表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/326

少しずつ妹はおかしくなってしまった

 注文した品が届き、弥勒さんたちは世間話をしていた。私は暗くなった部屋で一人寂しく目を閉じる。

 

「静かだね……シグレくん」

「そりゃ自分から喋るタイプではないですから……」

「えー!? そんなことないよー!?」


 最近思うのだが、ミノルより真田さんの方が私のことをよく知っていると思う。


「どこを見て言っとるんや……?」

「こいつの発言大体バカなんで」

「ほら、自分から喋った!」

「これツッコミというんやないか……?」


 私は好き好んで話すタイプじゃないし、なんなら話すのは少し嫌いな方だし。

 ミノルはまあ、分かる通り騒がしいので本来は苦手なタイプ。何で見抜けなかったんだろ。


「……シグレちゃん。ホントごめんな」

「何に対しての謝罪なのかわかりません」

「君のこと……。君を死なせてしまったのは俺や君の家族全員に非がある」

「もういいですって」

「……すまない」

「もう……」


 ごめんなさいと言ってくるのはただただウザい。


「弥勒。もういいだろう」

「…………」

「そこまで謝ってもシグレさんには逆効果だ」

「そう、だな……」

「あ、パンケーキお代わりくださーーい」

「お前ホント遠慮ないな」


 お前人の金で焼肉食べたいタイプ?

 すると、個室の扉がガラッと開かれた。そこには妹たちがいた。

 なぜここがわかったのか。スマホをつけろといい、弥勒さんの方を見ると目を逸らしていた。


「シグレ!」

「…………」

「お姉ちゃん……」

「…………」


 うるさい。

 近くで喋んな。耳痛い。


「ごめんなさい……」

「もういいよ……」


 私はそういうけれど三人の謝罪は治らない。謝っても私の体が元に戻るわけじゃない。

 謝ったところで、という話なのだ。結局謝罪というのは自分の罪の意識を軽くしたいだけ。罪悪感なんて一丁前に持ってるからそういうことをしたいだけ。

 だからもう謝ることはしてほしくない。


「もう謝んなくていいよ。ウザいし……」

「実の母親にそういうこと言うのはどうかと思うが……」

「それに近くで喋られると物理的にうっさい」

「ご、ごめんなさい……」

「もういいよ……。とりあえずスマホをミノルに返してあげて」

「わ、わかったわ。ごめんなさいね、ミノルさん」


 そういってスマホがミノルの手に渡る。


「お姉ちゃん……」

「……何?」

「……大好き」

「……?」


 なんかゾワッとした。

 目つきを見ると少し危ない。


「……なあ、母さん。翠雨(すいう)ってこんな怖かったか?」

「…………」

「おい、なんとかいえよ」

「……その。あなたと翠雨を切り離した影響かは知らないのだけれど」

「うん」

「翠雨が少しおかしくなって」

「……うん」

「あなたの顔写真を部屋中に貼りまくって、抱き枕まで作って……」

「…………」

「毎夜お姉ちゃあん……といいながら……その」

「もうわかった。やめてくれ」


 それ以上は聞いてはいけない気がする。

 気づかなかったが……。気づきたくなかったが。


「翠雨って、もしかして私のこと好き……?」

「うん……! 大好き……! 電脳アバターになったのはちょうどよかった……! 私のスマホに、はいろ?」

「やべえ! まじ怖え! 絶対やだよ! お前実の姉にライクの感情じゃなくてラブの感情もってんだろ! 怖えよ!」

「嘘やろ……」

「よかったじゃないか。愛してくれる人がいて」

「ミコトてめえ覚えてろ! こんなん何が愛だよ! 狂ってるだろうが普通に!」

「好きなものに嘘をつくことは悪いことだろう?」

「そうですね」

「真田、お前もか」


 やばい、味方がいない。

 ジリジリと近寄ってくる翠雨。すると、ミノルが大声で「ダメーーーー!!!」と叫ぶ。


「シグレはうちと暮らしてるの! 実の妹でもダメだよ!!」

「……恋敵?」

「翠雨。やめなさい」

「なかなか強烈な子でありますな」

「とまあ、お前の親の方もこんな感じでお前を遠くにやってしまったからこういうことが起きた」

「天才っちゅうのは一癖二癖あるもんやけど……。うちらとはえげつないくらい個性的やな……」

「追放されていて良かったんじゃないか?」


 翠雨の目が怖い。

 なんだか目にハートマークが浮かんでいるようにも見える。


「もう連れて行ってよ! まじ怖えようちの妹! なんか知らないけど本当に怖えよ!」

「あのシグレさんが恐怖を覚えるなんて相当だね……」

「ほら、いくよ翠雨! あ、あとミノルさん」

「なんですかっ」

「また……シグレに会いに来てもいいかしら」

「……いいですよ!」

「よくない! 次は翠雨連れてくんなよ!」

「…………」

「わ、わかったわ」

「そんなぁ……!」


 翠雨はガーンというように落ち込んだ。

 母さんたちは出て行ってしまう。


「……我が妹ながらまじで怖かったぞ」

「すっごい強烈だったな」

「女の子って怖いね……」

「そうだな……。あれほどまで姉を狂愛している子なんてそうそういるもんじゃないぞ」


 いてたまるか。

 翠雨は私が家にいた頃は大人しかった。黙って私の後をついてくるような子どもだった。私と違って運動も勉強も何でも出来る子だった。

 翠雨はどこで狂ったのだろう。いや、私がいなくなったからだろうってのはわかるけど。


「……そういや家にいた時何度か下着無くなってたけどもしかして」

「……それ絶対盗られてるやつですよね」

「え、好きな子のパンツとるのって普通じゃないの?」


 ミノルがそういうと、一気にミノルの方に視線がいった。


「普通じゃねえよバカ!」

「ええーーー!?」


 どんな価値観だよ! お前も翠雨と同じ人種かよ! そらそうだわな! 私にいて欲しいから開発した天才だもんなお前!

 周り敵しかいねえじゃねえか!


「なんかもう疲れた……」

「あはは。災難だね」

「笑ってる場合じゃないぞミコト……」

「ん、あ、やばい。仕事までの時間がそこまでないな……。俺らは行くとするよ。ゲームで会えたらいいな」

「……はい」


 そう言い残して金を置いて行ってしまった。


「お待たせいたしましたー、パンケーキです」

「はーい!」


 もう疲れたのでパンケーキ見ても何も思わなくなってしまった。








真面目に描こうとしたはずなのにやばい人来ちゃった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今後一生大好きなお姉ちゃんを養おうと頑張りすぎちゃったのね... お姉ちゃんが何もしなくても大丈夫なようにお姉ちゃんの出来ることは全部それ以上に出来るように... 自分の才能も努力も人生も、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ