椎名 尊という女
煌雨の弓は今の私の最大火力を出せる武器。
こんな名前の弓は絶対強いんです。ウキウキ気分で歩いていると、何やら人だかりができている。
「あはは、ありがとう。僕のファン!」
「きゃーっ!」
「やっぱ可愛いしー!」
最後の声……。
私はそっちに向かうと何故かミノルがいた。今は2時だぞ? まだ学校……てかなんでここに女優の椎名 尊がいるんだろうか。
「ん? あー! おーいシグレーー! こっちーー!」
「…………」
「君の友人かいミノル」
「そう! しんゆー!」
私は呼ばれたのでその騒ぎの真ん中に入っていく。
何故お前は今ログインしているのか、何故お前は椎名 尊とつるんでいるのかを聞かせていただきたいのだが。
椎名 尊は噴水の淵に立っており、私を引き上げるかのように手を差し伸べてくる。
「ああ、ミノルくんが言っていたように綺麗だね、シグレくんは」
「どうも……。おい、ミノル」
「あはは。今日テンコーしてきたんだよ! クラス中大騒ぎでさ! ゲームやってるって聞いたから一緒にやらないかって誘ったの!」
「へぇ……」
「はっはっはっ! 僕も一人でやるのはいささか寂しくてね! 君の友人のお誘いがあったから乗ったまでさ! 僕は魔法使いのミコト。よろしく頼むよ、狩人様」
「なんかキザなやつ……」
だがしかし、女優というだけあり顔はいい。顔がいい。これは女性ファンが多いのも納得のイケメン女だわ。
「よろしく、魔法使いさん」
「ひゅー! じゃー、仲良くなるために狩りいこー! 大物狩るぞー!」
「私もう散々やったんだけど」
「いいじゃん! 私たちはまだレベル低いし!」
「そうだね。僕もレベルを上げなくちゃならないから行きたいな」
「わかったよ……」
私たちは狩場である平原へと移動した。
この椎名という女はイマイチテレビを見ていても良くわかんない女だ。謎に包まれている。
何を考えてるかわからないやつ。
「はっはっはっ! とりあえず高火力魔法を放つ時だね!」
「どっかーんとね!」
「ああ! 爆発魔法、ノヴァ!」
訂正していいか? 何も考えてないわ。
類は友を呼ぶ。普段から何も考えてないミノルが連れてくるやつはこうだな。尊は爆発魔法を連続して使い、魔物を葬っている。
だがしかし、爆発音は響き渡るもので。
「ふぅ、爆発魔法というのは派手でいいが、やはり魔力をたくさん使うね」
「これくらいにして帰る? 帰っちゃう?」
「いや、なんかくるね」
そういうと。
目の前から牛の大群が。
「……あれまずくね?」
「まずいね」
「逃げるし!」
「すぐに追いつかれる!」
二人は走り出した。
だから言わんこっちゃない。爆発魔法、威力は申し分ないがこういうことがありそうだから私はそこまで好きじゃない。
それに、雨とか降ってると威力弱まると思うしな。
「とりあえず、死ぬの覚悟で戦うかな」
煌雨の弓で矢を引く。
放つ。水飛沫を上げながら矢は綺麗に飛んでいった。牛の魔物一頭に突き刺さるとそのまま死ぬ。
さすがだな! だがしかし、数が多いので殲滅は無理だろう。
「シグレ何してるんーーー!」
「死ぬまで戦うだけ」
「なるほど! 素晴らしい勇気だね!」
「なるほど! うちもやるー!」
「真似しなくていいケド」
二人もどうやら戦うようだ。だがしかし、ミコトは魔力がもうないだろう。どうやって戦う?
そう疑問に思っていると。
「ぎゃふん!」
「わああああ!」
二人が牛に轢かれた。
ミコトはただ杖で殴りに行っただけだった。
「バカじゃないのか二人とも!」
戦えないなら逃げろ!
私は仕方ないので、死んであげることにした。何もせずただただ待機。エルフは魔法防御力こそあるが物理防御は育ちにくいのですぐ死ねる。
クソ……。思ったよりアイツらバカだ。




