脇役希望になった理由②
それから程なくして祖母は息を引き取った。
祖母の遺言とアリアネルの希望により祖母が使っていた部屋をアリアネルが使うようになった。そこは優しい祖母の匂いがほのかに残っているようで、アリアネルを穏やかな気持ちにさせてくれる。
祖母の葬儀等でしばらく忙しくしていたがひと段落ついたので、ようやく祖母に言われた引き出しを開けることにした。
中には菫色の表紙のが1冊入っている。古い本のはずだが、まるで新品かのように綺麗だ。
ゆっくりと1ページ目を捲る。
そこにはある国の王子と1人の少女の恋物語が書いてあった。少女は元々平民だったが、遠縁の男爵家からとある事情で養女として迎えられる。その後、下級貴族ではあるものの良縁を持ってくるようにとの養父の命を受け、なけなしの寄付金を積み、王立学園へ入園することとなる。そして、そこで王子との運命の出会いを果たすのだ。
しかしながら、相手は王子。身分違いの許されざる恋だ。そこがこの物語の見せ所で、読者はハラハラドキドキしながら2人を応援することとなる。
特に、王子の婚約者が少女への嫉妬と国母になりたい野心を燃やし第二王子と結託したところが読者の不安を煽った。その後、2人を亡き者にしようと画策する。しかし、それが国王にまでバレてしまい、第二王子は生涯離宮での幽閉を命じられ、婚約者は処刑される。
障壁を乗り越え真実の愛と認められた2人は、王に見守られる中、晴れて正式な婚約の儀を結びその後結婚。ハッピーエンドである。
さて、このめでたいお話の何が問題かというと、それは婚約者の名前がアリアネルだということ、またアリアネルは3歳の頃から王妃教育を受けておりもうすぐこの国の王子の婚約者になることが正式に発表されるということ。
つまり、これはアリアネルにとっては華やかな恋愛小説ではなく、恐ろしい予言の書なのである。
5歳のアリアネルにはもはや何が何だかわからない。ただわかることは自分は幸せにならないといけないということ。それは大好きな祖母の最後の願いなのだから。
ここからアリアネルの改編物語がはじまった。