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俺は、王道ファンタジーを望む  作者: めぇりぃう
第1章 俺は、安定した生活を望む
32/152

32話目 それは唐突

 う、うぅ...何とか《吸収》し終えました。かなりキツかった。目を閉じようとしても目なんてものがないから閉じれない。よく考えたらどうやって周りを見ているのだろうか。よく分からないファンタジーだな。


 いや、今はそのせいで余計に苦しめられた。視覚はあるが、味覚と嗅覚が無いことだけが救いだった。あんなもの普通の人間じゃ食えないよ。俺だって経験値の事がなけりゃ喰ってなかった。見るだけでも食欲を失せさせる兵器だよ、あれ。モザイク処理しなきゃ子供に見せられないな。


 経験値的には美味かった。さすが格上の魔物達だよ。味は最悪だったろうな。最近、食に関して求めてきている俺が居たけど、俊敏に引っ込んで行ったよ。暫くは文句を言わないとさ。


 レベルは[19/40]まで上がった。アイツらがもっと大きければ、その分経験値も美味いんだけどね。図体の割には良い経験値だったと思う。


 『オーク』は食すまでに時間がかかるのと、割合的な問題で狙いにくい。一方で虫系魔物達は、食す躊躇いがあるけど経験値がそこそこ美味い。狩りやすいし狙い所ではある。


 実を言うと、虫系魔物ならそれなりの数を見つけてきたのだ。見つけやすく倒しやすい。食べる時は言葉通りに目を瞑ろう。


 狩る対象を定め、俺は行動に移す事にした。


 珍しく本体を動かす。分体達に任せてもいいが、魔力切れになる度に進捗率がリセットされる事がいただけない。


 5時間の捜索により、中々の狩場は見つけている。その近くの安全地帯に本体を移そうと決めたのだ。


 戦闘はなるべくしないよ?それは分体の役目だからね。


 今は2体だけ分体を作成し、そいつらを護衛役として使っている。索敵と戦闘。この2つをやるために、かなり頭を使う。


 4体の分体操作は慣れてきたと言える。しかし、分体だからこそ、という点もある。


 やられてもいい、潰されてもいい、負けてもいい、バレてもいい。


 そういう感覚があるからこそ、気楽に操作を行えるのだ。


 しかし本体は違う。本体はやられたらそこで終わり。分体とは重みが違う。


 よって、この本体を守る2体の分体。コイツらを操ることにも緊張が生まれる。ミスをすれば、しくじれば。俺が死んでしまうからだ。


 最近安全地帯に身を置きすぎて、何時どこからともなく襲われる可能性がある、この恐怖に竦んでしまう。


 森を進めていく中で、必ず草むらに対して《鑑定》を忘れない。隙間からでも情報は捉えられる。情報を捉えたらその草むらには警戒する。


 上も同様だ。飛行可能な魔物から襲撃されたら反撃出来ないかもしれない。いつ来ても対処できるよう、上にも警戒は怠らない。


 そんな風に移動をして行った。




  ※ ※ ※




 気付いたら夕方を迎えていた。あれから発見という発見もないまま、移動だけで1日が終わってしまった。


 エンカウントした魔物との戦闘もそこそこに、本体の移動だけを優先させていた。おかげで森の奥までかなり進めることが出来たと思う。明日からはここを中心にして動ける。魔物狩りが捗ることだろう。


 辺りが暗くなる前に太めの木を見つけておく。見つけた木を《溶解液》で加工して、本体が入れるくらいの寝床を整える。


 そうしたら寝る前の支度は完了だ。スライムだから、お腹が空いたとかお風呂に入る、とかも無いからね。久々に入りたい気持ちはあるけれど。


 今日の探索で見つけた物を確認しておく。


 木の枝5キログラム程、石20キログラム程、『イスニヒト』1つ、虫系魔物3体。『イスニヒト』は速攻処理。《吸収》様に喰われて行った。虫系魔物達は格下の魔物達だ。実は紹介していなかった、紹介するまでもなかった魔物達。コイツらとよくエンカウントするんだよね。『ベホラ(略称)』並の雑魚敵よ。経験値の足しにしておいた。



 さて、確認と処理が終わり、辺りが暗くなってきた。遠くで狼の遠吠えが聞こえてくる。狼って夜行型なのかな、とか考えつつ本体は寝床へと入った。


 これからやる事は1つであろう。


 有り余る魔力を1つの分体に明け渡す。その分体を操って、本体から少し離れた茂みへと移動させる。


 もう真っ暗だ。灯りなんてない。夜の森ってやっぱり怖いよなぁ、と呑気に考える。でも、それだけ。あくまでも分体が見ている風景。怖いとか思うけど、本当にそれだけ。


 《鑑定》で自分のステータスを確認する。《風起こし》は未だにレベル3だ。とにかくレベルアップへ向けて、使い続けてみよう。


 昨晩の失敗を生かす。竜巻のように螺旋状で風を起こそうとしたが、あれは風力不足だった。けど、形は悪くは無いと思う。足りないのは力。


 よって、今回は多めの魔力を注ぎ込み、大きな風を起こそうと考えたのだ。失敗しても良いように分体で、離れた場所でやるのさ。


 『リトルインビジブルスライム』になってから、格段に魔力量が上がった。後半の探索では魔力の使用が少なかったため、『リトルウィキッドスライム』の時の全開よりも多いくらいに魔力がある。



 ある程度離れた地点までやってきた。暗くてほとんど前が見えなくて怖いけど、分体だから躊躇いなく進めたね。


 さぁ、いっちょやってみますかー、と魔力を溜め始めた次の瞬間。



 その分体の視界いっぱいに映った、大きな口、鋭い歯。そして、為す術もなく、その口に吸い込まれた。口は閉じられ、分体の(コア)が粉砕される。



 あまりに一瞬の出来事であった為に、俺は反応すら出来なかった。分体だからと油断していたのだ。


 心臓があったらバクバクと音を立てていただろう。凄く、怖かった。ホラーゲームでもやった気分だ。ビックリさせる系の。


 分体と視界を共有していたから、食われた瞬間を見ている。俺が食われた、と言っても過言ではない。


 木の幹の中でガクガクと小刻みに震える。



 もし、あれが本体であったら...。



 そう考えるだけで震えが止まらない。


 ちょっと連勝が続いていたから、調子に乗っていたのだ。俺が、スライム如きが調子に乗っていい訳がなかった。


 勿論、俺だって最強になった気で居た訳では無い。が、少し図に乗っていたことは確かだ。接敵して、触れてしまえば勝ち確だと考えていたのだから。


 俺はまた学んだ。



 何か察知系のスキルを得るまで、夜の外出ダメ絶対。



 今寝ると、俺の分体を食らった奴に襲われるかもしれない。


 しかし、分体に殆どの魔力を渡してしまっており、本体には僅かしか残っていない。


 つまり、どうすることも出来ないのだ。分体を作って偵察に行くことも、《溶解液》で迎撃する事も。


 天に祈りを捧げた後、俺は息を潜めて寝る事にした。まだバレにくい位置に寝床を作っておいて良かった。これなら多少は安心できる、はず、と信じたい。


 最後に周囲の音を確認する。


 物音はしない。襲われる寸前も、茂みの音すらしなかった。《鑑定》による発見もできなかった。


 隠れるのが上手い夜のハンターが居たのだろう。最悪だ。かなりでかかったイメージがあるけど、もしかして『ハンヴ(略称)』かな。


 とりあえず、来ないでくれよと切に願いながら、俺は意識を闇へと放った。

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