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気だるげ男子のいたわりごはん   作者: 水縞しま
1.たけのこと鶏肉の煮物
4/50

ほっこりごはん

 西依さんがいつもそうしてくれるように「今日の献立」と書かれた名刺サイズほどのメモが、小さなスタンドに立てかけられている。


------------------------------------

【今日の献立】


・たけのこと鶏肉の煮物

・かつお節とじゃこの和風ポテトサラダ

・小松菜とにんじんのゆず胡椒和え

・ごはん

・具だくさん豚汁

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 ちょっとーー!! 献立が神なんだけど!! 好きなものばかり。全部が私の好み。


「お、おいしそう……」


 思わず声が漏れた。


「ま、まさか、これ作ったのって……」


 おそるおそる、郡司に向かって人差し指をさす。


「他に誰がいんの?」


 あっさりと肯定された。信じられない。こんな若い子が? ぴっかぴかのイケメンが? 和食のど真ん中みたいなメニューを作ったの?


「嫌なら食べなくてもいいけど」


「食べるわよ。食べるに決まってるじゃない!」


 この瞬間のために、へとへとになっても仕事をがんばったのだ。私の一週間のご褒美。


 ほかほかのごはんが盛られたお茶碗を彼から受け取り、私は「いただきますっ!」と手を合わせた。どれから食べようか迷う。


 しばらく逡巡してから、まずはメインであるたけのこと鶏肉の煮物に箸をつけた。


 たけのこの食感がすきだ。噛み応えがあるのにかたすぎない。しゃきしゃきして、あっさりとした味わい。鶏もも肉のジューシーな旨味がたけのこにギュッとしみこんで、ほっこりした煮物に仕上がっている。


「ん~~、うまっ!」


 鶏もも肉は大きめにカットしてあるので満足感がある。彩りも兼ねてさやいんげんが添えられているのだけど、ほのかな苦みがしょうゆと出汁に絡んでおいしい。


 自然とごはんにも箸が伸びていた。つやつやで甘みを感じる白米を勢いよくかきこむ。おいしいおかずとほかほかの白米を交互に頬張っていると、体の中に蓄積していた疲れとか悩みが消えていく気がする。


「しあわせ~~!」


 単純だけど、お腹がいっぱいになると、それだけで幸せを感じるのだ。


 副菜のゆず胡椒和えは、小松菜とにんじんがくったりして味がよくしみこんでいる。小松菜にはわずかにシャキシャキ感が残っていてうれしい。ぴりりと辛いゆず胡椒に食欲をそそられ、副菜にもかかわらずごはんがもりもりとすすむ。


 あっという間にお茶碗が空になってしまった。


「おかわり!」


 お茶碗を郡司に差し出すと、冷ややかな視線を投げられた。


「そういうサービス、やってないんで」


「西依さんにおかわりって言うと、すっごくうれしそうな顔になって、いっぱいごはんを盛ってくれてたんだけどね~~!」


 ぜったいに聞こえているはずなのに、郡司は素知らぬ顔で洗い物をしている。私は仕方なく席を立って、炊飯器を開けた。


「わわ! まだいっぱいごはんがある!」


 どうやら二合ほど炊いたらしい。これで心置きなくおかわりができる。


「きっちんすたっふさんって、すごくしっかりしてますよね」


 私の好みもしっかりと代わりのスタッフである郡司に伝わっているようだし、食いしん坊なので白米は念のため二合炊いておくと喜ぶ、という情報も把握されているようだ。


「……どーも」


 郡司の愛想の無さはどうかと思う。けれど、悔しいけれど味はめちゃくちゃ満足だ。

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