08話
やっと4歳になったわ。
お兄様以外の子供に会った事が無いから、定期検診に来る先生に、私はどのくらい小さいのか聞いてみた。
「そうですね。3歳より少し小さいくらいかと。ずっと寝込まれていたんです、これから大きくなりますよ」と笑顔で言われたけれど、少しショックだったわ…。
それって…はっきり言えば2歳では?
前世の記憶が無かったら、私ちゃんとやっていけたのかな…。
正直歩くためのリハビリは大変だった。
前世が無ければ言葉だって時間がかかったと思う。そう思うと記憶を引っ張り出してくれた女神様には感謝しかない。
エマから教わる勉強以外にダンスの練習が増えたわ。
「まず基本のステップから覚えていきましょう」
「よろしくおねかいします」
教えてくれるのは執事のテランスさん。
ダンスの授業は思ったりより体力がいる。
私の体力がつくまでは足運びを覚えたら、手拍子に合わせてステップを踏むだけ。それだけなのに結構難しい…。
私リズム感が悪いのかな?いや…足が短いのね…。
「今日はこのくらいにしましょう。毎日練習すれば体も慣れてきますよ」
「ありがとうございました」
30分くらいだったけれどフラフラ。
汗が凄いから部屋で湯浴みをして、筋肉をほぐすマッサージをされたらお昼寝。
これから毎日か…令嬢って大変なんだね。
*****
共通語が終わり今は隣国の言葉を習っているの。
部屋の本も全部隣国の言葉で書かれているから、文字を覚えないと読めないんだよね…。
ちなみに部屋にいる時は、乳母もメイドも隣国の言葉しか話さなくなるの。
日常的に聞く方が覚えられるかららしい。でもね、喋るのは愛し子の能力で完璧なのよ。
読み書き方が大変なの。ある程度読めるようになっても、書けなかったりするしね。本を読むと分かりやすいの。絵本は読めるけれど、物語は読めないとかね。
読める本が増えるように頑張っているけれど、時々心が折れそうになるわ…。
「ミアたちも、ふつうにはなせるのすごいね」
「学園に入ると、この2つの国の言葉は必ず学びますからね」
「そうなんだ」
学園は12歳から6年間通うんだって。
前世の中高一貫みたいなものかな?ということは…家で学ぶのは小学校までの勉強って事なのかな。
「社交の場、主に夜会では外交や貿易でいらした方とも、お話をする事がありますからね。社交デビューまでに覚えていないと恥をかいてしまいます」
「わかった。がんばるね」
お兄様は領地に貿易に来る国の言葉も勉強しているんだって。私もこれが終わったら勉強するのかな?
喋るだけなら愛し子の力で出来ちゃうから、ちょっとずるしてる気になるけれどね。
*****
ダンスの授業は1つのステップを覚えたら、次のステップを覚えることを繰り返し、舞踏会でよく流れる曲を簡単な順番で覚えていく。
ダンス自体は私の体が小さいし体力が無いのから、曲に合わせて踊るのはまだ先になりそう。今は基本を体で覚えて、考えなくても踊れるように頑張っているわ。
ピアノの練習も始まり結構楽しい。
バイオリンは弦を押さえる力が無くて、これも教わるならもう少し先になりそう。
とにかく、体力と体がもう少し大きくならないと出来ない事が多いの。寝たきり状態の成長の遅れは、なかなか取り戻せなくて時々イライラしちゃう。
フェーリが『イライラしても出来ることは増えないよ』と言ってくれるから、今は出来る事を頑張っているわ。
『フェーリ達、精霊は何か勉強するの?』
『しないよ。生まれた時から知識を女神様から与えられているからね』
『ちょっとずるくない?』
『ずるくないよ。じゃないと仕事が出来ないよ』
『お願い叶えるやつ?』
『精霊の1番の仕事は、この世界の調和を整えるのが仕事だよ。あれは暇つぶしみたいなものかな?今は君の傍に居る事が仕事だから、この邸の調和もついでに整えてるよ』
『調和って何?』
『説明するのは難しいよ。でも調和が乱れると魔獣が増えたり魔物が出たり、天候が荒れたりもするからね』
『精霊さんのお仕事って大変だし大事なんだね』
『そんな凄い精霊が君を守護するんだ。感謝してよね』
『うん。フェーリ、いつもありがとう。明日はおやつのクッキー1個多くあげるね』
『約束だからな』
『うん。約束ね』
寝る前にフェーリとお喋りするのは日課みたいなもの。
頭の中で会話をするのも慣れたし、フェーリは色んな事を知っているから話してて楽しい。
たまに優しくないけれど、心配してくれているのは分かる。
フェーリって「ツンデレ」てやつかな?
本人に言ったら怒りそうだから、絶対に言わないけれど…そう思うと可愛いよね。