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1-7 ゲームの登場人物、日記書きがち説

 タルタロスに手伝ってもらいながら荷解きを進めていく。

 ゴーレムはサイズはこんなだが結構力持ちなので本くらいなら軽々運んでくれる。


 自分も原作ゲームを対人要素までやり込んだ人間だったので、愛着のあるゴーレムの一体や二体はいたもので、この子たちが現実にいたらなあと思うことは何度かあった。

 その子たちじゃないものの、こうやってゴーレムに手伝ってもらいながら部屋を片付けるのは憧れがひとつ叶った形なので少し心が躍っている。


「あ、あった」


 ミツルの日記帳だ。

 年度毎に分けられている。几帳面な性格だったのだろう。


 去年までの日記帳は引き出しにしまって、今年度の日記帳をパラパラを眺めみる。横からタルタロスも覗いてくる。


 最初はは学校のことが中心で、秋にあるゴーレムファイト大会には絶対にリベンジしたいというようなことが書いてあった。

 ただすぐにゴーレムを使用した少年犯罪、子供たちを利用してテロを企てる悪の組織が台頭しする事件が発生し、ミツル自身も心を痛めているようだった。

 それに伴い、両親の仕事が忙しくなり、家に帰ることが日に日に少なくなっていったようだった。


 ゴーレムは実用化された技術とはいえ、まだまだ謎の多い分野である。ミツルの父はそのゴーレムの謎についてを主に研究していた研究員らしい。

 母は、ゴーレムの安全性について研究していたようだった。

 ゴーレムは今の所『良き隣人』というポジションで受けいられてはいるが、春の事件以前からゴーレムを用いた少年犯罪は稀ではあるが発生していたため、元からその安全性に危惧する人たちはいたようだった。

 ミツルの母は子供たちの『良き隣人』を取り上げずにすむようにという思いで研究していたらしい。


 これくらいの年頃といえば、無駄に親に反発したくなったりするような時期だと思うのだが、ミツルは仕事で忙しい両親に拗ねた態度を取ることもなく、両親を本当に尊敬していたのだと思ってなんだか涙腺が緩んでしまった。


 タルタロスにそれを気がつかれたくなくて、誤魔化すようにページを進めていく。


 両親が事故で死ぬ一週間前あたりから、少し日記の空気感が変わった気がする。

 今まで以上に両親は家に帰れないほど忙しそうだったこと、一度家に着替えを取りに来た母親の態度やそぶりを見て何か違和感を抱いていたこと。

 そして事故があった日の日付は飛んで、次の日。

 事故について受けた説明が書かれていた。山の上にある研究所から車で途中の事故だったそうだ。その日は大雨によって山道は滑りやすく、カーブでスリップして崖下に落ちた……とのこと。


 ──"忙しそうにしていた両親に対して、ぼくになにかできることがあったら事故は起きていなかっただろうか"


 少し、心が痛んだ。

 違う、違うよミツルくん。

 君がそんなふうに心を痛める必要はないし、君が何をしてもきっとこの結果は変えられなかっただろう。


 唇を噛み締めながら日記を読み進める。


 ──"あの事故は、本当に事故だったのだろうか。大雨の中何を急いで車を走らせていたのだろうか。ぼくの知ってるお父さんとお母さんからはあまり想像しにくい行動だった。"


 確かに、これまでの日記にも両親が忙しくして研究所に連日泊まり込むことは多々あったようだった。

 わざわざ大雨の夜に急いで帰ろうとするだろうか?


 ミツルが抱いた違和感がシナリオのミスリードになるとはそうそう思えないし、私もミツルの違和感に激しく同意だ。

 たとえ本当に事故だったとしても、ここには何か"必然"がある気がする。


 手がかりがなさすぎて何から詰めていけばいいのかわからないが……。


「タルタロスはどう思う?」


 ダメ元で聞いてみる。

 タルタロスは光る目を点滅させる瞬きのような仕草をしてくれた。


 それからまだ整理が終わっていない段ボールの方へ向かっていった。

 先に片付けてしまおうということなのか、タルタロスなりに思うことの答えがまだどこかに埋まっているのか。

 私は一旦日記帳を机の上に置いてまた次の段ボールに取り掛かった。

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