オリエンテーション合宿一日目 夜
飯盒炊爨も終わり施設へと戻ってきた。
夜時間はそれぞれが好きなように過ごしていいらしいが、施設の人に迷惑をかけない範囲で遊べということ。
そして、ここにはネット環境はあるが……。ミノルは今それどころではなかった。
「今日の夜は絶対ゲームやろうって決めてたのにー!」
「いや、化学の授業中に寝るほうが悪いだろ」
化学の授業のときに、ぐっすりと居眠りをこいていたので先生に呼び出されマンツーマンで授業を受けていた。
私は傍らに置かれてただただ化学の授業をまた聞いているだけとなっている。つき合わせるなよ私を。寝ていたお前が悪いだろ。
「来栖さん。来栖さんは頑張らないとまた留年しそうになりますよ」
「嫌だぁあああ!」
「なら頑張りましょう」
そういって先生が授業を始める。すると、扉が開いて。
「失礼します。先生、夜桜さんを回収に来ました」
「そうですか。持って行ってください」
「え、時雨回収されんの!? うちのスマホ没収!?」
「さすがにつまらないでしょうし、頼まれたんで」
「……時雨?」
「いや、私はもうこんな体だし、私がいたら話すでしょ。ね?」
「いやああああああ!」
「これもミノルのためだ」
私は真田さんに回収されていった。
事前に頼んでおいてよかった。こういうことにたぶんなると思っていたからな。先生と一対一のほうがミノルも集中できるだろ。
ミノルも逃げ出したいだろうが、留年するということを聞かされたらな。
「さーて、私はミノルが持ってきたゲームでもやるとするかね。真田さんもやるでしょ?」
「そうですね。ログインしましょうか。ネット環境もあるわけですし、自由時間ですから。ただ、お風呂入りたいので入浴時間後でもいいでしょうか? 今から女子の入浴時間なので」
「わかった。じゃ、私をつなげてからいってくれ」
「はーい」
そういって部屋に戻り、私が入ったミノルのスマホと、ミノルが持ってきた……。
「ミノルいろいろ持ってきすぎだろ……。こんなに下着とかいらないし」
「服と下着の比率がすごい悪いですね……。他人の持ってきた荷物にケチをつけるのはあれなんですけど」
「まずコードどこだよ」
カバンの中は大体が下着だった。ミノル愛用のクマパンに可愛らしいブラ。ミノルはそこまで胸が大きくないし、ブラは何でもいいと思ってる人だから大体がスポブラなんだけど……。あいつ付けやすさで選んでるな。
服はめちゃくちゃかわいいの選ぶくせに下着は適当なのがあいつのまず悪いところだな。
真田さんは片手をバッグの中に突っ込み、コードを探していた。ヘッドギアは簡単に見つかった。私のも。だがしかし、下着と一緒にヘッドギアを入れておいてここにありませんということはまずないはず。やるために持ってきただろうからな……。
「え、見つかりませんけど……」
「……リュックの中か?」
「探してみます」
真田さんはリュックを開いて探している。が、しかし首を振る。なかったようだ。取り出されたのは大量のお菓子のみでほかにない様子。
となると、コードは……。
「ミノル本体が持ってるか、忘れてきたかの二択だな……。ごめんね。行ってきていいよ」
「いいんですか?」
「ミノルが持ってるんならやれないだろ……」
「そ、そうですね。ではお言葉に甘えていってきます」
持ってきたタオル類と一緒に真田さんは私をベッドの上に置いて風呂に向かっていった。
クソ、今やれないのかよ。一人で暇していろというのか。




