表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/326

煌めきの雨

 始まりの街にある図書館から行って私は魔物図鑑を開く。

 この辺りに生息する魔物を調べることにした。熊の魔物の名前はブラッドクマーというとか、スライムはやはりスライムだとかそんな知識が増えていく。


 だがしかし、レインオルトについての項目はない。


「レインオルト……。あれは高ランクの存在だと思うんだけど……。なんか鱗も落としていったから鱗もたくさんあるし……」


 私は魔物図鑑を読み終える。

 ドラゴン系統の魔物が一切載っていないあたり、ドラゴンはもしかしたら魔物に分類されないのかもしれない。

 ドラゴンは神聖視されており、無闇に傷つけたりしてはいけないとかいう教典でもあるのだろうか?


「となると、次は神聖な……ってあるじゃん!ー


 魔物図鑑の隣の隣にドラゴン図鑑というものがあった。注意力!

 ダメだな私……。近くにあったのに見つけられなかったとは。


 まあ、気を取り直そう。


 私はドラゴン図鑑を開いてみる。

 レインオルトはどこかな?と思うと、ドラゴンにも種類があり、陸上ドラゴン、水中ドラゴン、龍という分類らしい。

 一般的なドラゴン種が陸上ドラゴン、水中に住むドラゴンが水中ドラゴン、そして長い年月を生き、自然をも脅威に晒すドラゴンが龍。


 私は龍のところを開く。


「雨神レインオルト……」


 あった。

 説明文を読んでみる。


「頭がよく、人間を滅多に襲わない龍。レインオルトの周りには豪雨が降り注ぎあたり一面を水没させてしまうという……」


 なるほど。すごい豪雨だったもんな。


「雨を神聖視する地域からは神様として讃えられているために雨神という異名がついた、これはまあわかるね」


 雨が降らない地域にレインオルトがいくと感謝もされるだろう。


「だがしかし、時折レインオルトは人間を見定めるかのように人の前に現れる。レインオルトの豪雨の中、数秒立っていられる人間を認め、鱗を渡す……。たしかになんか落としてったけど認められたのか私」


 数枚ありますけど。


「生体行動として、鱗を自分で剥がして綺麗にするが、時折飲み込んでしまい喉に刺さる。その時は自分より遥かに小さい力持ちの生物を飲み込んで抜いてもらう……。喉に刺さった小骨とか微妙に痛いもんな」


 気持ちはわかる。


「雨を降らす理由も綺麗好きだからという理由が窺える」


 雨を降らせて自分を常に洗っているとでもいうのだろうか。

 龍というのはなんていうか超常的な存在だな……。


「ん? 認めた人間のもとに定期的にやってきて友好の印として鱗やスキルなどを渡すことがある……? これがマジなら相当ヤバいんじゃないか? さらに一度人を認めたらその人がこの世界からいなくなるまで誰も認めない一途な龍……」


 一途なのも綺麗好きだからだろうか?

 複数と関係持ってたらこじれにこじれる時あって汚くなるもんな。


「ほほぉ……。本当に運が私に向いてきたんじゃないか? これは……」


 最近、笑顔が増えてきたからだろうか。

 私、心から笑うと本当にいいことが起きるんどよ。昔からそうなんだ……つっても昔は本当に笑わなかったけどさ。


「嬉しい、これは……。この鱗を加工してもらえるところ探そう。頑強で威力の高い弓が期待できそう」


 素材ランクとして最高ランクのこの鱗。

 加工素材としても一流のものだろう。これを加工出来る人はいるのだろうか……。

 とりあえず私は本を戻し図書館から出る。


 始まりの街……で加工してくれる人はいないか? 


「こんな始まりの街にいたら逆に困るわなあ」


 プレイヤーに鍛治師がいれば加工してくれそうだが……。鍛治については全くわからないんだよな。

 前作だと素材レベルというものがあり、鍛治レベルを上げないと加工できない、なんてことがあった。が、今作は出来るようになってないだろうか。


「とりあえず工房エリアに行こう」


 工房エリアは、始まりの街の一角。

 工房が多く並んでおり、素材を渡すと武器を作ってくれるところだ。

 ダメ元で行くんだけど……。


「あー、この素材どこで? これ加工するとしたらここじゃ技術もないから未完成品しかできないよ?」

「未完成品でいいのでそれを」

「あいよ」


 そして、そこで数分待つと。

 NPCの人が出来上がったと手渡してくる。


 できた弓は青い装飾がなされているが、そこまで豪華ではない。

 とりあえず鑑定してみると。


煌雨(こうう)の弓(未完成品)】


 という結果。未完成品にしては初心者武器より本当に攻撃力が何倍も上がっており、割と文句はない出来。しばらくは未完成品のこれを使わせてもらおう。


「ありがとう! これで金の代わりになるかいおじさん」

「まだあるってのかい!? あんたなにもんだ? 一枚ならまだしも……」

「あはは。ま、運が良くてっすわ。それでいい?」

「当たり前よ! むしろお釣りがくるくらいでさぁ!」


 そう。ならよかった。

 等価交換はこの世の法則だからね。


「また来てくれよ! エルフの嬢ちゃん!」

「うん」


 私は鍛治工房を後にした。

 煌雨の弓。かっこいい名前だなあ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ