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役目なしに下ろされたものはない

 そこからは凄惨の一言でしか表せなかった。

 今までの戦いはハルサメという女の子の戦い方のごくごく小さな力でしかなかった。だがしかし、今さっきの戦い方は違う。

 本物の軍人のような戦いだった。戦争に身を置いているかのような血も通っていない戦い。目で標的を捉え、攻撃にひるまず仕掛ける。


 十数人はいたであろうプレイヤーたちを一人で倒してしまった。


「…………」


 正直、私も少しビビっていた。いつもとは違うハルサメの雰囲気。鬼神のハルサメ。その一端を垣間見た。垣間見ただけでもこの恐怖。

 もしかして、ミノルのやつ、本気でやばいやつを仲間にしたのではないだろうか。


「終わったであります」

「あ、ああ……」


 ハルサメはいつもの笑顔に戻る。

 その笑顔が今は怖い。先ほどまでPKしていたとは思えないほどだ。


「これは……悪質なPKじゃないか?」

「それはないでありますよ。自分は襲われたから反撃したまでであります」

「それもそうか……」


 そうなったらこっちが困る。

 この鬼神のハルサメが味方なら大喜び……。前々から相手したくはないと思っていたが、少し訂正をしようかな。絶対に相手取りたくない。勝てるビジョンが思いつかない。

 この鬼の目で睨まれたなら動くことはできないだろう7……。一般女子高生……女子中学生?にそういう強さを求めるなよ。


「……さっきのハルサメ、めちゃくちゃ怖かった」

「……まぁ、軍人だったでありますからなぁ」

「人の死の業を背負うのはやっぱきついもんなの?」

「それはまぁ……。人は死んだら終わりでありますから」


 ……そうか。人は死んだら終わり、か。


「まぁ、シグレ殿は例外であるようでありますが」

「そうだな」


 私は死んでなお生きている。

 私ってなんなんだろうな。ここまでして生きる意味なんて本当はない。ただただミノルに付き合っているだけだ。いずれはきっと別れがくる。私が死ぬのはいつだろうか。ミノルが死ぬのが先か、私が死ぬのが先か……。


「シグレ殿。何か考えておられるのでありますか?」

「いや……」

「自分、なんとなくシグレ殿の考えが読めるのであります。ここには自分しかおりません。本音を話してくれてもよいのでありますよ」

「……そうか。じゃ、少し弱音吐くわ」


 私は少し弱音を吐いた。


「そうでありますな。たしかにシグレ殿の生きる意味というのは考えさせられる議題であります」

「……そうだよな」

「ですが、それは今結論を出さなくてもよいというものでもあります。人の生きる意味は後付けでよいのでありますよ。美味しいものを食べるためだったとか、友だちを助けるためだったとか。理由を無理して求める必要はありません。自分も生きる意味なんてまだ見つかっておりませんが、そういう気持ちを大事にしろと上官から言われております」

「…………」

「人は役目なしに生まれはしません。シグレ殿が生かされた意味も必ず見つかるでありますよ」


 ハルサメの言葉に、少し気持ちが晴れた気がした。


「……そうか。わかった。ありがとな」

「いえ。それより、どうするのでありますか?」

「脱出口探し続行」

「了解であります」









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