どうやって逃げるか?
私たちがやることは主に二つで、一つは脱出口を見つけること。そしてもう一つは。この鍵を守り抜くこと。
この鍵、厄介なことにイベントリにしまえないものらしく、常に持ち歩く形式になる。当然鍵を持っているとみんなに知られるようだった。
「そんな一筋縄じゃいかないか!」
「当たり前でありますな……。少し出歩けばプレイヤーたちと出くわしてしまいますな」
私とハルサメは物陰に隠れ、歩いているプレイヤーをやり過ごす。戦ってもいいが、無駄に消耗はしたくない。
ハルサメもそれには賛成の意を示してくれた。
「ハルサメの場合戦って切り開くもんだと思ってたけど」
「それはあくまでそれしか方法がない場合だけであります。戦いはないに越したことはないのでありますよ」
「そうか」
「自分、隠密行動の心得も多少はありますので、任せてもらうのであります」
「……気配消すのは得意なほう?」
「……頑張ってみるであります」
ハルサメがそういう。つまり気配を消すのは得意じゃないと。そりゃそうか。一個の小隊を単独で潰すようなやつ、マークしていなければおかしい。
「だがしかし、予想外にここはプレイヤーが多く行きかうでありますな。動く暇がありませぬ」
どうにかしてここを突破したいものだが。
いや、私一人だったらどうとでもなるんだよ。影魔法があるから。でも、ハルサメを連れてとなると話が変わる。
すると、ハルサメが背後の気配を感じ取ったのか、静かにしろという合図を出す。後ろの廊下からカツカツと誰かが音を立てて歩いてくる。
目の前を歩いていたプレイヤーたちもその足音に気づいた。一気に静まり返る。
すると、奥から歩いてきた人物が姿を現した。その瞬間、その男は襲い掛かってくる。私は影魔法を使い、ハルサメはナイフで攻撃を受け止めた。
思いっきりの不意打ち。油断していた。
「しょうがない、シグレ殿、やるしかないようであります」
「そうだ、な!」
私たちの周りにはプレイヤーばかりが。
私の持っている鍵に視線が注がれている。
「氷雨」
私はスキル氷雨を使用。私の周りにこぶし大の大きさの氷が無数に飛び回る。氷は周囲を攻撃していた。
もちろんハルサメが戦っていた男にもあたる。
「ぐっ……!」
「隙ありです」
「ふん!」
と、男はハルサメのナイフを防ぐ。ハルサメは呆気に取られていた。
「あなた、少し戦いの経験があるのでありますな」
「……まぁな」
「ですが、自分には及ばないようでありますな!」
ハルサメは隠し持っていたナイフで首元を突き刺す。
「さて、この数は自分も本気を出して取り掛からないとまずいでありますな」
そういった彼女の目は赤く光っていた。




