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Ep.2 白のダンジョン  《前半》 ー潜入編ー


「ふぅ〜、何とかなったようだねさすがはボロフだよ」


「フンッ!この程度の雑魚が……いくら集まったところでこの俺様の敵ではない!」


B12階層ーー。


先程からボロフの圧倒的なパワーでコボルトやゴブリンを粉砕しており、他の冒険者の出る幕が無いままにダンジョン攻略は進んで行ったーー。



「…………楽できて良い」


「アシュリー、何か言ったのかい?」


「何でもない……」



戦果はすこぶる順調ーー、サボる事が正義!サボれれば何でも良いのだ!!


「ふん!生け好かん女だ……」


ダンジョン潜入からおよそ十時間。そろそろ今日は休もうという事になり、皆それぞれパーティー毎に別れてテントを張った。


食事は当番制で作った物を食べ、基本的に皆同じ食事を食べる。カインのアイデアだが、団結力を高めるという点では確かに効果的なところがあったーー。



「ねぇねぇ、やっぱりカイン様カッコいいわよね〜、指揮官としても剣士としても超〜一流だし、イケメンで優しい上に全員に気遣いが回るとか完璧超人だよね〜」


「しかも、聖国から〝勇者〟認定されてるんでしょ〜?世界でも数人しかいない勇者様とか……このクエスト参加できて一生分の運使っちゃったかも〜」


女子メンバーは集まりキャッキャと談笑し、男性陣は腕相撲などをして和気あいあいとしていた。


「君はみんなのところに行かないのかい……?」


持ってきたスープを手渡しながら、カインは言う。



「ごめんねアシュリー、せっかく前衛に出てきてくれたのに……ボロフが全部倒しちゃったね……」


「…………別に問題ない。楽できてむしろ好都合」



スープは受け取らずに持参したキャラメルを口に頬張る。少し残念そうにカインは自分でスープをすすりだした。


「でもいずれ君の力が必要になる。その時は協力してくれ……。このダンジョン、僕の勘が告げているーー。〝一筋縄ではいかない〟とーー。」


ランタンに照らされた空間の中、カインは表情を曇らせながら呟く。


女性陣の恨めしそうな姿勢を無視しながら、そそくさとテントの中へと入り込み休息をとったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




潜入三日目ーーB34階層。



「さすがにSランカーが三人もいると心強えぇ、白のダンジョンだってのに全く敵が怖くねぇぞ!」


「確かに……魔術の詠唱時間も取れるし、デバフ術師もいるから当てやすい、威力も上がるし絶好調」


「うち一人は聖国お抱えの〝勇者様〟だ。まだまだ序盤だが……これ本当に白のダンジョンかーー?」



Aランク冒険者が意気揚々とモンスター狩りをしている。チームの士気は最高潮。カインやボロフも調子づけてどんどんとモンスターを屠っていく。



「みんな、調子がいいみたいだね!このままだと十日もしないうちに最下層までいけるかなーー?」


「ふんっ!俺たちだけでも構わんが……確かにあいつらの力には目を見張るものがあるのも確かだな……だが、」



ひょいひょいっ、とかわしてゆっくり攻め込ませ、フェイントに誘い込まれたところでプシュッーーと、雷撃系の魔術を使って倒す。



「あのガキ女やる気あるのか……?あの程度のハイコボルトにあれだけ時間使いやがって……」


「まぁまぁ、アシュリーは本来単独で戦うのは専門じゃないから……」


「それでSランクとは、ギルドは随分と贔屓(ひいき)な評価をするもんだな……〝あの程度〟の能力値で必死に頑張っているAランクの奴等などゴロゴロいるというのに……あんなやる気のない奴を評価するなど……どうせ裏で賄賂か何か取引でもしたんだろう……けしからん奴め」


「まぁまぁ落ち着いてよボロフ……そんな証拠どこにもないでしょ?アシュリーだって本気を出せば僕たちと同じくらいの強さはあるんだから……」


「ふんっ!そうだといいがな……」



くるっと踵を返して階段を下っていくボロフ。


「…………アシュリー……」


心の中でどこか疑いの念を必死で払うように、カインは続いて階段を降りて行ったーー。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「今日も良かったワタシ達の活躍に〜……乾杯〜!!」


《閃光の雷》パーティーのが、葡萄酒を掲げて乾杯の音頭を取る。


気づけば道中採掘した魔晶石をライト代わりに宴が始まっていた。



「ねぇねぇカイン様〜、今晩ワタクシに剣術指南してくださいな〜?もちろん……手・取・り・あ・し・と・り……ね?」


「ああああああっ!こらあああああー!このエロ魔剣士が、カインに近づくんじゃないわよ!」


「なあなあボロフの旦那〜!こっちに来て飲もうぜー!アンタの武勇が聞きてえ!」


「チッ……仕方ねぇな……じゃあ去年この俺様が魔族の群れをたった一人で追い払った時の話でもしてやるか……」



探索も三日目になり、皆一様に打ち解けていた。Sランカーとはいえ同じ人間なのだ。一緒に戦い、同じ釜の飯を食べ、寝所を共にすれば自然と団結力は結ばれていく。


約一名を除いてはーー。


「やはり、こういうのは慣れませんこと?」


ふと近くに、ピンクの三つ編み髪の女の子ーー《慈愛》のエネスが葡萄酒片手に近寄ってくる。



「…………ワタシ、お酒は飲まないわーー悪いけど」


「だと思いましてーー!はい!!」



と、隠していたもう片方の手から保存食のチーズケーキを手渡す。…………せっかくだから受け取っておこう。


「わたくしの主アリス様の妹君であるルカ様も、あなたのように人と群れる事を好まないお方ですから……。ところでアシュリー様は、何故今回のダンジョンにーー?」



ゴクゴクッ、と葡萄酒を飲みプハァッーーとご機嫌気分のエネスが問う。



「…………別に。ギルドの職員に無理矢理押しつけられたのを断れなかっただけ…………。」


「ではわたくし達はそのギルドの職員さんのおかげで、皆さんが致命傷のような傷を負わずに進んでいられるのですね!あとで感謝しておきませんと!」


「……あなた、何を言っているの?」

 

不思議そうな顔でキョトンとするエネス。どうやら、アシュリーがすっとぼけている事に気づいてないのだろうーー。



「だってそうでしょう?あなた様がいらっしゃるからわたくし達後衛が何とか前衛の皆様方についていけていられるのですもの!」


「……別に。ワタシはただ楽してテキトーにあしらってるだけ……。あなたが思っている事なんてーー」



とーー、そっぽを向くアシュリーに対してエネスは。


「回復術師というのはね、職業柄ーーいろんな戦況を見ているんですのよ?」


と、遮るように語りかける。



「怪我をしていないか?無理をしていないか?そうやって観察していれば、よくわかりますわ……。前衛がどれだけハイペースで進んでいるか……後衛が前衛にどうしてバランスを崩さずについていけているのか……この三日間観察していてよくわかりましたわ。アシュリー様が足を引っ張る形になるおかげで、前衛は多少スピードを落とさざるをえない……故に、後衛は何とか前衛のスピードについていけてますもの。」


「…………それって、バカにしてない?」



割とマジに。



「まさか!?感謝していますのよ。…………特にあのボロフ様とか言う御仁や、ウォルフ様のような全く後ろを意に介さない特攻気質……そう呼べる方々はどんどん前へ進もうとしていきますもの。アシュリー様がこまめにペース配分をしてくださるからこその、このスムーズなダンジョン探索と心得ておりますわ!それこそまるで気の遣い方がルカ様みたい……ってそれは邪推でしたわね……!申し訳ありませんわ……」



ぐびぐびっ、と誤魔化すように残りの酒を飲み干すーーどうやら本当に心の底から恩に着ているみたいだ。


…………まあ、別に恩なんて感じなくて良いのだけれど。



「明日は多分、もっとどんどん進んでいこうとするわよ……あのゴリラ共」


「…………!ええ!もちろん、頑張ってついて行かせて頂きますわーー!!」


たまにはこういう気分も悪くない…………。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「はああっ!」


ザシュッ、ザッドバッーー。


「ふぅんっ!!」


バキッドゴッズシャッ



「相変わらず早えなSランクの旦那陣は〜、AランクとSランクじゃあ大きな差があるのはわかってたが、正直ここまでとはな……」


「正直絶望するよね〜、まさかAランクとSランクでここまで差があるなんて。でもさ〜…………」


「ああ、あいつだな……」


「全くもって一体何を考えていらっしゃるのでしょうか?〝あの方〟はーー」



潜入五日目ーーB56階層。


ハイコボルトやハイゴブリンに、ボーンナイトなどレベルが徐々に上がっていく。それも元がハイレベルから始まる〝白のダンジョン〟で、だーー。


Aランクだからなんとかなってはいるが、百階層以上ある白のダンジョンでは後半に向けて難易度が格段に上がっていく。


《付与術師》や《回復術師》はいるが、それでもやはりAランク冒険者でできる事には限度がある。故に〝Sランク冒険者〟が前線に出て主要の役割を担う形となっているのだがーー。


アシュリー・ホワイトは先程から敵の攻撃をかわしたり軽く蹴り飛ばす程度で致命的なダメージを与えないーーあくまでも他の冒険者の〝アシスト〟に徹底していたのだ。他のSランカー二人の功績が輝かしい分対照的に、アシュリーの行動は冒険者達の不満を募らせていく事になったーー。



「あいつーー、俺たちにばかり戦わせて自分だけサボってんじゃねえのか!?」


「ありえますわね……昨日のあの言動、態度……どれをとっても信憑性がありまくりですわ!」



他の冒険者から不満の声が上がる中、アシュリーは常に戦わず、ただ回避だけをしていた。



「ふんっ!同じSランクだからと少し期待をしていたが……やはりただの口達者なだけの女のガキだったか……」


「…………アシュリー……」


とーーだんだんSランク陣にも疑念の念が浮かび上がる。そんな場の空気を振り払うようにして、〝それ〟は唐突に現れたーー。


「っーー!皆様、あれをーー!」


エネスの声かける先には、本来白の百回層以上でしか出没し得ないモンスターである、〝タイタントロール〟が現れていた。しかもなんと三体同時であるーー!!


「っーー!!討伐ランクAランク…………遂に来たか!!」


討伐ランクAランクモンスター。Aランクパーティーか、個人ではSランク冒険者でなければ討伐不可能の難度を誇る強敵だ。


ちょうど今この場にいるSランカーは三人。


皆の視線がSランカーの三人に集まる。



「っーー!皆は下がっていろ!エリン、ネネス、ガルー!できるか!?」


「もちろん」


「当然」


「いつでもどんとこい!!」


「ボロフは左を、アシュリーは右を頼むーー!」


「ふん!いいだろう……ようやく肩慣らしレベルが来たか……!」



「ハァ…………面倒クサ」



それぞれ配置につき、タイタントロールと相対する。


B70階層ーー遂に白のダンジョン一段階目の〝ボス戦〟が始まったーー。



寝坊につきまして投稿遅くなりすみません!!次回は時間未定ですが明日中に投稿します!!

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