だよ……この世で三本の指にすら入る程にね?……だから、他の人間の言う事を聞いてはいけないよ?……凡人の言葉は時に、()()()()()()()からね…………』



「わかってるよーーお師」



すぅっーーと、目を閉じ夢間に入る。


アシュリーはカーヴェラからもらったお守りの〝守護札(アミュレット)〟を、大事そうに握りしめていたーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



探索七日目ーーB98階層。


徐々に強くなっていく魔物は、もはやAランクの冒険者にとっては脅威的なレベルまで膨れ上がっていたーー。



「チィッーーあぶねっ!!」


「ひゃあああああーー、ちょっとー!魔導士は近接戦に弱いんだから近寄って来た敵くらい抑えてよね!?」


「これでも効かぬかーー!?ならーー!」



場数を踏み、上がっていくレベルに必死に食らいついていく冒険者達ーー。カインやボノフもペース配分を気遣うようになり、ダンジョン攻略は順調に進んで行った……のだが。



「あ奴は相変わらずか……」


「…………とりあえず、僕たちはやるべき事をやろうーー。」



アシュリーは一切戦わず、冒険者達に全ての戦闘を任せており、たまにやる気を出したかに思えば、魔物をからかったりするようなちょこざいな術を使って足止めをする程度だったーー。


そうしてたどり着いた、B99階層ーー。



「いよいよだな……」


「ああ、通例通りなら、〝門番〟なるボスがここで一度現れるだろう……」


「みんな、覚悟はいいかいーー!?」


「「「おおおおおおおおおおおおおおおっーーーーーー!!!!!」」」



地響きが鳴るような、凄まじい冒険者達の士気ーー最高潮にまで達したその場の空気に気押されながらも、感慨深い思いが込み上げてくるカイン。



「それじゃあ行こうか!ボノフ、アシュリー、みんなーー!行くよーー!!」



地下100階ーー。


そこは今までとは雰囲気の違う、洞窟のような人工物的ではない所だったーー。



「気をつけてーー、何が出るかわからないからーー!」


「カインさん、今の俺たちには敵なしっすよ!今こそカイン冒険団の力ーー、見せつけてやりましょう!!」


「ええっ、今ならどんな敵にも負けやしませんことよ!私の魔術で全て消し炭にして差し上げますわ!!」


「ボノフの兄貴が前線であれだけやり合ってんだ……隊のオレらが気後れしてどうする!!?」


「「「うおおおおおおおお」」」


皆一様に士気を盛り立ていくーー。


「うるさい野蛮人ども……」



一蹴するように、どこか呆れ顔のアシュリーがいた。



「むっ?カイン……どうやら……」


「ああ……来たみたいだねーー!!」



奥の方からひっそりと〝それ〟は姿を現した。



「あれ、……が?」


「ビ、ビビったんじゃねぇよーー!戦うぞっー!!」



「……グルルルルルル………グアアアアアアアアアアア」



超大型の体躯に研ぎ澄まされた爪ーー。室内を覆いたくさんとする〝恐竜〟のような()()は、耳の鼓膜が破れそうな程の威嚇の声をあげた。



「ぎ……ギガントドラゴンーー!!討伐レベルSランクーー!!」


「はっははははははははははははは!!!ようやくだ……血が滾る……!!やり合おうじゃねぇか……オメェーー!!!」



咆哮に身構えるカインと、喜々として服を脱ぎ捨てるボノフ。


気後れながらも、それについていく冒険者達であったーー。



「いくぞ!!《剣士》は奴の隙間を縫って少しずつダメージを与えて!《魔術師》は遠距離から他の冒険者を傷つけないようにありったけの魔術をーー、《回復師(かいふくし)》や《付与術師(ふよじゅつし)》はできる限りありったけの力で支援をーー!」



自身が先鋒を切りーー、ギガントドラゴンに一撃を与えるカイン。それに続いて他の冒険者も、続々とギガントドラゴンにダメージを与えていくーー。


「おらあっっっ!!!」


ボノフは腕力だけで、ギガントドラゴンのかぎ爪とやりあっているーー。カインは〝閃光〟の如く、目にも止まらぬ速さで連続してギガントドラゴンの隙にダメージを叩き込んでいく。


アシュリーはーー。見ていた。


戦局をーー、全体の動きをーー。


その結果判断したのがーー。


「うん。別に私が出るまでもないわね……。」


そう言ってただ、他の冒険者達がギガントドラゴンを倒すまで、ひっそりと邪魔にならない位置で傍観していたのだったーー。



その日の夜ーー。



「「「俺たちの勝利に〜………乾杯〜!!!!!」」」



とうとうB100階層の難関を突破した冒険者達は、意気揚々と宴を楽しんでいたーー。



「いや〜、カインさんのあの剣戟(けんげき)ーー、目で追いきれねぇっすよ!どうやってあんな速さで動いてるんすか〜?」


「ボノフの兄貴も凄え……あんなでっけえかぎ爪を前に、奴の動きを完全に封じ込んでいるんだからよ〜!!」


「そんな事よりお前ら、ギガントドラゴンの肉!なかなかいけるぞ!!」


「ん〜!?うんめぇ〜!!」



もはやパーティーも年齢も、男も女も関係なく、今宵の甘美な祭りに皆酔いしれるーー。


「ふふっ♪これだけ喜んで頂けるのであれば、調理のしがいがありましたわ♪」


エネスは嬉しそうに、どんどんお肉を切っていく。


肉の返り血をものともしないその手捌きは、なかなかどうして回復師とは思えないレベルの芸当だったーー。


「アシュリー……、ちょっと話しがあるんだけど、いいかい?」


神妙な面持ちのカインと、既に期待の色すら消えたようなボノフが、アシュリーの元を訪れる。



「そうねーーそろそろ……だと思っていたわ。あなたが来る頃合いわね……」


「ーー!ならなおさらどうして……!?」



アシュリーは自身のテントをたたみ、帰り支度をしている最中だった。


「あなたは私のことを買い被っているようだけれど……元々大したものじゃないのよーー、私は。それこそそこの()()()()()が思っているような言葉がお似合いかもねーー」


〝星の魔術〟で相手の思考が読めるアシュリーには、この場の全員の意見が手に取るようにわかっていた。


「頼むよアシュリー……君から弁明してくれーー!そうすればきっと、みんな許してくれる……。まだ君は一緒に冒険していられる……。そうだろう、ボノフ……?」


必死で懇願するように訴えかけるカインだが、ボノフの意見は真逆のものだったーー。


「カインーー、アシュリーがこの任務で倒した魔物の数は何体だ……?功績は?支援は?ダメージの総量値は?……残念だがエネスやお前が言うほど、オレはコイツに期待できん……それは他の奴らも同じだろうーー」


その場にいる大半の者が、うんうんと頷きながら三人のやり取りを見守っていたーー。


そしてアシュリーは……


「カイン……本当はあなたも思っているんでしょう……?これ以上ワタシがいてもチームの輪を壊すだけだって……」


そう。カインの思考に一番に浮かんでいた事ーー、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()だったーー。良くも悪くも〝勇者〟気質であるが故に、荒くれで我が強く、なおかつプライドの高い冒険者の多い今回の任務に限っては、それは()()だったーー。


「それじゃあ……ワタシはここで帰るから、あとは任せたわ…………」


(このままワタシが残るより、ワタシが悪者だと()()()()()()()()()()()()()()よりチームが一丸になる……そう、これでいい……)


ダンジョン探索にしてはあまりに小さすぎるリュックサックを背負い直し、帰路につくアシュリー。



「本当にこれでいいんだな……アシュリー……」


「ふんっ!元々この任務には似合わぬ存在ーー。チームの連携が壊れる前に追い出せてよかったではないか?」



最初から人数も少なく、殆どが初対面ーーカインの武勇や作戦だけでは一つにまとまらないと結論付けた結果のアシュリーの行動は、皮肉にも()()()()()()()になったーー。


唯一このチームを()()()()()()()()()()()アシュリーただ一人が、チームを立ち去る形としてーー。


投稿遅れてしまいすみません!!次回投稿は三日程お時間を頂きますが、何卒よろしくお願いします!!

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