夜はまだこれからです
寝る前。補習が終わり風呂入ってきたミノルは眠たいのかウトウトしている。
はしゃいでたもんな。
「ミノル、ヘッドギアのコードあるか?」
「んー、ポケットにあるぅ……」
「繋げておいてくれ」
「うんー」
寝ぼけ眼でスマホとヘッドギアを繋げた。私はゲームの世界に飛び出す。
背中に羽が生え、ゲームの世界に飛び出した。
私は宿でログアウトしていた。現実も夜なのでゲームの時間も夜。
夜はまだ終わらない。本番はこれからだ。私は今日の夜はぶっ続けでゲームをやろう。
「とりあえず、レベル上げでも〜」
そう思い宿から出ると誰かとぶつかってしまった。
「あ、すんません」
「いえ……。って、天使様……? もしかしてあなたが噂の……」
「噂?」
「掲示板で街中で天使になった女がいるって……」
あー。そりゃ話題になるか。目立ちすぎたもんな。
「あ、あの、僕はリンドウといいます! そ、その、よければフレンドになって……」
「フレンド? そこまで親しいわけじゃないけど……」
「ぼ、僕はか、鍛治師です! 武器とか……作れます!」
「鍛治師?」
鍛治師か。鍛治師の知り合いがいてもいいかもしれないな。この煌雨の弓を完成させるにはプレイヤーが必要だと思うし、こういうコネがあった方が色々と動きやすいか。
それにしてもリンドウ、ねぇ。
「どっかで聞いたんだよなぁ〜」
「聞いた?」
「いや、君の名前さ」
「えっと、前作のユナイテッドワールドをやってたら聞いたことはあると思いますが……」
「あ! もしかしてユナイテッドワールドで鍛治師のくせにめちゃくちゃ強かったリンドウか!」
思い出した。トッププレイヤーの一人だ。こんな幼そうな男の子がトッププレイヤー……。
本職は鍛治師で、鍛治のスキルもありながら、戦えるという弱点がないような奴。
「はい。そのリンドウです。あの時はお互いキツかったですね。閉じ込められて……」
「まあ、楽しかった面もあるけどね。へえ、そうなんだ。じゃあよろしくしてもらっていい? 現金な奴だけど私は」
「いえ。僕も前作からあなたの噂は聞いてたので……」
えっ、そうなの?
「私そこまで有名な方じゃなかったけど」
「いえ、その、言いづらいんですが……モデル並みの女の子がいると変態たちから……」
「変態って言い切ったなお前」
「だってそうなんですもん」
そのスレか。たしかに私のこと言われてたな。可愛い子見たって私のスクショ勝手に載せられてな。
まあ気にしてないんだけどさ。そういう盗撮まがいなことするやつってろくな奴じゃないと思ってるし。
「なるほどね。そのスレか。あんたも見てたんだ」
「ちらっとです! 書き込んだりとかはしてません! 僕が見てたのは情報共有スレとかですから」
「あれは便利だったね。どこに何があるかとか共有して貰えたし」
ああいうスレだけで良いんだよな、掲示板は。
「それにしてもリンドウってもうちょい怖そうな男の人と思ってたけど若いね。今何歳?」
「その、中学二年生、です。兄がプロゲーマーでして、兄に教えてもらいながらやってたら上手くなった感じなので」
「へぇ……」
プロゲーマーというには有名な人なんだろうな。
「その、女性に年齢を聞くのはアレだと思いますけど……」
「私? 私は永遠の十五歳」
「えっ?」
「体の方は死んじゃったからね。今電脳アバター状態だから歳取らないんだよ」
「……あ、あのすいませんでした」
「いいよいいよ。地雷じゃないから。それにこの電脳アバターになってるのは私だけじゃないしね」
まだ日本にたくさんいる。私だけじゃないから良いんだけど。
「ほら、暗くならないで。一緒にクエストいこうよ。どうせならさ。それに、君にはいつか頼みたいものがあるから、そう硬くならないでいいよ」
「は、はい!」
このリンドウという男の子は初心で可愛いね。
女慣れしてないな。してないけど勇気出して私に声をかけてきた感じがする。
「さて、じゃ、どこいきますか」
「えっと、鍛治の素材を集めたいのでグルッグル鉱山に……」
「そんなとこあるんだ」
「はい。今日見つけて一人で行くのは嫌だったので……」
「一緒にこいと。わかったよ」
私たちははグルッグル鉱山に向かう。




