電脳少女となったワケ
桜舞い散る四月の春。
始まってしまった新学期。私は画面に映る桜を見ている。
「今日で時雨がそんな姿になって一年だねー……」
「こんな姿にしたのはあんたっしょ」
「あはは」
私は、自分の体を持たない存在。
私は友達である来栖 実のスマホの中にいる。呪いとか、作られたプログラムとかではなく、紛れもなく人間だった。
「ま、この姿でも満足してるけどね。言っとくけど軽くこれ生命の冒涜だからね?」
「……わかってるよ。でも嫌だったんだもん」
私がこんな姿になったのは去年の夏の出来事だった。
夏の日にVRMMOの新作が発表された。VRMMOというのは意識をゲームの世界へ持っていき、リアルに体験できるそんな夢のようなゲーム。
だが、事件が起きた。
私たちは突如としてログアウト出来なくなり、意識がゲーム内に取り残されてしまう。
それはテロリストによる犯行でゲーム内に閉じ込められた人たちは帰れなくなった。その事件が解決し、ログアウト出来るようになったのは五ヶ月後だった。
その事件があり、点滴などの延命措置を取られていた人たちは生き返ったが、私は孤独であったがために誰も気づかなかった。肉体が朽ち果て、ログアウト出来ずにいた。
意識だけがVRMMOに残ったせいで身体が死んでなお生きているという状態となった。
こうなった人たちは全国に数万人。数万人がまだゲームに取り残されており、いつ死ねるかもわからない毎日を送っている。
そんな中、この来栖という女は私を生き返らせたいがために電脳アバターというのを作成し、私の意識をそちらに持っていく事に成功した。私は友達である来栖のスマホの中に生きる電脳少女と成り果てた。
「学年で一番のバカだったギャルのあんたがこんなプログラム開発するって……。バカとなんとかは紙一重ってゆーか……」
「ひどくなーい? ギャルなのはお互い様っしょ」
「そーですね」
このスマホの中は意外といいものだ。
スリープ状態にすると私のいる真っ白な空間が暗くなる。電脳世界というのは意外とシンプルで、真っ白な一室の部屋。
「そーいえばさ、またVRMMOの新作出るんだよ。今度は豪華製作陣の超リアルなゲーム……。やらない?」
「いいけど私はどうやってやるんだよ……」
「それは簡単簡単。ヘッドギアをまず二つ用意します。そして、専用のコードを使ってヘッドギアとスマホを繋げて行き来できるようになるんだよね。これは私が独自で開発したんだ! すげーっしょ!」
「マジですごいよアンタ……」
ともかく、それを使えば私もゲームができるということか。でも大丈夫なのかな? 私はいわゆるデータのような存在で、バグとか生まれないのかな?
「電脳少女アプリ開発費でたくさんお金だけはあるし思い立ったらきちじーつ! 買いに行きましょー!」
「行動力のバケモンだよあんた……」
ミノルはそのままゲーム店に直行したのだった。
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