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君って心から

 拠点もできたことだし金を稼がないと。

 私は街に繰り出し困ってる人を探す。小遣い稼ぎのような依頼じゃなくこう、どーんと稼げるようなものがいいのだが。


「…………」

「どうしたんだい?」

「いや……フレンチトースト食べたいなって」


 私は自制心が弱い。


「フレンチトーストなら僕が……そうか。君は食べられないのだったね」

「そう……。まあ寄ってもいいんじゃないか? 飲食店は数多くの人と触れ合うだろう? 困ってる人などの情報が手に入りやすい」

「そ、それもそうか。ミコト、お前賢いな」

「そ、そうかい?」


 私たちはお店の中に入る。

 フレンチトーストを注文した。店員はNPCで、かしこまりましたと言って行こうとしたところを引き止める。


「お姉さん、何か困りごとありそうな人っていない?」

「困りごと?」

「草抜きをしてほしいとか」

「うーん。あ、そういえばこの店の裏で子どもがスリを働いてまして。お客さんも被害に遭ってるので……」

「それを解決したらいいのかな?」

「頼めるのですか? 報酬はそこまで出せませんが……」

「いいよ。やる」

「はい! ではお願いしますね!」


 早速依頼人一人ゲット。

 私はフレンチトーストを心待ちに。そして、フレンチトーストが運ばれてきた。

 フォークとナイフも。私は早速一口。


「おいしーい! ひさっびさに甘いもの食べたなぁ! 感動だなぁ!」

「そうかい」

「ミコトも食べなよ! 美味いぞ」

「……いや、僕は」

「別に悪く思ってないよ。お前みたいなノリのやつはミノルで慣れてる。私がこういう性格なだけだから気にすんな。ほら、あーん」

「ん」


 私は一口食べさせる。


「甘い……。けど美味しいね」

「だろ?」

「よかったぁ。僕は嫌われてたわけではないんだね」

「そう簡単に人は嫌いにならないさ」

「でも、心から人を信用してないだろう?」

「…………」


 こいつ、馬鹿かと思えば案外鋭いのかもしれないな。勉強が出来ないのは本当にしてこなかった、というだけか。

 油断ならないな。


「でも信用しないのと嫌いというのはイコールじゃないからね。嫌いじゃないとわかってよかったよ」

「そうだな」

「僕も君は嫌いじゃないよ。信用もしてる。君みたいな人は信用できる」

「…………」

「警戒心が人より高い。物事の裏を考える癖がある。そういう人を安全な人って言うんだろうね」

「そうかもな。疲れる生き方だけどな」

「そうだね。でも、安全な人は残酷な人でもある」

「何が言いたい?」

「君は、ミノルくんとかを見捨てられるだろう?」


 と、ミコトがいう。


「馬鹿いうな。大体、なぜ今そんなことをいう」

「気になっただけ」

「そうですか。私の中でお前の好感度が少し下がってんぞ」

「ええ!?」


 当たり前だろ。そんな私を深掘りするかのような質問しやがって。


「そんなこと言わないでくれよぉ〜! せっかく嫌いじゃないってわかったのにぃ〜!」

「うっぜ、抱きつくな、今食べてんだろ!」

「うえぇ〜ん……」

「泣き真似かこんにゃろ。言っておくが公衆の面前とか私は気にしないからな。泣き真似は永遠とやってろ」

「うわああああん!!!」

「マジで泣いてんのかよ…………」


 子どもかお前は。大体、お前がまいた種だろうが。


「悪かったよ」

「ほんとぉ……? 僕のこと好きぃ……?」

「はいはい好き好き」

「わーい」


 こいつ訳わかんねえな……。情緒どうなってんだ。結構ぐいぐい踏み込んで来るけど断ったら一気にメンタルやられるタイプか。コイツの方が疲れる生き方してるな。


「それより早く食べたいんだけど。スリの男の子捕まえるんだろ?」

「ご、ごめん」

「いいけど……」


 私は残りのフレンチトーストを平らげた。









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