驀進する暴行
あの突然現れたオオカミはなんだったのだろう。
私たちは王都へ戻り、そのまま宿をとることにした。グライドもリンドウも昼食の時間だといって抜け出したので、私も一人王都で何か食べようと思う。
なので、私は一人で王都に店を構えている食堂に入ることにした。
ちりんちりんと鈴の音が鳴る。
「いらっしゃいませー! お好きな席へどうぞ!」
というので、私はカウンター席に座る。
メニュー表があり、定食や麺類などの様々なものがあった。私の今の気分は肉。肉が無性に食べたい。が、もちろんここはゲームの中だし世界観的な面もあるのか、全然どんなメニューか想像できないものばかりもある。
だが、わかるようなものもあった。
「はんばあぐだな。これはハンバーグだろう」
ひらがなではんばあぐと書かれたものをみる。
ひき肉をこねて焼いたもの。それがハンバーグ。ハンバーグは子供から大人まで好きな食べ物さ……。
私は店員さんにはんばあぐを注文し、ドキドキワクワクしながら待っていた。
ハンバーグといえばあふれる肉汁。じゅわっと肉から漏れ出た汁が……。想像しただけで少し腹が減ってきた気がする。
そして、数分後にははんばあぐがやってきた。
「おっほぉ! これだよこれ! スクショ撮ろ」
運ばれてきたのはでかい肉の塊。
ナイフとフォークも用意されており、私はナイフでハンバーグを切ってみる。中の肉汁がどばっと溢れ出てきていた。
いただきますと手を合わせ、一口。
「くぅ! 肉の脂、肉汁が超美味え! 久しぶりに食べた!」
肉のうまみが私を殴りつけてくる。私はこの快楽に負けそうだ。だが気をしっかり持て私。ここで負けたらだめだ。まだたくさんあるのだ。
私は今度は横に置かれていたソースをかける。デミグラスではなく、たまねぎをベースとした感じのものらしい。たまねぎのみじん切りが入っている。
私はそのソースをハンバーグにかけてみる。そして、ナイフで切り一口。
また違った味を見せる。たまねぎのおいしさが肉のおいしさを高めている……。
「くううう! やっぱりハンバーグはうまいぃー!」
私はついてきた白飯を一気にかっこむ。肉の味が口の中にあるうちに。
ハンバーグはご飯のお供になりえるかということにはこう答える。なりえる、と。ハンバーグという存在はすごい。メインにもなるしご飯にも合う。
「ごちそうさまでした!」
私は一気に平らげてしまった。
惜しむのはこのソース。肉汁とオニオンソースが混じったもの。これは絶対美味しいはずなのに。パンを浸して食べたかったのに。
くぅ。大人というのは世間体もあるからな……。
「さて、この余韻に浸りながら狩りにでも……」
と、後ろを向くと。
「すごい食べっぷりだったねシグレさん」
と、ミコトたちがいたのだった。
「……いつから見てた?」
「最初から」
「……」
「無理はないと思いますけど……」
「そうだね! シグレって何か食べることってそれほどないから感動的だもんね!」
なんていうか、恥ずかしい。一人で食べているところを見られるのは。
「……味なんて感じるのはほんとにないんだよ。だから結構うれしいんだ。恥ずかしいからみんな」
一人で興奮していたのが少し恥ずかしいじゃないか。




