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俺は、王道ファンタジーを望む  作者: めぇりぃう
第2章 俺は、生き延びる力を望む
69/152

69話目 更に先へ 2

最初は敵ボスの登場からです。すぐ主人公目線に戻りますよー。

※ちょいと変更しました。誤差です

『シンニュウシャ、カ』



 古びた玉座の間で、低く掠れた声が響いた。その声は僅かに魔力が込められており、音は小さくとも遠くまで届く。


 巨大な玉座に腰をかけていた何者かは、下を見下ろしながら考える。


 約1キロメートル四方の広い空間を埋め尽くさんばかりの『オーク』や『オークリーダー』が立ち並んでいた。魔物が整然と並ぶその様は、人間の軍隊を連想させられる。そして、皆が皆その目に"飢え"から成る狂気を宿していた。



『ニンゲンガハッピキ...ソシテ、()()()()()()()()ガイッピキ。スベテ、エサダ』



 その言葉は直ぐに伝わり、理解した『オーク』達は吠え声を上げ始める。待ち望んでいた餌が、漸く手に入る事に歓喜しているのだ。餌が無ければこのまま死んでしまう。死の危機を感じていた『オーク』達が、これに喜ばない理由がない。


 玉座の横には4体、『オークリーダー』よりも体躯の大きい『オーク』──『ハイオーク』が立っている。彼らは何者かの守護である。勿論、戦闘力もリーダーを遥かに凌ぐ。まさに『オーク』の守護者(ガーディアン)達だ。


 彼等は叫び声を上げる『オーク』を睨み付けた。その睨みだけでピタリと音は鳴き止んだ。完全なる力量差、上下関係が確立している証拠である。


 再度静寂が包み込んだ中、玉座の間を支配する何者かが口を開いた。



『ユケ!オロカナシンニュウシャドモヲミナゴロシニスルノダ!』



 『ハイオーク』よりも大きな肉体を持ち、豪華絢爛な武装を纏う魔物──この遺跡の主である『ハイオークキング』が叫んだ声は、広い玉座の間を震わせた。




 ※ ※ ※




 3回目となる休憩が終わり、漸く手付かずの5階層目へと足を踏み入れた。アリエルさんにこってり搾られたので、当然ながら探査は行えていない。説教中に送り出して済ませても良かったんだけど、それはアリエルさんを馬鹿にし過ぎだと思い、何をすることも無く大人しく叱られた。


 5層目も4層目と同じ、ザ・ダンジョンな石レンガ作りの壁、床、天井。光源こそ魔石の灯りがあるものの、道の奥を見通すことは出来ない。薄寒さと不気味な静けさが、この空間に危険な雰囲気を作りだす。


 そんな5層目で俺はあまり動かないことにしている。とりあえずの様子見、という事だ。まぁ、元々サポート役に徹すると言っていた。しかし、久しぶりに出会った人を死なせたくないという気持ちと、魔物由来の戦闘本能から前の層では暴れちゃったんだ。今回はそれらを抑え、補佐を行う。それだけの話だ。


 補佐、と言っても通常の《気配察知》では地形を把握出来ないし、気配も狭い範囲でしか探れない。勿論、罠の場所なんて分かりっこない。補助なんてしようにも情報が無いから、現状は騎士さん達と同じと言える。


 つまり普通の攻略を行い始めるわけなのだ。いや、それが普通だろと言われれば普通なんだけど...。どうしても生身の人間が戦う姿を見るのって、精神的に辛いものなんだよ。もしもを考えて俺は不安で不安で仕方ない。


 罠が発動した瞬間に助ける......それは不可能に近い。俺が居座るアリエルさんならともかく他の人が罠を踏んだ時、最高速度を出しても発動に間に合うわけが無い。気づいた時には、というオチが見えている。それでは補佐とは呼べやしないだろう。エリック君が罠を見つけられる、とは聞いていたが、漏れがあるかもしれない。万が一を考えるのは補佐の役目だ。


 と、言う理由で、アリエルさん及び俺を知る騎士さんの計7人には、分体が護衛という形で着くことになりました。その人の影に潜んでいれば、もしもがあった時に対応可能となる、はず。救えるかどうかは俺の働きにかかっているのだ。気を引き締めよう。


 よっしゃぁ、床のスイッチ、落とし穴、壁から槍。どれでもかかってこいやァ!全て返り討ちにしてやらァッ!


 因みに《影潜み》しか使わない事にしたとはいえ、7体分の魔力消費がえげつないので残る分体1つは延々と『オーク』を喰らう役目が渡されている。隊長さん、すまんな。



「...あれ...なんかシャウルさんの気配が増えたような気がするんすけど...」

「いや、気の所為だ...気の所為という事にしておけ。後で私が問い質す」



 頬を引くつかせるエリック君と、苦虫を噛み潰したような顔をするアリエルさん。2人の会話はよーく聞こえる。だって2人ともの足下に俺が居る訳だらかな。ボソボソと喋ったとしても意味はない......まぁ、俺に聞かれないよう話した訳では無く、隊長さんに聞かれないようなんだろうけど。因みに、そんな事をしなくとも隊長さんには聞かれていないはずだ。何故なら隊長さんはダンジョンのお宝発見に興味津々だから。



「クックックッ...遺跡に眠る大秘宝!それを見つけれられれば私も独立して──」



 と、独り言ちって妄想を膨らませてるから。


 それにしても、やはり驚かれるかぁ。気づいていない他の騎士さんは無反応だけど、気づく2人はビクッとしてたもんな。影分身の術......とでも言って誤魔化そうか。うへ、多重だから禁術だァ。


 この分体が気付かれた、と言ってもこの世界にはスキルというものがあり、その全てを把握している人なんていないだろう。メジャーなスキルならともかく、『リトルリブスライム』という稀有な魔物が持つマイナーなスキル。それを的確に言い当てる人なんて、数は多くないはずだ。なら適当言っても大丈夫でしょう。それこそ影狼(シャウル)が持つ《影操作》の更なる応用編、とでも言えば......危険度が跳ね上がりそうだなぁ。


 まっ、なるようになるさ。戦力的には問題ないわけだし、ね。


 1人で納得した俺は、ダンジョンに潜む罠に対して細心の注意を払いながら、騎士さん達の攻略を眺めるのであった。足下という珍しい視点でね!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! キングがマスター?中々危険のダンジョンですね。よく隊長が呑気に出来ますね。 主人公さん、もう7体まで分体を増やせるように成りましたかぁ。忍法、多重影分身の術…
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