ノーハートエンジェルの祭り ②
私は先陣を切って建物の中に突入していく。
光陰の弓矢を構え、光の矢を放つ。だがしかし、威力はあれどあちらも防御力というものがあり、耐えられてしまう。
「テメェ!」
と、飛びかかってきた。
すると、背後から筋肉質の男が右ストレート。男は吹っ飛び消えていく。
そして、私の横で姿勢を低くしている細目の男。髪をまとめ上げたその男は目を見開く。そして一閃。
「俺らが守ってやるぜ天使様よぉ!」
「誰だか知らないけどありがとさん」
「俺はショーグン。よろしく頼む」
「俺はカイザーだ! よろしく頼むぜ!」
「シグレ。よろしく」
私たちは共に武器をとり、戦いに身を投じる。
「こんなろくでもねえグループなんかよぉ! こういった時は無駄に足掻くわなぁ!」
「そうだね」
「うわぁ、割と強い二人だ……」
拳を叩き込むカイザーに剣で切り捨てるショーグン。
「よし、ここの部屋のプレイヤーは掃討完了!」
「この調子でリーダーを叩きのめす!」
「あの男かな」
つい先ほどリンドウの工房来た男を思い出す。
私は階段を見つけ駆け登ると、すでに武器を持った男たちが待機していた。
「テメェら俺らんとこで好き勝手やってくれんじゃねえか! しょせんは陰キャどもの集まりだろうがよ!」
「陰キャとか陽キャとかそういうこと言うのはダサいでしょ」
「その通りだな」
「テメェらは大人しく俺らの養分となってりゃ可愛げがあるのになぁ! 死ね!」
と、剣を振り下ろしてくる。
私は矢を放つが一発目はかわされる。焦らずにもう一発打つ。
すると、背後からそこまでという声が聞こえてきたのだった。
「その声……」
「あん? 敵の大将のおでましか?」
「テメェら……」
私は聞き覚えのある声がして振り返る。
そこにはヴァルゴさんがいた。ヴァルゴさんの姿を見て固まるアーガイルのメンバー。
「テメェら……このゲームでもこんな真似してやがったのかよ」
「あ、ああ、兄貴、申し訳……」
「カタギはテメェらの養分じゃねえんだぞ? それに、そっちの天使は俺の友人だっつーのによ……。落とし前つけてくれんだろうなァ」
「ひ、ひぃ!」
「現実世界でいいから軽く指でもいっとくか? その筋のもんだと箔がつくぜ」
「す、すいませんでした……」
「PKなんざだっせぇ真似しやがって。半グレのような奴らを囲ってこんなことして楽しいかよ?」
ヴァルゴさんは怒ったようにメガネをくいっと。
「……ヴァルゴさん、その辺で」
「……ちっ。テメェら、もう二度とこんな真似すんじゃねえぞ、次やったら破門してうちの敵として認識するからな」
「は、はい!」
そういうと、ヴァルゴさんはニッコリ笑う。
「ヴァルゴさんってその筋の人だったんですね……」
「意外でした?」
「もちろん……」
「はは。ま、このゲームをやるときくらいはヤクザってことを忘れたいですからね。でも、こいつらのしてることは目にあまることでしたので」
と、流し目でちらっと見るヴァルゴさん。
「あの、私も割と舐めた態度なんですけど指詰めます?」
「ええ!?」
「すんません兄貴……」
「そんな堅苦しくなくていいし、兄貴じゃねえし! ま、この恥知らずどもも一応うちの組員ではあるので……。すんませんね」
「いえ……。もうPKとかしなけりゃいいですから」
「だそうだ。わかったな?」
「はい!」
どうやら話がついたようだった。
「なあ、シグレちゃんよぉ。その筋の友人いたのか?」
「いや、私も初めてその筋って知った……」
「物腰柔らかそうな人なのにな。インテリヤクザってやつか」
「ははは。カタギに怖がらせないように笑顔を振りまいてるんですよ」
いや、まあ、怖がられたくはないわな……。
こうして、私たちの祭りは終わりを迎えた。




