アーガイルというグループ
私はリンドウについていく。
リンドウの工房は王都の中心部にあるらしい。リンドウブランドとして立ち上げて、トップの鍛冶師になるのだと道中語ってくれた。
「ここが、僕の工房です」
と、リンドウは誇らしげに建物を見せてきた。
レンガ造りの家のような工房だった。広さは十二分にとっているらしく、武器などを保管しておく倉庫としても十分な役割を果たすのだという。
中に案内されて、入ってみると、金属を溶かす炉や冷やす冷却装置のようなものなど設備が整っているようだった。
「設備も一番いいのを買ったんです。なので高品質なものができやすいんですよ」
「へぇ。高かったでしょ」
「そりゃもちろん……。それで、白くてかわいい鎧ですよね? たしか倉庫に素材があったと思うのでとってきます」
そういって、倉庫のほうに向かうリンドウ。
壁には試作なのか、刀のようなものも置いてあった。私はその刀を手にして、居合切りみたいなことをしてみる。
なんだかこうやって腰に差していると侍になった気分だな。悪くない。
「たしか持ち方はこうだったよな」
昔の記憶を呼び覚まし、適当な型をやってみる。
剣術や居合術にも流派というものがあり、その流派によって型は違う。昔、護衛術とかも習わされていたし、こういう剣術も少し齧らされた。頑張って型は覚えたけど大体もう忘れてる。
「ま、長年やんなかったらそうだよな」
私は刀を戻し、近くにあった椅子に座りリンドウが来るのを待っていると。
「こんにちはー。鍛冶師のリンドウさんってここで……」
「ん」
「あ、あなたがリンドウさんですか?」
と、物腰柔らかそうな男性が私に話しかけてきたが、私はすぐに否定。
そのとき、奥からリンドウが帰ってきた。リンドウは目の前の男の人を見て、少し驚いた顔をしつつも、なにか作ってほしいものでもと尋ねていた。
「その、俺たちアーガイルっていうグループなんですけども、少しお願いがありまして」
「お願いですか?」
「僕たちのギルドは人数も多く、掲示板でも有名になっているギルドです。それで、その僕たちのギルドと専属契約を結んでほしいなということでして」
「結構ですよ。僕はそういうのはいいんです」
と、すぐに拒否。だがしかし、相手は退かない。
「そこを何とかできませんかね? 必要な素材があれば言っていただければ用意いたしますし、どんなレアなものでも……」
「いえ、僕はそういう企業のようなプレイはしたくないので」
まぁたしかに企業みたいだよな。
契約を迫る親企業と迫られる下請けって感じ? だがしかし、素直に退かない辺りこいつも結構曲者だと見える。
私は二人が話している傍ら、掲示板でアーガイルについて調べてみる。
「……アーガイルにPKで有名なプレイヤーが出入りしているという話があるね」
「そうなんですか?」
「え? あ、いや、違います。彼はグループに入りたいと志願している人でして」
「一人二人だけならまだしも複数人がか? 随分と人気なもんだな悪人に」
「えっ、いや……」
「悪人は悪を知っているというところか……。リンドウ、おすすめしないぞ。こういうのは下手に出たほうが乗ってくれやすいと踏んでるやつだ」
私がそういうも、焦った顔はしているが怒った顔はしていない。
その焦りがもうすでに答えなんだけれどな。
「PKを寄せ集めたならず者集団ってとこか。PKはグループに属しにくいからな。そういうのがばれたらいい印象を持たれない。そういう奴らを囲ってるんだろうな」
「……そのぉ」
「人数が多いのもPKとして活躍している奴らを片っ端から集めただけだろ? 人気ってわけじゃないし、なんならブラックリストにもう入ってるくらいやばいやつもいるギルドじゃんか。これたたいたらもっと埃出るぞ」
「その辺にしておいてください」
と、矢を放ってくる。矢は私の隣の壁に刺さった。
「黙りなさい。うちを侮辱するなんてことは許しませんよ」
「侮辱? してないけど。事実を述べたまでだしね。それともなに? PKとして有名な奴らの出入りが多数確認できているけれど自分たちはあくまで無関係だと?」
「ええ、彼らは私たちに依頼しに来ただけ。それだけですよ」
「そう? でもどちらにせよそういうPKが依頼するものってろくなもんじゃないでしょ。それに、今こうやって脅してきてるんだ。ろくなもんじゃないってのは確かだね」
私はゆっくりと立ち上がる。
「……あなた、名前は?」
「ハナコ」
「ハナコさん。覚えましたよ。あなたにいつしかそれ相応の報いを」
と、去っていった。
「偽名ってことに気づかねえんだ」
「……なんか今日迷惑な人ばかりに会いますね」
「まったく。さ、さっそく作ってくれよ」
「はい、わかりました」
と、作業に取り掛かったリンドウ。
その間に私は掲示板でアーガイルというグループについて尋ねることにした。




