オリエンテーション、終わり
私は怒鳴り声で起こされた。
目を開けるとミノルたちが正座している様子が見える。
なぜ怒られているのか。それは単純で。
「なぜ自分の部屋で寝ないんですか! ミコトさん、春雨さん!」
「申し訳ない……」
「ミノルさんもなぜ止めないのです!」
「ご、ごめんなさい」
「真田さんも……」
「私は……気づいたらいたというか……。風呂上がってきてすぐ寝ましたので……」
「あら、そうなの?」
真田さんは真実を述べる。ミノルは怒られなくてずるいというが。
「ミノルが悪いだろ……。真田さんはズルくないっての……」
「あ、シグレおはよー!」
「おはよーじゃありません!」
「おはようじゃないっての」
起こされた。
クソ……。まだちょい眠いのに。
「ったく、ルールは守れよあんたら。集団行動だぞ。少なくとも軍隊にいた春雨は分かるだろ」
「その通りであります。自分というものが……」
「一人の勝手な行動が団体の輪を乱すんだよ。反省しろミノル」
「ふぇーい……」
「夜桜さん。叱ってくれてありがとう。あなた随分と大人ね……」
「そうでもないですよ。ただルール守らないのはそこまで好きじゃないってだけで」
「それでもすごいわ」
そう言われたら悪い気はしない。
「夜桜さんが言う通りよ。学校はあくまで集団行動なの。一人の勝手な行動で崩れる事もあるの。ね?」
「気をつけるであります」
「僕も気をつけるよ。僕としたことが寝落ちするとは情けないね」
「気をつけます……」
「よろしい。じゃあ朝食を食べてきなさい」
そういうと、ミノルはスマホを持ち食堂へと向かう。私はもうひと眠りすることにしよう。
「じゃ、おやすみ……」
「シグレ二度寝ずるーい!」
「スマホの中だからな。起こすなよ」
私は横になり目を瞑る。
自分で移動することも出来ないし、何かすることもないので余裕を持って二度寝ができる。ミノルが起こさなければ。
私は夢の世界へ旅立った。
起きると、バスの中だった。
ただいまの時刻は午後3時。寝過ぎたな。7時からだから……7時間くらい寝たということか。わーお健康的。
「おはようさん」
「起きるの遅いよーー! 授業終わったじゃん!」
「あはは。ゆったりと寝れるってのはいいね。それにしても起こさなかったんだ。12時とかだったら起こしても良かったのに」
「だってぇ……。無理に起こしたらシグレ不機嫌になるじゃん……。今朝だって……」
「今朝は怒鳴り声で起こされたからだよ。誰だって怒鳴り声で起きたくないだろ?」
それに、いつもお前の目覚ましで私起きてるからな。それぐらいは慣れた。
「んで、もう合宿終わり?」
「はは、そうさ。実に有意義だったね」
「そうですね。体験学習とかは面白かったです」
「体験学習? ああ、今日やることだっけ」
「はい。紙を作ってみようということで。出来たのは後日学校に届くということです」
「へぇ」
「うちも頑張りました!」
「ミノルさん、めっちゃ綺麗な紙作ったんですよ」
「へへへ。モノづくりは昔から得意だからね!」
こいつ手先は器用なんだよな。元々感性で生きてるから芸術方面には本当に強いし、なんならモノづくりだって基本感覚でやってるよこいつ。
「シグレが生きてたらシグレに絵を描いてもらうんだけどなー」
「あはは。残念」
「シグレさん絵が描けるんですか?」
「まあね。一応独学で絵画の技法とかは習得した」
やることがなかったからね昔から。私は絵だけは昔から得意だったんだよ。
「いつも私は暇だからね……」
昔から、ずっと。




