馬車vsミノル
ランダムスキルの書で潜水スキルを手にしたミノルの落ち込み具合が半端ない。
さすがに二回連続で普通のスキルを手に入れたことが相当堪えたのかやる気があからさまに下がっているようだった。
「まぁまぁミノルっ、どこか行こうぜ?」
「海の中に飛び込んで死んでやるぅーーー!」
「いや、あんた潜水スキル持ってるから死ねないだろ」
ボケか?
ミノルはとぼとぼと私についてきた。ミノルのやる気を上げるために何したらいいんだろうな……。さすがに私が運が良すぎるだけなんだけど。
というか、ミノルとしてはぽんぽこに無重力魔法というのが与えられたことが何よりつらいはず。狙っていたしね……。そもそもぽんぽこは飛べる。
「うちの人生は終わりなんだ……」
「いや、大げさでしょ」
「うちはまさしく不幸体質! ソシャゲのガチャでノーマルしか出ない!」
「いや……うん」
ミノルは確かにそうだ。SR確定とかそういうのでない限り基本ノーマルしか出ない。ガチャシステムに嫌われている女子高生なんだよな。
そう考えるとガチャシステムであるランダムスキルの書でそういうスキルしか出ないということはもうこれは運命なんだろうな。
「まぁ、私と歩いていれば何かいいことあるって」
「そういう確証はないくせにぃ……」
「私は今運が絶好調だからなんかあるよ」
私の運は今のところとどまることを知らない。
だから……。
「に、逃げろ! 暴走した馬車がこちらに向かってきている!」
と、目の前から暴走している馬車が向かってきていた。私たちは思わず引き返し、走る。
「ついてないじゃん! これのどこがいいことなのさ!」
「あれ……」
まさか私の幸運がミノルの不運に飲まれた?
それほどまでにミノルが幸運に恵まれないということなのだろうか。
「とりあえずミノル、止めるしかないかもしれないよ」
「受けてみるけど!」
ミノルは馬車の前に大きく立ちふさがる。
そして、ミノルは正面衝突。ふぬぬと力を込めて立ちふさがっていた。暴走していた馬はミノルにぶつかり、失速。そして、落ち着きを取り戻したのか、息が少し整い始めた。
すると馬車から誰かがおりてくる。
「だ、大丈夫であるか!」
「結構体力削られたし……。戦士職でよかったぁ」
「ケガはないようであるな。戦士殿、すまなかったである」
「いえいえ。でもどうしてこんなことになったの?」
「実は怪我している馬を間違えて連れてきてしまったのである」
なるほど。怪我で痛くて暴走していたということか。
「戦士殿、何かお礼がしたいのである」
「お、お礼?」
「吾輩はティターン王国騎士団総騎士団長のルベルス・アルテイナと申すものである」
「騎士!? うち騎士の職業になりたい!」
「わかったである。本来ならば王騎士の職業スキルなどを得るためには厳しい試験が必要なのであるが……。そなたは特例で認めるとするである」
「わーい」
ミノルは両手を上げて喜んでいた。
「そちらの方はどうするである?」
「いや、私は何もしてないし私は狩人だから騎士は合わないです」
「ふむ、そうか……」
「なのでミノルにだけあげてください。私は見てるだけでいいですから」
「わかったのである」
そういって、馬車に乗れといってきた。
大丈夫だろうか。先ほど暴走していた馬車だが。
「そうだ、御者が振り落とされていたのであったな……。吾輩が操ろう。怪我している故、少々遅くなるがよろしいか?」
「かまいませんよ」
そのルベルスさんが御者台のほうに移動し、馬を操り始めたのだった。
「どこいくんだろーね!」
「テンションすっかり戻ったな」
ミノルも元気を取り戻したようだった。




