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03話


話し合いを終え、ランベール侯爵家のタウンハウスに夫妻が戻ると執事のテランスが出迎える。


「お帰りなさいませ」

「あぁ、マノンを連れて執務室に来てくれるか」

「畏まりました」


執務室にテランスが家政婦長のマノンを連れて行くと、フランドル伯爵家での話し合いの結果を伝えられた。


「皆に相談無く決めてしまってごめんなさいね。でも…あの子はフランドルには置いておけないわ」

「乳母や世話をしていたメイドも、明日一緒にこちらに来る事になった。慌ただしいがよろしく頼む」

「「畏まりました」」


マノンはどの程度赤子の物を用意するか算段をつけ。


「旦那様、出来れば亡くなられた伯爵ご夫妻がミュリエル様にご用意した物は全て引き取って頂けますでしょうか?ご両親の愛情がこもっているでしょうし、使い慣れた物の方が宜しいかと」

「そうだな…あの子の部屋の物は全て引き取って来よう」

「ありがとうございます」

「念の為、医師も手配致します」




*****




朝食の後、長男のフェリクスにも隠さずに話した。


社交界は噂が回るのが早い。面白可笑しくされた不確かな噂を聞くより、事実を知らせるべきと判断しての事だった。


「僕に妹が出来るのですね。会えるのが楽しみです」

「体の弱い子ですから、優しくしてあげてね」

「はい」


フランドル家の話を聞き最初は怒っていたフェリクスも、妹が出来る事を素直に喜んでいた。


「でも、次の当主はその人で大丈夫なのですか?」

「ご夫君はどのような事態になるのか理解し、今まで通り領地で代官として務めると決められたよ。ご子息も一緒だから代替わりまでの辛抱だろう。それまでフランドルが持つと良いがな…」


5歳の子供でも分かる事が、当主となるエリアーヌには理解が出来ていない。


「では迎えに行ってくるよ」

「はい。お勉強が終わったら会えますか?」

「体調次第だが、大丈夫だろう」


夫妻は馬車と荷馬車を連れフランドル家へと向かった。


伯爵家からはミュリエルに用意された物がどんどん荷馬車へと運び込まれる。


シャルトル公爵からも管財人が来ていた。婚姻の際に公爵家から持参した宝飾品等が目録と照らし合わせ持ち出されて行く。


「ランベール侯爵、こちらもお持ち下さい。ミュリエルが生まれた時に描かれた唯一の家族の肖像画です」


セザールは家族で描かれた物をジョセフに手渡す。


「ありがとうございます。お2人はいつ領地へ?」

「見送り次第向かいます。ミュリエルの事よろしくお願い致します」

「ご安心を。息子も妹が出来ると喜んでいましたから。奥方はこれから現実を知るでしょう…」

「そうですね…私は領地の事を最優先で考えます。領民には迷惑は掛けられませんから。息子が学園に入る頃には状況が落ち着いていると良いのですが…」

「話されるのですか?」

「ええ。妻の選んだ事により、今後起こり得ることも全て息子には伝えるつもりです。生活は義姉さんが嫁ぐ前に戻りますし、知らなければ貴族社会で困るのはカミーユですから」

「そうですね…」


代官として優秀なセザールの元で育つのなら、子息は大丈夫だろうとフランドル家を後にした。




*****




ランベール侯爵家のタウンハウスでは、家政婦長のマノンの指示で荷物が運び込まれて行く。


「こちらで家政婦長を任されておりますマノンと申します」

「乳母のエマと申します。この2人のメイド、ミアとアンと共にお嬢様が生まれた時よりお世話をしております」

「今後もよろしくお願いしますね。まずはミュリエル様を医師に診察して頂きましょう」


整えられたベッドにミュリエルは寝かせられる。侯爵夫妻が見守るなか、医師の質問にはエマ達が答えながら診察は進む。


執務室に場所を移し。


「先生、ミュリエルはどうなのかしら?」

「正直、何処が悪いかはっきりしません。今の所は虚弱としか。今までも対処療法での治療だったようですが、今後もそうなるでしょう」

「成長したら少しは改善するのだろうか?」

「そういう方も居ますし、虚弱のまま大人になる方も居ます。成長してみない事には何とも。原因が分かれば治療の仕方もあるのですが…」

「ずっと眠っているのは大丈夫なのかしら?」

「乳母の方によると目は覚ますので食事等はその時に。ただ診察中も目は開いていましたが、あまり反応がありません。声は聞こえているようですが、目はどの程度見えているのか分かりません…。同じような症例が無いか調べてみます」

「よろしくお願い致します」


ミュリエルの部屋ではマノンがエマ達から、普段の世話や気をつける事など確認をしていた。


環境の変化のせいか、いつもの発熱か、ミュリエルは高熱に数日うなされ続けた。





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