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レベル上げをしよう

 私の目の前には制服姿のミノルがいる。

 ミノルは少し困り顔をしていた。


「ねぇ、シグレ……。シグレはうちと学校行きたい……?」

「どしたん?」

「いや、ゲームやりたいんじゃないかなって思って」


 ああ、なるほど。私がゲームやりたいと思ってるかもしれないのに、連れて行っていいのか、ということか。

 いや、拒否権は私にはないだろ。だって抵抗出来ないんだから。


「どっちでもいいよ。ミノルが連れて行きたいなら連れて行ってもいいし、ゲームやらせたいなら置いてってもいいし」

「うちはシグレの気持ちを聞いてんの」

「いや、どっちでもいいんだって。どっちも楽しいし」

「うーん……」


 ミノルは少し悩んで。


「じゃあゲームやってて。やっぱ学校に連れてっても数時間暇でしょ?」

「おけ。わかったよ」

「ヘッドギアに繋いでおくね」


 そういってスマホとヘッドギアを繋げる。白い空間にピンクの扉が現れた。


「じゃ、いってきま!」

「いってらー」


 バタンと扉が閉じる。

 ミノルも変なとこで気遣うんだから。ま、やっていいのならやるけどね。

 私は扉を開ける。服が勝手に変わり、初期装備のまま噴水広場の前に放り出される。


「さて、じゃ、レベル上げと金策を同時にやってくるとしようかな」


 ミノルがせっかくやってていいと言ったので、レベル上げてミノルのサポートを出来る様にしよう。

 私は魔物が出る平原に向かおうとすると。


「そこの道行くお嬢さん。グループに興味ない?」

「ん? 私?」

「そうですそうです」


 なんだかかっこいい見た目とは言えない男性が声をかけてきた。

 グループってたしかプレイヤー同士のチームのようなものだっけ? 依頼などを自分の拠点でも受けれるようになる、とか、毎月運営からグループ金というお金をもらえるとか。ただ、グループは最低でも五人必要で、五人を下回ったときは強制的に解散、そしてある程度依頼を達成してないとダメだというもの。


 規模によって依頼解決しなくてはならない数が違うらしい。


「僕たち、グループメンバーを探してまして。お嬢さんのような綺麗な女性が入ってくれると嬉しいです」

「へぇ。もしかして現実で出会いたいって目的もある?」

「そ、そんなことないですよ?」

「そうそう。入ってくれたりしねー?」

「私そういうの興味ないんで。他当たってください」


 私が行こうとすると。


「まあまあ」


 と、肩を掴まれ引き止められる。


「そういうのウザイんだけど。それだから現実でモテないんじゃないの? 外見汚ねーんだから内面磨けよ。内面まで汚ねーぞお前ら」

「……っ!」

「それじゃ」

「馬鹿にしやがって……! 下手に出ていれば……!」


 私は行こうとすると剣を突きつけられた。


「何している」


 と、ものすごいオーラを放つ目つきの鋭い男が私たちの前に立ち塞がる。

 その気迫にびびったのか男たちは腰を抜かしている。


「ご、ごめんなさーい!」


 と逃げ帰った。


「災難だったな」

「ありがとうございます。助かりました」

「いい。気にするな」

「そうそう。こいつ見た目だけは怖いからねー」

「うるさいぞ」


 と、もう一人男が現れた。


「あ、俺はマサで高校二年生でーす。多分同じくらいだよね?」

「俺は……シンゲンだ。俺も二年生……。俺らは訳あって引きこもってるんだよ」

「そーそー。暇だからゲームしてるんだけど……君も?」

「いや、私は現実の方では既に死んでまして」

「「……はい?」」


 私は自分のことを話す。


「つまり電脳世界に住んでる君が友達に誘われて始めたと……」

「できるんだな」

「それにしてもここでその被害者に会うとはねー……。あれは嫌な事件だったよ」

「そうだな。あれのせいでVRゲーム全般禁止になるところだったしな」


 VRを危険視している人たちも少なくはないからね。


「でも今君が使ってるアプリがあれば蘇生できるようになったからねー。それでなんとか禁止は免れたけど」

「それでもだな」

「うんうん。あの事件はもう起こってほしくないね」


 たしかに。

 私たちはついつい話し込んでいた。


「あっ、そういえば君何か用があるんじゃないの?」

「用って言ってもレベル上げだけなんですけど」

「そうなの? じゃあ俺らと目的同じ?」

「レベル上げを?」

「そ。ゲームでまずすることはレベル上げじゃん!」


 まあ、たしかに。


「ならパーティ組んで一緒にやります?」

「いいのかい? やったぁー! 女の子とゲームだぁ!」

「うざ……」

「ごめんな。こいつこんな軽い性格だから」

「いいよ。それより、紹介遅れたけど私はシグレね。よろしく」

「ああ。よろしくな。シグ……レ」


 なんで詰まったんだ?

 まあいいか。せっかく道連れ仲間ができたんだしレベル上げにさっさと行こう。

 街の外に出て、少し歩くと魔物に遭遇した。私は弓矢を構える。シンゲンは斧を、マサはハンマーを手にしている。


「狙撃」


 私は狙いを定めて矢を放つ。

 矢は獲物の腹部に当たる。一発では死ななかったようでこちら目掛けて突進してきた。

 それをシンゲンが受け止め、上からマサがハンマーを振り下ろす。


「お前……よく当てられるな」

「そう? これくらい普通っしょ」


 レベル上げはまだ始まったばかりだ。







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