表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は、王道ファンタジーを望む  作者: めぇりぃう
第2章 俺は、生き延びる力を望む
74/152

74話目 ボス部屋 4

誤字報告ありがとうございます···!気を付けているつもりなのですが、結構あるものでして···。今後も見つけ次第、報告して頂けるとありがたいです

 遂に『オークキング』が行動を起こした。漸く、と言ってもいいほどに遅い判断だ。仮にも(キング)を名乗る者として、もう少し早い決断を済まして欲しいものだよ。


 そんな不満はさておき、今は『オーク』軍団に集中しよう。キングの一声により統率──もといビビって固まった奴らは、次の一声で騎士さん達へと目線を移していた。しかし、簡単に動けないのは俺の存在があるからか?ともかくまだ動こうとはしていない。



『一匹残らず殺すのだ!!』



 3度目の声。これにより『オーク』達は走り出した。確か《王の権威》というスキルがあったな。この強制力はその効果なのだろうか。例えば、支配下にある魔物に対し命令出来る〜〜みたいな。


 まぁ、どうでもいいけどね。ここからは少し緊張して事に当たらなければ。奥の手を使うつもりではあるが、その前にやれる事はやってみたい。この数を相手に戦えるのか、試しておいたほうが今後の為になるだろう。


 騎士さん達へと接触するまで、残り10数秒。大群となってやってくるので、もう少しかかるかもしれない。どちらにしろ時間が無い、ということだけは確かだな。


 先ずは転倒させる罠が発動される。後方からキングによる恐喝を受けた『オーク』達は、狂ったように走り出す。あまり足元も見ていなかったのだろう。少し走った先に張られた糸に気付かず、先頭に立つ『オーク』はつんのめって盛大に転んだ。


 転んだ『オーク』に躓いて後ろの『オーク』は転ぶ。その後ろに続く者はどうにか止まる事が出来たが、足止めとしては完璧だった。


 これで時間は稼いだ。


 次に、数を減らすための策を講じる。


 広範囲に掛けると言えば、以前考案した【溶解液霧状噴射(スライムミスト)】が1番だろう。器官に入れば命も刈り取れるだろうし。使う魔力量を多くして、範囲を拡大&威力増大を図っている。


 もしくは《生成:糸》と《溶解液》を掛け合わせたあの技。ただこの技は殺傷能力がね、イマイチなんだ。どちらかと言うと浪漫技だから、今回は使わない事にした。


 天井に配備させていた塵蜘蛛形態(ダスパモデル)による、ミストの散布を開始する。天井から糸でぶら下がり、いい高さでばら撒くにはこの形態(モデル)が1番だ。


 これを三体、間隔を空けて配置してある。全体に均等に、煌めく銀色の霧を振り撒いた。


 傍から見れば神秘的な光景だった。《溶解液》はその技の能力に反して、見た目はかなり綺麗なのだ。ラメが入ったかのようにキラキラとした銀色をしている。それが霧となり、天井から降り注ぐ様は美しいとさえ言える。


 ただ、受ける『オーク』達にとっては最悪なものであったが。



「ブモォォォォッ!」

「ガァァァァァッ!?」

「グァッ、ゴホッゴホッ!」



 吸い込んでしまった。その霧は皮膚を溶かし、喉を溶かし、順々に臓器を溶かしていく。時間は掛かるが殲滅戦においては有効的で、実に凶悪な技だ。こんなの、毒ガスと一緒だもんな。使っているコチラとしても、頗る気分が悪い。


 だが、この数を殺るには外道の一手を打たなければならない。


 全てを潰すことは出来ないだろうが、半分近い『オーク』を留める事に成功した。痛みに悶え、止まってしまえば仕留めたも同然だ。


 キングへの忠誠を見せたのか、あまりミストが効かなかったのか。理由は兎も角、300体近くの『オーク』や『オークリーダー』は罠を抜けて先に進む。


 多少のダメージは負っているようで、足取りはゆっくりだ。しかしそれでも、迷いなく騎士さん達へと殺意を向け、ゾロゾロと歩いていく。


 気が動転していた騎士さん達も、向かってきた『オーク』達に気が付いて剣を構える。数はかなり減ったとはいえ、まだ数の差は圧倒的だ。せめて同数程度にしなければ、騎士さん達に勝機はない。


 さて、ここで次の一手だ。別にここまで数を減らせば、全力交戦でなんとかなる気はする。けど、咄嗟に思い付いた作戦達が上手くいって嬉しいのだ。気分は負け無しの軍師だよ。そこで、あと1つくらいは策を出そうと思ったわけだ。


 次の作戦は実にシンプル。意趣返しとでも言おうかね。


 少し前に見せてくれた例の投石。アレのお陰で《アイテムボックス》の利用法に先が見えた。


 俺の《アイテムボックス》は空想上のコンテナに仕舞う、というスキルだ。コンテナの大きさや数なんかは変えることが出来るので、今までは仕舞うことにだけ目を付けていた。レベルとしては高いのだが、伸び悩んでいたことに違いはない。


 そんな時、投石を《アイテムボックス》にぶち込んだ事で、面白いことがわかったのだ。



 《アイテムボックス》の中で自由に物を動かせる。



 と言うのも、キャッチした時の運動エネルギーは残っていたのだ。コンテナの中で暴れてから、漸く止まった石を見て思い付いた。


 物を中で動かして、外に投げることが出来るんじゃないか、ってね。


 お気づきのとおり、これは作戦でもなんでもない。ただの趣味だ、実験だ。俺の伸び代たるスキルの応用。それを早く試したかった、それだけだ。


 それで、物を動かすと言えば先程入手した新スキル、《念力》の出番となる。そもそもキャスター達の投石を見て真似てみようと思った攻撃法なのだ。一応、スキルの確認だけをしておくか。




《念力》

 【魔力】を消費する。

 物質に対し想像上の力を与える。

 (レベル)に応じて力が上昇する。



《幻術》

 【魔力】を消費する。

 幻影を作りだす。

 (レベル)に応じて質が上昇する。




 ふむ。イメージ通りに動かせる、のかな?とにかく使ってみないと程度は分からなそうだ。ついでに見た《幻術》も同じ感じだな。


 迫り来る『オーク』や『オークリーダー』を前に、かなり冷静な頭でいる。奴らの動きが随分とゆっくりに映る。これはどっちだろうか。死ぬ前に起こると言われるスローモーションか、それとも集中した時に起こるスローモーションか。


 なんて、下らない事を考えるなよと目を瞑り、スキルを発動させた。


 《アイテムボックス》のコンテナをイメージする。その中には日頃から集めている小石、先程入手した石が入っている。その内の小さな石を1つ掴むように、《念力》を発動させた。


 感覚はある。《アイテムボックス》でのキャチボールを練習しておいたおかげだろうか、手を使わずに物を掴む、という理解し難い現象を容易に想像出来たのだ。


 初めの1つで要領を得た。あとはこの感覚を《分裂》で得た複数操作に応用させるだけ。2本、3本、4本とそこまで続けばどんどんと数を増やせる。人間だった頃の手をイメージ。無数に生やして次々に石を掴んでいく。


 中々の数を掴めた。これをコンテナの中で振り回す。


 初めのうちは速度が遅かったのだが、慣れていくとどんどんと早くなっていく。《念力》のレベルが上がったようだ。そりゃこんな無茶な使い方をやってんだ。熟練度抜きに上がるだろうさ。


 準備は整った。閉じていた目を開く。


 『オーク』達は10数メートルの距離にまで来ていた。ミストの効果により『オーク』は負傷。『オークリーダー』はほぼ無傷かな。流石はリーダーと言おうか。数は30体程度だけだが、リーダーの勢いは鬼気迫るものを感じる。


 騎士さん達が一矢報いてやろうと、最後の抵抗の為に動こうとしていた。んー、巻き込まれると危ないから、動いて欲しくないんだよね。まぁ、騎士さん達が動くより早く放てば良いか。


 騎士さん達の傍に配置させている分体は現在2体。他の場所にも居るに入るが、流れ弾が騎士さん達へ当たる可能性があるからね。それもキャッチすりゃいい話だけど、無為に怖がらせる必要も無いでしょ。そんな訳で2体で射撃をしていく。


 射撃、と言っても騎士さん達の前に立たせて乱射するだけだ。俺にエイムというものは備わっていない。下手な鉄砲かずうちゃ当たる理論だ。それに敵さんも数は多い。当たらない訳が無い!



 さぁ、意趣返しといこうかっ!



 《アイテムボックス》を開く。出し入れは俺の体を中心とした半径7メートルの球中なら何処でも可能。2体横に並べば騎士さん達の360度全てをカバーすることが可能だ。


 勢いを与えまくった大小様々な石が礫となって飛来していく。その数は毎秒10発程。どこからとも無く、魔力の気配無しで飛び出してきた石達を、近い距離にいる『オーク』達は躱せない。それらをまともに受け、体中から血を吹き出した。そのまま膝から崩れ落ち、続く石を浴びて絶命する。


 先頭に立つ奴らを仕留めればいいと思っているので、全方位にばら撒くよう撃っていく。なるべく大きな石はリーダーに向けて射出。奴ら、負傷はするけど止まろうとはしねぇじゃねぇか。


 歩速は落としたが持っている棍棒で顔面を守るようにして、リーダー達は進んでくる。そしてその背を追いかけるように『オーク』も進む。


 結局、仕留められたのは『オーク』だけだった。それも最初の十数体だけ。リーダーの皮膚の丈夫さと若干の知恵を舐めていた。想像よりも使えなかった事に舌打ちをしたくなる。


  惨劇を目の当たりにしたのか、騎士さん達は動きを止めて居る。そんな騎士さん達に口調を荒らげながら忠告を出した。



『盾を構えて目と口を閉じろっ!』



 その怒りを込めて。



 天井から巨石を投下した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公さん、中々賢いですね!様々な特別スキルだけじゃなく、相手の統率力を逆手に取って罠を仕掛けますし、アイテムボックスの運用も巧いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ