前提条件的な
超絶爆裂ご都合主義回です。
こんな感じのご都合主義は今後ほとんどしません。
稚拙な文章ではございますが、暖かく見守って頂けたら幸いです。
とある高校3年生のA(理系受験生)は、物理が好きなのに「なんか理系っぽく三角フラスコを操りたい」という理由で薬学部を志望していた。
そうして試験を終え、合否発表の日、Aは、同じ大学を志望する友人らと、旧帝国大学と総称される大学のうちの一校へ赴き、なんかそれっぽいボードの前で佇んでいた。
そこには、Aの番号のみが記載されており、他の友人らの番号はなかった。
友人らは意気消沈している。
しかしAは、狂喜乱舞であった。
Aは舞い続け、舞い続け、舞い続け…
終いにはあまりにしつこかったので、友人らにハブにされてしまった。
しかしそれでもなおAの機嫌はよいままである。
そして、慣れてもいないのに、大都会の荒波へ揉まれに行くことにした。
ついでに人生初のナンパに挑戦することにもしたのであった。
「ナメやがってあいつら…俺は○○大学(○○の中には好きな二文字を入れてね)だぞ…!」
悉くナンパに失敗したAは、入学してもいないのにそう呟く。
「携帯の電池がねえ…」
大都会のフリーwifiの波に呑まれた携帯には、もはや電池など存在していなかった。
「ちくせう…」
かなしいね。
そんなA(私服姿&歳の割には老けた顔)の元へ、チャラい感じのお兄さんがやってきた。
「そこの兄ちゃん、ウチで一杯やってかない?」
チャラい感じのお兄さんはこう言った。
それに対してAは、
「道を教えてくれるなら」
と即決して着いていってしまった。
さて連れられた先には隠れ家的静けさを漂わせるキャバクラが。
その雰囲気はまるでナンパに失敗したAを慰めておるようであった。
店内に入ると、ざ・都会と言った感じのケバいお姉さんが、さもAのことをずっと待っていたという風で、手招きしてきた。
下品さすら感じてしまうようなお姉さんの化粧だが、A(男子校生・童貞)には、これが都会の女か、といった一種の畏敬さえ感じさせてしまった。
「お兄さん若いね、何歳?」
お姉さんが聞いてくる。
ケバケバな化粧とは対照的に、その声は透き通っていた。
「じゅ…あ、き、今日から二十さぁ、歳です」
化粧と声とのギャップにAはたじたじである。
Aにとってはこのお姉さんも十分魅力的ではあるが、しかし童貞の憧れは清楚系、といった王道は変わらない。
「おおおめでとぉ!それじゃあ今日は人生初の飲み歩きってとこか、よし、まずはシャンパンいっちゃおうか!」
お姉さんがまくし立てる。
「は、はい」
Aはなすがままだ。
そして、Aの座る席にシャンパンが届いた。
Aは、恐る恐るそれに手を伸ばし、口元へ持って行き、そして一気に飲み干した。
「やるねえお兄さん!」
お姉さんが言う。
その数分後、実は酒に滅茶苦茶弱かったAは急性アルコール中毒で死に、キャバ嬢は物凄い悪態をついた。
*
さて、所変わってこの物語の舞台の世界。
キスト村にはすごい偉い感じのムキムキの魔法使いのお爺さんが滞在していた。
ある日、お爺さんはある家の元へやって来ていた。
その家には、腹を膨らませ、陣痛に耐える美しい女と、その女の夫とでも形容すべき、綺麗な、引き締まった身体をもつ男、というかその女の夫がいた。
お爺さんは所謂助産師として呼ばれたのであった。
そして今、出産の準備が整い、いよいよその時が来た。
女はいきんで、いきんで、いきんでいる。男は女の手を握りつつも不安な目を寄せるしかない。
そのうち、赤ん坊の頭が見えてきて、少しずつ体内から外界へと抜け出そうとしてくる。
そこでお爺さんは徐に手を伸ばし、赤ん坊の頭を掴み、適度な力をもって赤ん坊を引きずり出そうと試みる。
しかしお爺さんは既に呆け始めてきていたのと、ムキムキであったのもあって、お爺さんの握力により赤ん坊の頭が潰れ、頭蓋が脳に複雑に突き刺さった。
間もなくして、すぽん、という効果音が似合うほどの軽快さで、赤ん坊が、いや赤ん坊であったものが抜け出す。
お爺さんは大いに慌てた。
慌て、慌て、そして自分が魔法使いであったことを思い出し、大急ぎで回復魔法を唱えた。
お爺さんは何回も何回も唱え、それが功を奏したのか、赤ん坊の見た目はどんどんそれのあるべき姿へと戻ってゆき、遂には赤ん坊が口を開け、産声を発そうとした。
赤ん坊は九死に一生を得たのである。
しかし赤ん坊は産声は上げずに、こう発した。
「ああいおえいんえいおあっああ」
そう、なんかいい感じに脳が傷つき、いい感じに回復されて、いい感じにシワになって、さっき死んだAの脳と同じ形になったのであった。
Aはもはや異世界転生を果たしたと言っても良い。
しかし、それに気づいたAはすぐさまムキムキのお爺さんを認識し、ショックで、知識と倫理観を残し、自我が治ることなく一切消え去った。
程なくして知識と倫理観のみを備えた赤ん坊は、産声を上げた。
女も男もあっさりしたもので、生きているならいい、とお爺さんを責めることはしなかった。
その後、すぐにお爺さんは寿命となってぽっくり逝ってしまった。
その頃、舞台となった隣の家では、二歳になるとても可愛らしい少女が、母親から、隣の家で赤ん坊が産まれた、お前はもはやお姉さんだ、と伝えられていて、少女はとても嬉しそうに満開の笑顔を咲かせたのであった。