4話 小屋の中に驚きが隠せない
「さ、入って入って」
僕はクロエさんに促されるまま、小屋の中に入る。
そして、衝撃を受けた内装が、僕の見間違いではなかったのが証明された。
「クロエさん、これ、小屋ってレベルじゃないよ!?」
外見は木造で小さめな小屋だったのに、中はかなり広いし、【錬金術】が大いに使われていた。
どのような原理で、小屋を拡張しているのか分からない上に、見たことがない物が置かれていた。
それが何なのか確かめたくて、近くまで寄り、凝視する。そして、取っ手を引いてみると、そこから冷気が漏れ出てきた。
「こ、これ! クロエさん、これも【錬金術】!?」
「そうだよ。レイゾウコって、わたしは名づけたよ」
「こっちも、レイゾウコなの?」
「そっちはレイトウコだね」
何が違うんだろう。僕はレイゾウコのすぐ隣に置いてあるレイトウコを開けた。すると、そこからはレイゾウコよりも強い冷気が漂ってきた。
「クロエさん、この肉……何?」
「それは、一週間ぐらい前に狩ったブラウンボアーの肉よ。一人じゃ食べきれないから、冷凍保存してるの」
肉の保存方法は主に塩漬けや燻製。そうしないと、腐ってしまうらしい。だけど、クロエさんの口ぶりだと、冷凍保存はかなりの時間保つみたいだ。
【錬金術】って、本当に凄い。こんなの売り出したら、すぐお金持ちになれるんじゃないか!?
ただ、これまで凄くて便利な物だと、作るのに時間がかかる上に、面倒そうだ。
「……もう、ダメ。クロノくん、下にお風呂あるから、入ってきて。わたし、もう寝る……」
そう言って、部屋の端に置いてあるベッドに横になるクロエさん。
「え? 僕、どうすればいいの?」
まさか、ここで置いてけぼりを食らうとは思わなかったよ。
「とりあえず、下にお風呂があるって言ってたっけ?」
僕は小屋内をぐるりと見回し、階下へと繋がっていそうな階段を見つけて下って行く。
そこには、やはり小屋の中には似つかわしくない浴室があり、そこから大きな浴場が見えた。
「って、違う違う! ここ、小屋の中じゃないでしょ!」
上階はまだ木造建築であることは確認出来たが、ここは木造建築ではなく、石がふんだんに使われているのが分かる。ただ、普通の石ではなく、表面がつるつるしていた。何なんだろう、この材質。
それに、この浴場、元々あったって感じはしない。
後から、作り足されたものだと、僕は判断した。
小屋の下をくり抜き、整備して、自分のためだけに、浴場を作ったとなると、いかに時間が有り余っているのが分かる。
「僕だったら、どれだけ時間があっても、ここまで立派な物は作らないし、やっぱり【錬金術】、凄い。クロエさんのセンスもあるんだろうけど、ここまで出来るようになると、何か作るだけで楽しいだろうな」
と、クロエさんの称賛はそこまでにして、早速堪能させてもらうとしようかな。
僕は木のような物が編み込まれて作られた入れ物に、服やズボンなどを入れて、浴場に入った。
浴室からも分かっていた通り、物凄く湯気が立っていて、少し視界が悪い。
「これ、百人ぐらいなら一緒に入れるんじゃないか?」
僕は呟きながら、辺りを見回して、浴場の壁際に設置されている、不思議な物の近くに寄って行く。
ヘビのように長い物が、出っ張った物にぶら下げられている。これは、何なんだろう。
そのヘビの先端は膨らんでいて、小さな穴が開けられていた。そして、それが何に繋がっているのか、辿って行くと、金属で出来た、また訳の分からない物があった。
「……? これ、どう使うんだろ――!?」
いじっていると、捻られる部分を見つけて、それを捻ってみると、ヘビから水が出てきた!
「な、何だ!? つ、冷たいぞ! やめろよ!」
だけど、それが止むことはなく、わちゃわちゃしていると、自分が馬鹿なことに気づいた。
金属とはまた違った材質で出来た円形の物を捻って、水が出たのなら、また逆に捻れば水は止まる。
そこで、気づいた。それに、色がついているのを。
「これは青か。それじゃあ、こっちは……ピンク。ということは……」
青い方と並べられているピンクの方を捻る。
すると、先程とは違い、あったかいお湯が出てきた。
「おおっ!? あったか〜い!」
僕はその温かさに歓喜して、ヘビを背伸びして取ると、顔にお湯を浴びせた。
「革命だ〜! クロエさんは偉大だああああああああああ――!」
〜クロエ視点〜
「――クロエさんは偉大だああああああああああ――!」
「!? 何ごと!」
下に増設した浴場から、わたしのことを褒め称えるような言葉が聞こえてきた。
わたしはベッドから体を起こすと、頭を抱える。
「そうだった……わたし、クロノくんを家に入れたんだっけ」
数十分程眠っていただけだけど、眠気はどこかにいった。睡眠が効いたのか、クロノくんの大声が効いたのか分からないけれど。
「これから一緒に生活するなら、クロノくんとの時間に合わせないと」
正確な年数は把握してないけど、少なくとも五百年以上は一人暮らしをしていて、全部自分に合わせた生活リズムを送っていた。
今はもういい時間で、とっくに日は落ちている。
晩ご飯の時間だ。クロノくんはお腹を空かしていることだろう。
「レイゾウコに入ってる野菜と、ブラウンボアーの肉で野菜炒めを作って、それからそれから……」
いつもは適当に済ますが、これからはクロノくんのために作るのだから、料理はちゃんと考えないと。あの子はまだまだ小さいから、栄養のあるものを食べさせてあげたいな。
「誰かのために料理を作るなんて、何百年振りかしらね、ふふっ」
そうして、わたしは鼻歌交じりで、料理を作り始めるのだった。
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