ピッツァが食べたい! ①
宿の前に下ろしてもらったが、すでにミノルはログアウトしていた。
一足遅かったかなと思いながらも、私はしょうがないので王都を歩くことにした。今ログアウトして顔合わせても余計に泣かれそうだし、責められるのは目に見えてるからな……。
軽い気持ちのドッキリ、やっちゃいけない。
「何かで気分紛らわせるか……。やっぱ食、だよな」
私は掲示板を開く。
掲示板でお勧めの店を検索すると、お勧めするお店、しない店というスレッドがあり、私はそこをのぞき込むことにした。
攻略系の情報は割とガセも多い中、こういうのは基本口コミみたいなものなので割と信用はある。
「自店の宣伝する人もちらほらいるな……。やっぱ開始からもう一か月くらいは立ってるし店持ち始めるんだなぁ」
私はスレッドを遡っていく。
今の気分はピッツァ。ピザじゃないピッツァ。ピッツァを扱っている店はあるかなと思っているとプレイヤーの一人がピッツァ作りが趣味で現実でも店を構えているという人がいた。私でも知っている有名な店。ピッツァが美味いとニュースで報道されていたような店。
「行ってみるか。王都の大通りを抜けたところにあるらしいし」
地図も見せてくれていたので、私はそこに向かってみる。
すると、割と評判がいいのか、プレイヤーが並んでいた。私は一人で最後尾に並ぶ。久しぶりのピッツァだからな。心してかからねば。
そして、少し時間がたつと店が開き、続々と店の中にプレイヤーが入っていった。私も何とか入れ、テーブル席に一人で座ろうとすると。
「相席いいですか?」
「ん、いいです……リンドウか」
「はい。僕も評判を聞いて食べたくなりまして」
と、私の前に座るリンドウ。私はメニュー表を開き、即決。
「私は夏野菜のピッツァかな」
「あー、いいですね。そろそろ夏も本番ですし夏野菜は美味しいですよね!」
「そうそう。アスパラとかナスとかトマトとか。美味いぞ」
「僕もそれにしようかなぁ。でもシュリンプピザとかジャーマンピザとかも気になるんだよなぁ」
「なら三つ頼んで一緒に食べようよ。私も食べるし」
「いいんですか?」
「かまわないよ」
私はそういうと、店員さんにすいませんと声をかけ注文を言う。
ピッツァは美味しいから何枚でも行けそうだ。私はそう考えていると、また店内の扉が開かれる音がした。
今は満席状態なので座れないのだが。
「食いにきたんすけどぉ」
「申し訳ありません。ただいま席が埋まっておりまして」
「そんなの関係ないだろ俺らには」
うわ。
典型的な嫌な客だと思いながらも、私は無視して、ピッツァの妄想をしていると、その男がこちらに近づいてくる。
「おい、そこのガキども、退けよ」
「お客様!」
「席を作れば問題ねえだろ。てめえらどけ」
と、私たちに向かってそういってくる男。
私は無視。リンドウは少しあたふたしている。
「聞こえねえのがメスガキが!」
と、私の胸ぐらをつかんで脅してきた。
私はそのまま男を蹴ると、男はぎろりとにらむ。
「てめぇ!」
「接近戦そこまで得意じゃないけど……。しょうがない。影魔法でも使うか」
私は影に潜り込む。
そして、男の背後に回り込み狙撃。男は意表を突かれたのか、驚いた顔をして倒れこんだ。こういうのは有無を言わずキルしたほうがいい。
私は影魔法を解き、何事もなかったかのように席に座る。
「なんだ今の……」
「今、影から出てこなかった……?」
「あの翼……。もしかして心無き天使のシグレじゃね?」
「ちょっと待った、心無き天使ってなに?」
初耳なんだけど。
私は心無き天使って言った男の人に近づき問いかけると。
「いや、イベントの時多数のプレイヤーを無表情でキルしたって!」
「……あれか!」
あれはハルサメだよやったの! 私じゃないっての!
ピザじゃないですよ。ピッツァ




