真田さんの家へ!
スリーピーが仲間になり翌日。
学校から帰ってきたミノルはなんだか陰鬱としていた。
「……なんでそんな暗いんだよ」
「ほらあ、もうすぐ夏休みじゃん」
「…………」
ああ、わかった。夏休みになるってことはあれだ。アレの時期か。
私はため息をつく。
「教えないぞ」
「えぇーーー!?!?」
「ミノル覚え悪いから教えてもすぐ忘れるだろ」
期末テストの時期だ。
ミノルは頭がそこまでよくないので、赤点常習犯である。アプリを開発できる知能はあるが、限定的なのでテストとかそういうのは無理。
「うにゃああああ! もううちはおしまいだ……。うちの人生終わった……」
「んな大げさな……」
「だって赤点取ると去年みたいに補習だよ補習! 先生たちとマンツーマンでせっかくの夏休みを無駄にするなんてうち耐えられない……」
「なら今ログインしてないで勉強したらいいんじゃないの?」
「辛辣ぅ! ねー、シグえもーん! うちを助けると思ってぇ〜!」
「誰がシグえもんだ」
こいつまだ危機感感じてないだろ。
「しょうがないな……。教えてやるよ。そのかわりぽんぽこを今呼ぶからな。ログインしてるし」
「ぽんぽこを?」
私はぽんぽこを呼ぶ。すると、ぽんぽこが何ですか?と言って来たので、私はぽんぽこにある頼み事をする。
高校二年生の範囲は何となくわかってるし、何ならその範囲は中学生の時に大体終わらせているので要点を纏めたノートが実家にあるはず……。
ただ、実家に行くとしてもミノルは連れて来たくないな。正直あの妹から私の貞操を守れる気がしない。
ここはまあ、ぽんぽこと行くのが理想だ。
「ちょっと私と一緒に私の実家に行って欲しい」
「夜桜家に……ですか!? 恐れ多いですよ!」
「頼む」
「……ミノルさんじゃダメなんですか?」
「ミノルはなぁ……。うちの家と多分そりが合わない気がする。特に父と」
うちの父さんは厳格な人だからな。妹にこそ甘かったが、私に対してはものすごく厳しかった。
ミノルと真逆のような人なので、そりが合わないだろう。
「わかりました。明日は土曜日なので明日行きますか?」
「そうだな。今日中にミノルにぽんぽこのスマホに入れてもらうようにするよ。多分後で家訪ねる」
「わかりました。では、今から待っていますね」
そう言ってログアウトする。
私はミノルにぽんぽこの家に行けと告げ、一緒にログアウトしてぽんぽこの家に向かった。
ぽんぽこ、もとい真田さんの家は普通の一軒家。
いや、私の実家がおかしいだけなんだけど。ミノルはインターホンを鳴らすと真田さんのお母さんらしき人が出てくる。
「こんにちは!! 茶子ちゃんいますか!」
お前いつから名前呼びするようになった。
「茶子ですか? えっと、失礼ですが……」
「あ、うち茶子ちゃんの友達の来栖 実っていいます! よろしくおなしゃす!!」
「げ、元気な子ね……。えっと、茶子なら二階に……」
「あ、待ってましたよミノルさん」
と、二階から真田さんが降りてくる。
「はい、ミノルさん」
「任せとけし!」
コードを繋ぎ、扉が現れる。
扉は緑色。優しい自然の色で、真田さんの性格が表れているような扉。
正直言って真田さん、こういう優しい色が似合う。ミノルみたいな外見ド派手ギャルとは正反対の子。親御さんは何を思ってるのだろうか。
「じゃーねー! シグレを一日よろしくねー!」
「はい」
ミノルは元気に走って帰っていく。
「茶子、あんな子とも友達なの……? いじめられてない……?」
「大丈夫だよ。ミノルさんめっちゃいい子だから……。いじめなんて事はないよ」
「でも……あなた正直言ってそういう明るいキャラじゃないじゃない……。クラスで浮いてない……?」
「…………」
そこは否定しなかった。
まあ……言っちゃ悪いけど真田さんいじめられてこそいなかったけど誰とも話していなかったからな……。
「友達とか家に連れて来たことないし……」
「も、もういいよ。友達はいるから……」
「ほんと?」
「ミノルちゃんは友達だよ!」
ミノル、よかったな。
「あとこのシグレさんも!」
「シグレ?」
「あ、どもっす」
「あらこんにちは。電脳アバターの子?」
「ええ。まあ、はい」
狼狽えないのか。私を見ても。
「可哀想にね……」
「いえ……」
「茶子。ちゃんと仲良くするのよ」
「わかってるよ。部屋に戻るよ」
「わかったわ」
と、少し恥ずかしそうにしながら部屋に戻っていった。
「すいません。騒がしい母で」
「いや、愛されてるじゃん」
「それは……そうですけどっ……」
「普通の母は娘をいつも心配するもんだ。うざいとか思うかもしれないけど、許してやりなよ」
「はい……」
私にもこの言葉は突き刺さるな。




