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王族の血

 私も疑問には思っていた。

 孤児にしてはあまりにも綺麗な顔立ちだった。だから貴族の落とし子なんじゃないかという疑念はあったがそれ以上だったとは。


「ぼ、僕がですか?」

「ええ」

「つまり、お前は第三王子ということだ」


 王族の落とし子……。よくも見つからなかったものだ。

 

「そ、そう急に言われても頭が追い付かないんですけど……」

「当たり前ですね。突然あなたは王子だといわれて理解できるのはごく少数です。天使様のようなすぐ理解できるほうがまれなのです」


 と、急に私に振られた。


「いや、顔立ちがきれいだったから貴族の落とし子だと踏んではいたので……」

「なるほど。あなたは賢い人のようですね」


 なんかむかっとする言い方だな。

 そう思っているとルグレスさんが補足。


「こいつはムカッとする言い方しかできない奴なのである」

「うるさい」

「他意はないし悪意もないから気にすることないのである」

「黙れ少し」


 なるほど。そういう言い方しかできない人か。


「こほん。まあとにかく理解できなくて当然です。それで、あなたの今後のことなのですが」

「ちょ、ちょっとまってください。こ、今後って?」

「王族として暮らすことになる以上、王族としてのふるまいを教えなくてはならないのです」

「ま、待ってください。なら僕の冒険者とかはどうなるんですか?」

「やめていただくことになるでしょう」


 だろうな。

 王族ということが判明した以上、冒険者なんてことは絶対させない。血というのは厄介なものがあるし、王族となれば期待も、利用もされることだろう。

 そして、期待外れだった時、プライドは絶望することになる。周りの目が一気に痛くなる。


「……し、シグレさぁん」


 と、助けを求めてくるけれど、私は……。


「まだ男爵とかそういう貴族の子どもだったらまだ可能性はあったかもしれないけど……。王族という血が流れている以上私にできることはない……」

「その通りです。王族の血が通っている以上、このまま放っておくことはできません。ここで話せるのはこれまでとなります。王や、ほかの王子たちの面会がこの後に予定されておりますので」

「え、待って……僕は……」

「わがまま言えるようなことではないのであります……。不運であると思いますが受け入れるしかありませぬ……」

「天使殿もありがとうございました」


 そういって、部屋を後にする。私は帰られますかと尋ねられたので、帰ることにした。

 見殺しにするようで少し心が痛い。だがしかし、私には助けられない。私だって……そうだったのだから。

 私も……。期待に応えられる力があればよかったのに。


 いや、考えたってもう遅い。終わったことだ。


《クエスト:やつれた孤児 をクリアしました》


 無慈悲なアナウンスが私に現実を突きつける。

 クリアになってほしくなかった。それは私に対する攻撃でもある。


「はぁ……」


 私は溜息をついてログアウトしたのだった。







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