自制心
鬼神のハルサメについて再び調べているが、圧倒的なんていうような抽象的な言葉しか出てこず、そこまで深く調べることはできなかった。
「ふー、いいお湯だったぁー! 春雨ー、早速ゲームやろー!」
「はっ」
「アバター作成からしないとね!」
私たちは部屋に移動し、ゲームにログインした。
ハルサメがログインしてくるまで噴水広場の前にて待つ。
すると、ハルサメらしき女性がログインしたようだった。初期装備に初期武器は短剣。
「長い剣とかにしなかったの?」
「私はこれで慣れておりますゆえ」
「へぇ、じゃ、さっそく魔物を……」
その時だった。
私たちの背後に男が立ったかと思うと剣を突きつけてくる。
「なんだ?」
「初心者の女は気をつけねえとなあ?」
「PKかお前ら」
PKというのはプレイヤーキラー。
そういうようなプレイ方法で楽しむ輩もいるが、こういうVRMMOはきちんとそういうのも対策はしている。一種の遊び方としては容認しているが、他人に不快感を与えるということで、デスペナが酷くなるのだという。
「…………」
「まずはひと……」
と、ハルサメは男の首元を短剣で掻っ切る。
「なっ……」
「…………」
短剣で剣を弾いたかと思うと、男の顔を掴み地面に叩きつける。
そして、その叩きつけた男の顔を思いっきり踏みつけ殺した。そして、最後の男。最後の男は私の首を掴む。
「止まれ! 止まんねえとこの女を刺すぞ!」
「死ね」
ナイフが飛んでくる。真っ直ぐに飛んだナイフは男の顔に刺さる。
本当に一瞬の出来事だった。
「こんな程度でありますか。ゲームというのはレベル差があるものだと聞いておりましたが……。大したものではなさそうでありますな」
「こえー……。本当に鬼神のような強さだ……」
「この程度の戦いは序の口であります。さっ、魔物狩りでしょう? 参りましょうとも!」
「んにゃ、私はやることあるから」
「ええ!? べつこーどー!?」
「悪いね」
少し残念がっているミノル。
私は二人と離れ一人になることにした。というのも、あれと弛んでいるとやるべきことがまずやれん。
やるべきことをやってから挑まなければね。アイツらは才能で誤魔化してるけど私にはそんなのないから……。堅実に行くべきなんだ
私はそのまま、職業ギルドと呼ばれる場所にいく。
本来は初めてすぐに来なくてはいけなかったが……。登録費用などを稼ぐのに時間がかかった。
「こんちは。職業登録ってできる?」
「はい。では、どの職業になりたいのかをこちらのリストから選びください」
初期職業リストを手渡される。
職業というのはプレイヤーには必須で、職業ごとに上がるステータスや得意な武器が違う。
そして、その得意武器には攻撃力補正がかかるので本来はやるべきだった。
「狩人で」
「狩人ですね。かしこまりました」
私は弓を得意武器とする狩人を選択。
「では職業スキルのための費用3000ブロンを頂きます」
「はい」
私は代金を手渡す。
狩人スキルの書と書かれた本を手渡され私は開いた。狩人のスキルの狙い撃ちというものが。これは矢を当たりやすくするというもの。
まあ、スキル目的ではないからどうでもいいけど。
「これで目的は果たせたけど……。ま、今日は別行動かね……」
今日は一人で何しようか。
とりあえず、バトルはお腹いっぱいだから避けたいが……。ゲームでそんなことを望むのは……。
と、考えながら歩いていると。
「……服、か」
装備の店という名前が。
服……。
気がつくと私は入店していた。
やっぱ服というのは大事だしな。私はそのまま適当に服を見繕う。買ってしまう。
金を貯めようと言った直後に……! 私のバカが……。
「でも、可愛くコーデできたな」
モチーフは森ガール的ななにか。
狩人らしく緑色をベースとしたものを着ている。頭にはゴーグルをつける。このゴーグルがまた可愛い。
「現実じゃ出来ないから楽しまないとね。そう言い聞かせないと無駄遣いをした意味がなくなる」
自制心がなくてごめんなさい。




