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オリエンテーション合宿一日目

 バスが揺れる。

 私はミノルの携帯の中にいる。やはりというか、案の定というか、私はオリエンテーション合宿に連れてこられていた。

 だがしかし、スリープ状態にしてもらっている。


「あの、来栖さん。夜桜さんにも景色見せてあげませんか?」

「いや、気にしないで。私車の振動の映像でも割と酔うくらいには車酔いするから」

「そうなんですか?」

「生きてた頃に一緒におかーさんの車乗って旅行行ったことあるんだけど開始からわずか五分くらいで酔ったよねー」

「そう。だからまぁ暗いほうがいい。振動は伝わらないからね。映像が途切れさえすれば酔わない」


 車酔いは本当にきつくて。私が車に乗るときは基本酔い止めは必須。だがしかし、この電脳アバターの体では薬なんてもちろん飲めるわけがない。

 なので、車の中では極力スマホを使わないでもらってる。


「車の映像で酔うのはいいんですが、歩いてるときにも揺れますよね? それで酔いはしないんですか?」

「しないなぁ……」

「不思議な体してますね……」


 それは不思議なんだよね。

 一応このアバターにも感覚というのは少なからずあって、痛覚や味覚、触覚はないが聴覚と視覚はあるので酔うという概念は一応ある。


「シグレ、もうすぐ着くみたいだよ!」

「ああ。早くついて日の目を浴びたい」


 すると、バスが止まる音がした。

 ミノルが立ち上がり、バスから降りる。そして、初めてスマホに光がともされる。私はスマホの外を見るとでかい施設が目の前にあった。


「ここは研修目的で使うような宿泊施設です。まずは列にならび入所式をしましょう」

「入所って言い方が刑務所に入るような言い方っぽいから嫌だな」

「夜桜さん。お静かに」

「すんませんした」」


 つつがなく入所式が終わる。

 そして、中に入ると、中はホテルのような豪華さはなく、本当に研修用の宿泊施設だという無機質な感じ。

 そして、それぞれに割り振られた部屋に向かう。ミノルは奇跡的にも真田さんだった。


「部屋に荷物おいて次どこ行くんだっけ?」

「講堂ですよ。さっそく授業から始まります」

「うえー、授業……。せっかく来たのに……」

「こういう新天地で学ぶのが新鮮で面白いんですよ」

「その通りだな」


 場所が変わると気分も変わる。私は勉強がそこまで嫌いなわけでもないからね。

 

「この授業は大事ですよ。ここでやった授業もきちんと中間テストに出ますからね」

「うへぇ……」

「真田さんは昔から勉強できるよね」

「それあなたがいいますか? 中学の頃大体学年一位だったじゃないですかあなた」

「そういえば真田さんとシグレって同中おなちゅうだったんだっけ?」

「はい。ここは偏差値も割と高かったですし、同じ中学の人が来るわけがないと思って遠くにしたんですが……」

「見事に私とかぶったと。でも、中学の時は面識はほとんどなかったけどね。私は真田さんをおとなしめの子としか認識してなかったし」


 中学時代はミノルとはネットとの付き合いだけだったんだよね。

 中学三年生の時に別の中学だったミノルと出会ってつるんで、その中学三年生の秋か冬くらいにそのテロ事件が起きて、高校一年生の四月にこういう風になった。

 あの時は別にミノルと親友という感じではなかったけど、ミノルは愛情深い形だったからこうなったわけだ。


「ミノルがこの高校に入ってなかったらとか、このアプリを開発しなかったら出会わなかっただろうよ」

「そうですね」

「それよりいいのか? 時間が来るぞ」

「あ、行きましょう来栖さん」

「いきたくなーい……」

「ダメですよ。サボりの生徒には明日とか監視厳しくなりますよ。部屋の前で待機されますから」

「えっ、それはやだ! いく!」


 と、筆箱をもちミノルは走って講堂に向かう。私を忘れていっている。

 すると、真田さんがひょいっと持ち上げる。


「ありがとな」

「いえ。自分で移動できないので仕方ないですよ」

「そうだな。スマホが自分で移動出来たら怖いわな」


 さすがに今の日本にはそんな技術はない。









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