廃れた城に住む子供の魔女
深い森の城という場所にやってきた。
昼間だというのに、ここは木々が日光を邪魔し薄暗い。城はすでに廃れており、、誰も人がいない状態となっていた。
「来てみるとほんっとうに不気味だな」
「そうだね」
私たちはそう話していると、突然、城の窓から何かが飛び出してくる。それはアンデッドなんかではなく、普通の子供のようだった。
子供は私たちを見て悲鳴を上げた。
「落ち着け。俺らはアンデッドじゃない……。どうしたんだ?」
「ぼ、ぼぼ、僕たちはその……ここで肝試しをしてたんですぅ! そしたらなんか魔女さんに出会って! 怖くて逃げだしちゃったんですけどっ……!」
「僕たち? 君一人しかでてきてないよね?」
ということは……。
「取り残されてるのか」
「ご、ごご、ごめんなさい! その、僕はもう中に入るの嫌です! なのでみんなを助けてください!」
そう頼まれてしまった。
頼まれてしまった以上私たちは入るしかないんだけど……。
「とりあえず僕はここでこの子を見てるよ。グライドとシグレで中に行ってもらえる?」
「わかった。何人取り残されてるんだ?」
「さ、三人……です」
「わかった」
私たちは目の前にある扉を開けて中に入っていく。扉はひとりでに締まり、開かなくなっていた。なるほど、閉じ込められる系か。
私たちは先へ進んでいく。
「さっきの子供、グライドはどう思う?」
「どう思うって?」
「ゲームだとさ、あの子が実はアンデッドでした、っていう流れあるじゃん」
「あー」
よくあることだ。
その子は実はアンデッドで人をだまして……というのは。
「いや、あれは間違いなく人間だよ。俺あれから鑑定スキルを手に入れてさ。一応は鑑定しておいた」
「そうなんだ」
「だから人間で間違いない」
ならよかった。
私たちは薄暗い城の廊下を歩く。子供たちの声をも聞こえないとなると、どこかに息をひそめて隠れているのだろう。
カツン、カツンと私たちが歩く音だけが廊下に響き渡る。すると。
「グアアアア!」
「うおっ! ゾンビ!」
腐敗した人間の動く死体……ゾンビが二体くらい私たちの目の前に現れた。
私は光陰の矢を使う。光の弓矢で敵を射抜く。ゾンビたちには効果抜群であり、そのまま倒れ伏し消えていったのだった。
光魔法はアンデッド系には効果抜群だからな。
「よし」
「前々から思うんだが、お前弓矢の扱い上手だな」
「だろ?」
前作で結構練習したからね。
だがしかし、この城……。
「なんか人の気配感じるな……」
「近くに子供たちがいるかもしれないな」
「それもあるけど……。なんかそれじゃない感じもする」
私は割と人の気配とかには敏感なほうだった。視線なんて向けられたら割と気づくほうだった。
「何かに見られてる」
「見られてる?」
「どこから見てるかはわからないけど……」
だから、誰かに見られてることは比較的感じやすい。
視線を感じる。城に入ったときから誰かに見られているのかもしれない。となると、この城にはなにかがいる。強大な敵が。
「なぁ、ちょっと私が感じる人の気配だけを頼りに歩いていい?」
「かまわんが」
「おっけー。じゃ、こっち」
私は人の気配がするほうに歩きだす。
すると、何やら厳かな扉があった。古びた扉なんかではなく、ここだけ真新しいような厳かな扉。この奥に何かがいる。
私は躊躇なく扉を開けてみた。
「おわっ! 急にレディの部屋の扉を開けないでよ。まだ準備できてない」
と、なにやら子供たちと遊んでいる女性が。
「……誰?」
「こほん」
と、その女性は置いてある玉座のほうに向かい座る。
「我は偉大なる魔女エミィである」
「ま、魔女?」
「そなたらよ。なぜ私の城に入ってきた」
と、威厳あるよう見せてるが。
「さっき笑顔で子供たちと遊んでいたから怖くもなんともないけど」
「……それは言わないお約束! こういうのって怖く見せるもんじゃん!」
女の子の魔女がそう言ってきた。
「もう! ノックくらいしてよね! ここ人んちだよ! 勝手に入ってくるわでこっちとしてはいい迷惑だしね!」
「それは悪かったよ。でもその子の仲間が怖くて逃げだしてきてさ。仲間を助けてってね」
「あ、じゃあ帰さないとね。せっかくできたお友達なのに……」
「また遊びに来るよ!」
「ほんとぉ?」
魔女は嬉しそうに子どもたちを見る。
「じゃ、また来てね! バイバイ!」
そういって何か魔法を唱えると、子供たちの姿が一瞬で消えた。
「さて、と。あとはあなたたちなんだけど……」
と。魔女っ子エミィは私たちを見る。
エミィは子供らしく笑う。
「あなたたち、強そう! 私の配下にしてあげる!」
「配下?」
「そう! 私の遊び相手となるの! 私もね、戦うんだよ。でも一人じゃ無理があるからね! ともに戦う勇者の仲間が欲しいの! だから手伝ってあげる! 困ったら私のところに来なさい! 勇者は仲間を助けるものなのよ!」
「あ、ああ」
「私も困ったら尋ねるから!」
そう笑顔で言うエミィ。
とりあえず、害はない、のかな?




