馬鹿がいる
嬉しすぎて剣をブンブン振り回す彼女。子供かよと言いたくはなるけど、それだけ嬉しいってことだから悪い気はしない……けどやっぱ周りから見るとすげー恥ずい。
見た目は女子高生だけど中身がねー。女子中学生なんよ。
「あ、敵きたよ! 援護頼むね!」
「はいはい」
私は矢を引いて待機。
狙いを定めて……狙撃。私の狙撃した矢はスライムに突き刺さる。
ミノルは大きく剣を振りかぶって振り下ろす。それ叩き斬るって感じだけど。ミノル持ってるの片手剣……。
「スライムは雑魚だけど斬撃などに耐性もってるのは厄介だね」
「そうなの?」
「前のゲームがそうだったからそうじゃないかって思う」
「そうか! あったまいー!」
「よせ」
まあ、効かないというわけではないから何度も攻撃してりゃいつか死ぬ。
私は二の矢を構える。そして、放つ。スライムはミノルに飛びかかったおかげで外れた。
「おわっ!」
「させるか!」
私は矢を放つ。スライムに当たりスライムが飛ばされる。
「助かったよ!」
「戦闘中に油断するからだよ! ほら、来る!」
「うん、今度は油断しない!」
ミノルは勇者のごとき剣さばきでスライムを切り倒した。私たちに経験値が入り、私はレベルアップしたようだった。
レベルが2となる。ま、イノシシも倒してたしね。
「うーん、スライムは経験値的に美味しくないなぁ」
「そういうなよ。今の私たちにはこれが限界だって」
ミノルは少し不満そうな顔をしている。大したスキルもない私たちが大物を狩れるはずもない。現実的に考えて行動するのが吉。
だからここで雑魚敵を狩り続けたいんだけど……。
「よし、大物狙いにいこー!」
「馬鹿がいるんだよな……」
大物狙いしたい一発屋が目の前にいるんだよな。一人で行かせたらぶーぶー恨み言言われるし、大物狩るとしたら絶対死ぬし……。
「なにしてるのー? いこーよ!」
「……しょうがないなもう」
死ぬの覚悟でいくしかないか。
ただ、大物と言ってもどこにいるのか。ミノルは心当たりがあるようだが。
「何探してんの?」
「さっきの熊さん」
「ぶっ」
「あれ絶対大物だよ! 熊とバトルなんて昔話みたいじゃん? どすこいっ、てね」
「それ金太郎だから出来たんだよ……。もっと違うもの読め。熊の恐ろしさを身に記憶させろ……」
昔にはそういう事件があったんだから。
「ん? あれ熊さんじゃない?」
「……っぽいな」
あの茶色くてデカいのは熊だ。のそのそと森に戻っている。
ミノルは見つけたと言わんばかりに突撃。私は仕方ないので後に続く。
「おりゃあああああ!」
一撃。不意で一撃喰らわせる。だがしかし、熊はこちらに気づきこそしたけれど痛そうな素振りは見せない。
熊は立ち上がり威嚇してくる。
「こい!」
「馬鹿……!」
私は矢を放つ。
こうなりゃやるしかないか! 私も馬鹿の友達だからな! 私も馬鹿になるしかないな!
狙うは心臓。熊の額は拳銃の弾すら弾くと聞いたことがあるからね。
「狙撃!」
私の放った矢は左胸に突き刺さる。痛がる素振りは見せたが、死ぬ様子はない。
怒った熊はミノルを薙ぎ倒す。ミノルは死んだ。
「少しは躱せあのバカ……!」
「グルアアアアア!」
「あぶねえ!」
熊の手が私を捕らえようと振り下ろされる。
「少しは抗ってみせるか……」
「グルアアアアア!!」
熊は両手で引っ掻こうと大きく立ち上がり腕を振るう。私は立ち上がったタイミングで矢を放つ。
心臓に撃ち続けることが良さそうなんだよな。ダメージはあるっぽい。
「グルァ!」
「おっと」
ぶんっと豪快に振り回される前腕。
「狙撃!」
私の狙いは今のところ百発百中。なかなかの精度だ。
「グルァ!」
「また躱せば……おわっ」
思わず転んでしまう。
私の目の前に腕が伸びてくる。死んだかな……。私は矢を引き抜き、そのまま自分で熊の心臓を突き刺す。熊の爪が私を切り裂き、だがしかし。熊も倒れる。
相討ち。
結果は相討ちとなったのだった。