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女神の愛し子だけど役目がありません!  作者: 猫ヶ沢山


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35話


「ミュリエル様、おやすみなさいませ」

「おやすみ、アン」


侍女のアンが下がり部屋に1人になり、しばらく様子を伺う。


「もう大丈夫かな?」


扉に張り付いて外の様子を伺うけれど大丈夫そう。


『この前みたいな所は他にも沢山あるのよね?』

『あるよ』


フェーリの話だと世界の調和が乱れると魔獣が生まれ、増えすぎると土地も荒れるらしい。


本来ならそうなる前に調和を整えるのだけれど、一気に乱れると精霊だけでは手に負えないらしい。


魔獣のことは調和の乱れの一部にしか過ぎず、他の詳しい事は教えてくれなかったわ。


『魔獣ってそういう風に生まれるの?』

『魔獣として生まれ繁殖して数を増やす場合と、乱れから動物が魔獣化する場合があるんだよ』

『そうなのね』

『君が力を注いでくれたら多少調和が乱れても、精霊で対処出来るから安心なんだ。でも、増えた魔獣は戻らないけどね』

『それは人が住む所まで出てきたら、討伐されるから問題無いわよ。でも1回で結構疲れるから1ヶ所ずつでも良いかしら?』

『もちろん』

『じゃあ早速行きましょう』


ベッドには私が寝ている幻影を作り、様子を見に来たくらいじゃ気づかれないように細工をする。


「結構、上手く出来たんじゃないかしら?」

『まあ、誤魔化すくらいならね』


フェーリの基準は厳しいわ。


闇属性の幻術はあまり使った事が無いのだから、誤魔化せるだけ上出来だと思うのに、フェーリってあまり褒めてくれないのよね。




*****




転移で連れて来られたのは真っ暗な森の中。


鬱蒼として月明かりが届かないから、何だか不気味な雰囲気。ちょっと怖いわね…。


前世のホラーを思い出させるわ…。


『フェーリ、ここで注げば良いの?』

『もう少し奥が良いかな?』

『分かったわ』


フェーリは辺りを確認するように、ふわふわと飛んで行く。


避暑地みたいに近くに人が居そうな気配も無いわ。此処は何処なのかしら?


10分ほど歩くと、とても大きな木が見えてきた。


『あの木の所にしよう。この森の中心だ』

『この前も大きな木があったわね』

『こういう古木は沢山の力を蓄えているから手伝ってもらうんだ』


御神木みたいな物かしら?


『じゃあ、この木の近くで力を注げば良いのね?』

『そうだよ』

『任せて』


地面に手をつき目を閉じる。この地が豊かに蘇るように。森に生きる者達の幸せを願い大地に力を注ぐ。


避暑地よりも力が抜けるのが早い。多分この森の方が深刻って事よね。


全力で願いを込めると、しばらくして力が止まった。


『もう十分かしら?』

『もう入らないよ。君…またやり過ぎたね…』

『だって、注げるだけ注いだ方が安心よ』

『そうだけど「ほどほど」で良かったのに』

『寝たら使った分は元に戻るんだもの、全力でやるに決まっているでしょう?』

『そういう所は、君ってちゃんと愛し子だよね』

『世界のためにって精霊がお願いするんだもの、手伝えるなら手伝うわ。でも人に命令されたらやらないと思う』

『使命が無くて良かったね』


意地悪そうな顔でフェーリは笑うけど、結構本気で思っているのよ。


精霊はフェーリしか知らないけれど嘘をつく理由もないし、精霊ではどうしようもないくらい乱れてしまったから私を頼ったのだと思う。


でも、これが偉い人から命令されてなら理由によってはやらないわ。特に人のせいでそうなったのなら…絶対に嫌よ。


『今日はもう戻ろう』

『そうね。寝不足になったら怪しまれちゃうわ』


こうしてフェーリのお手伝いが始まった。


沢山あるって言っていたけれど、何日くらいで終わるのかしら?




*****




今日は久しぶりに、お兄様と一緒にお茶会に来ているわ。


でも、お兄様の様子が少し変なの。


「フェル兄様、お疲れですか?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


キラキラした笑顔で返されるけど、何だかいつもと違うのよね。


「話には聞いていたけれど、本当に子息とは話せていないね」

「ええ、まぁ…」


今日はお兄様が居るから、余計に皆様ご挨拶だけで去って行くのだけれど…。


お兄様が離れるからとシャルロット様達に合流したわ。


「はぁ…今日はいつもより話せませんわ…」

「ふふ、フェリクス様というガードがついていらっしゃいますものね」

「やはりそうですよね…」


シャルロット様達は微笑ましそうに笑っているけれど、笑い事ではないのよ…。


だって、お兄様に怯まず話しかけてくれる人じゃないと無理って事でしょう?


やんわりお兄様にどなたか良い方を紹介して欲しいと言ってみたけれど、笑顔で「まだ早いからね」と言われたわ。


もしかして、お兄様はお父様より高い壁なのかしら?


「このままだと、お兄様を気にせずに話しかけて下さる方を待たないと出会いがありませんわ…」

「あら?フェリクス様の認められる方なら良いではありませんか」

「そんな方、居ると思いますか?」


つい半目で皆様を見てしまうわ。


「難しいかもしれませんわね…」

「フェリクス様も認める方ですか…心当たりがありませんわ」

「最終的に卒業までにお相手が決まれば良いのですから、焦らないことですわ」


皆様、やはり無理だと思ってますわね…。


容姿端麗、文武両道、性格も良いお兄様が認める方って誰かいないのかしら?





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