私だって飛びたいの!
恥ずかしさはもう割り切ることにして、私は翼飛行スキルを試してみることにした。
次エリアに向かう最中に、翼を大きく広げ羽ばたいてみると本当に飛べた。
「おお、これはすごいな!」
私は大空を舞う。
開放感がすごい。やはり翼をくださいという歌は本当だった。自由な空だ……。私がひとしきり飛び、地面に降りると、ミノルがぶーっと顔を膨らませている。
「シグレだけずるい!」
「いや、ずるいといわれてもね」
「私も空を飛びたい!」
「翼がなくちゃね……」
ミノルはどうやら私がうらやましいらしい。
翼をもって空を飛ぶ。普通ならできない。ミノルも、ミコトもできやしない。けれども、うらやましいのだという。
どうやったら飛べるのだろうか。どうやったら自分も飛べるのかと尋ねてくる。
「私に聞かれてもわかんないっての……。ランダムスキルの書があればもらえたりするんじゃない?」
「あ……。その、言い出しづらいんですが、ランダムスキルの書って一度誰かがスキル出たらその、もらえなくなるらしくて……。私飛行スキル手に入れちゃったっていうか……」
「あ」
ぽんぽこによって可能性が潰えた。
ぽんぽこは飛行スキルを披露する。ぽんぽこの体が宙に浮き、空を飛び回る。
「空を飛ぶ仲間ですね」
「そうだな」
「二人だけずるい!」
ミノルの嫉妬は最高潮に達してしまった。
頬を膨らませて、ずんずんと歩く。
「ミノル、機嫌直せって」
「ふーんだ」
私が何とか機嫌を直させようとしても話をしてくれない。こりゃ本格的に嫉妬している。怒っているわけではないが、嫉妬しているミノルって割と面倒なんだよな。
放っておくのが一番なんだけど、放っておくと放っておくで少しうるさくなるし……。どうしたものかね。
「飛行スキルじゃなくてもまだ飛ぶスキルがあると思いますよ! たとえば浮遊魔法とか!」
「それじゃ自由に飛べないじゃん!」
「ですよね……」
浮遊というのは飛行と違う。ただ浮くだけ。
「浮遊でも飛べるっちゃ飛べるんじゃないか? 作用反作用の法則があるだろ」
「なにそれ?」
「えっと、まぁ、ジェット機みたいに、こっちに何かを放ったらもう片方はこっち行くって感じの……」
「それをどう使うのさ」
「例えば浮くだろ? そして風魔法で押してやれば飛べるんじゃないかって」
「なるほどー! 私風魔法持ってるもんね! じゃ浮遊魔法取れるように頑張る!」
機嫌を取り戻したようだ。
魔法を同時に使えるのかという疑問は考えないことにする。というか、たぶんできない。やるとしたら重複スキルとかそういうのも必要になるはず。
私がこういうこと言ったら機嫌悪くなるだけだし、ぽんぽこもそれがわかっているのか言わない。
「はっはっは! 空を飛ぶというのはそんなにうらやましいのかい?」
「自分にもわかりかねるであります……」
「ロマンがないなぁ。ヒーローって大体空飛んでるでしょ。スーパーマンとか、アンパンマンとか」
「どちらもマントで飛んでるけど」
というか、落差が激しいぞ例えの。
「空を飛ぶのは人類の夢なんだよ! だからヒーローは飛ぶの! だから私も飛びたいの!」
「主語が支離滅裂ですね……」
「こういうやつだから深くつっこむなぽんぽこ」




