悪質なPK
現在の所持金は150万ブロン。
私はその足でスキル販売店へ足を運ぶ。ミノルにプレゼントするためのランダムスキルの書を買うためにやってきた。
私の分も欲しいが、350万ブロンはすぐに用意できないということなので仕方がない。
スキル販売店でランダムスキルの書を手に取る。
「さて、と」
私はそれを購入し、拠点のほうへと向かった。
これを見たらミノルは驚くだろうなぁ。これ欲しがってたもんなぁ。喜ぶ顔を思い浮かべると少しに奴いてしまうのは私だけだろうか。
ふふっ。
「おーい、ミノ……」
私が拠点に来て見た光景は。ミノルが少し暗い顔をしていた。
落ち込んでいるのだろうか?
「……どうした?」
「あー、その。ミノルさんが悪質なPKとであったらしくて……」
「悪質?」
「暴言吐かれて……そして心折られるまでいたぶられたとか……」
「ふぅん」
なんだそいつ。ムカつくな。
「ミノル、そいつの名前は?」
「……アガサとグリィドという名前だった」
アガサとグリィド。記憶した。
「ハルサメ。手を貸せ」
「なにをするつもりでありますか?」
「そりゃもちろんぶち殺すんだよ」
「わかりました。とりあえずその二人のPKとやらを探すでありますか」
アガサとグリィド。
私が徹底的につぶしてやる。ミノルをこけにするようなことしやがって。プレイヤーキルするのはまだいい。それも一応は認められたプレイだ。ただ、あまりにも悪質だとBANされるということもあるが。
だがしかし、今回のは悪質も悪質。ミノルをここまでこけにして殺すというのはムカつく。
私はハルサメを連れて街までやってくる。
途中でぽんぽこからメッセージが届いた。
『人相は一人は銀髪の好青年のような見た目でもう片方は青い髪のフツメンだそうです。始まりの街で殺されたらしいですから始まりの街にまだいるかと……。私も少し掲示板などを見て調べてみたのですが、ブラックリストに載ってるほど悪質、初心者を主にメインとして狩っている、とか。初期スポーン地点の噴水前が一番可能性があるかと』
という有益な情報が手に入った。
さすがはぽんぽこだ。調べものについてはぽんぽこに任せるのが速そうだな。まぁ、今はそれじゃない。
私たちは噴水広場の前に行くと、その人相にそっくりな男たちが初心者に絡んでいるようだった。瀕死寸前までダメージを負わせ、逃げ道を片方がふさぎ、攻撃しようとしても紙一重で躱し煽っている。自棄になる初心者プレイヤー。だがしかし、嘲笑うかのように男たちは笑いながら殺す。
まさしくあいつだな。
「ハルサメ、とりあえず殺さない程度には再起不能にできるか」
「やってみるであります」
ハルサメはナイフを構え男たちの背後から不意打ち。
男たちは仰天し、剣を構えることで精いっぱいだった。
「なんだてめえら!」
「…………」
「なにしやがる!」
ハルサメは無言でナイフを振り下ろす。男はそれを受け止めることで必死だったが、片割れが剣を振り下ろそうとしていたので私は弓矢で援護。
男の持っていた剣が弾き飛ばされる。
「こんの……!」
「おじさんたち超弱いじゃん」
ハルサメ一人でも完封できそうだった。
ハルサメのナイフはどんどん男の片方に突き刺さっていく。何とか引きはがそうとする片割れだが、ハルサメがもう一本のナイフを投げてあっけなく殺された。
「ぐぎぎぎ……! なんだよてめえら! 俺に何のうらみがあるってんだ!」
「恨みを買うようなことしかしてないくせに」
「PKだって認められたプレイだろ! 俺ら以外だってやってる! それだってのになんで俺らだけを!」
「そりゃ身内が狙われたら怒るのは当たり前じゃん」
私は男に近づいた。
しゃがみ、必死にもがく男の顔を眺める。
「あーあー、その間抜け面、よく似合うよ。所詮は負け組だもんね。こんなことでしか楽しめない人生の負け組。あっはっは!」
「このや……ろう……」
「煽りすぎではありませんか?」
「そりゃそっちだって煽ってきたんだからお相子でしょ。それよりどう? こんな年端もいかない小娘に殺される気持ち。屈辱的じゃない?」
「てめえ覚えてろゴラァ!」
「忘れてなかったらね。いいよ、殺しても」
「了解したであります」
ハルサメは、ナイフをそのまま力任せに押していた。喉元に刺さっていくナイフ。体力が尽きたのか男は消えていったのだった。




