11話目 新たなスキル
すぅ、はぁ。『リトルリブスライム』に進化だーーーっ!
〈『リトルリブスライム』へと進化しました〉
体を光が包み込む。今度は見た目に何かしら変化が起こるのかな?視点の高さは変わらない。大きさに変化はないようだ。
十秒足らずで進化は完了した。何かが変わったという感覚はないので、即座に《鑑定》を使用する。変化を見たいもんね。
種族:リトルリブスライム
称号:異世界からの来訪者
レベル:1/12
ランク:F
体力:G
魔力:E-
攻撃:G
防御:G
俊敏:G+
運力:C
スキル:《鑑定 Lv.4》《アイテムボックス Lv.3》《言語理解 Lv.10》《溶解液 Lv.3》《吸収 Lv.2》《体当たり Lv.2》《疾駆 Lv.2》《風起こし Lv.2》《分裂 Lv.1》
おっほーっ!このリトルリブスライム、魔力が多いっ、かなり多くなっているっ!これは《風起こし》のスキル上げをする余裕も出てきたのでは...!?俺はまだ諦めてないのだよ...?
それ以外のステータスは〜...あ、うん。あんまり変わらないな。ちょっとずつは上がっている。けど、はぁ。ほんと早く《鑑定》のレベルを上げないと、どれだけ強くなったか分かりゃしない。
っとと、へぇ、新しいスキルが増えているではないか!《分裂》って、俺分裂できるのか!凄いな。さすが希少種。俺が選んだ理由なだけはある。
え?安直じゃないか、って?いやいや、希少種はそれだけで強いのだよ。それに、一気にランクを上げるとそこで打ち止め、とかよくある話だ。ここは段々と上げていく方が、最終的に強くなるケースが多いのだよ。
まぁ、ね。俺のメインウェポン《溶解液》を強化するような『リトルアシッドスライム』もありだと思うよ。でもさ、敢えて酸性にする必要あるかな、って。別に《溶解液》で困っていないし、俺は《溶解液》のポテンシャルを信じているし。なんなら《溶解液》で世界最強狙っているし。と、言うわけで、『リトルコアアシッドスライム』は却下されたのだ。『ミドルコアスライム』はさ、普通過ぎるじゃん?選ぶ気なくなるって。絶対その後に来る『ラージコアスライム』で終わりだって。これはある意味で消去法なのよ、『リトルリブスライム』を選んだのは。
さてさて、新しく覚えた《分裂》。どんなのか教えてくんなまし。
《分裂》
魔力を消費する。
自身を指定した数に分裂する。
分裂後の分体に意思は宿らない。
《吸収》により回収可能。
(レベル)体分裂可能。
ほへぇ、なるほどなるほど...まっ、説明読んだだけじゃ、全く分からないけどな!
試しに使ってみなきゃだな〜。あー、こういうの楽しいよね〜。新スキルってだけでもワクワクするのにさ。俺には子供心が残りまくっているのですよ。
さぁ、いってみよう!《分裂》!
っっっ!!?痛ただただだ...だ...だ...あ、あれ、痛くない?ん?何これ、なんなのこの感覚...?なんか、こう、体が裂ける感覚!それなのにぜんっぜん痛くない。むにゅん、ちゅるんって裂けたった。
今までにない新感覚に驚愕したものの、何とか落ち着きを取り戻す。そして分裂した俺の意思がない、もう一体を見やる。
色は青。形はしっかりしている系。ドロドロしてない、って事ね。どちらかと言えば可愛い系ってやつ。コイツは俺と瓜二つな訳だから、俺もこのような見た目なのだろう。ようやく拝むことのできた、今世の俺の姿である。...2回ほど進化してしまったけども。
ふむ、ふむ。これは普通のスライムにしか見えないな。何が違うんだ?俺のイメージ通りの、普通なノーマルな青いスライム。専門家ともなれば、外見だけで判別可能なのかも。...専門家が居ればの話だけど。
さて。...特にすることないなぁ。分かったことと言えば、《分裂》すると体力と魔力が半分になる。たぶん。今すっごい脱力してるもん。その上で、この子何ができるのか見てるんだけど、ピクリともしない。本当に意思がない、物質と同じってことなのかな。いわゆる人形。
...ん?人形?ってことは、俺の意思で動かせたりできるのかな?情報共有とか、遠隔操作とか。分体にできるんじゃないか?
自分の考察に、オタク脳がピーンと反応する。よくあるじゃないか、人形を自分の替りとして闘わせたり、斥候として使ったりするやつが。俺の《分裂》により作り出した分体も、そういう能力があるのかもしれない。と睨んだ訳だ。
善は急げ。試しにやって見るか。
まずは意識を目の前に居る分体に向ける。ぷるぷると震えることしかしないコイツに、跳ねろ!という命令を出す。目なんてないが、姿形の等しいスライムがお互いに見つめ合う。
......反応がない。が、なにか手応えはあった。もう少し意識を向けよう。
意識を向ける。このぷるぷる動くスライムと自分とを繋ぐイメージだ。魔力の糸的な何かを考える。
...できない。じゃ、あれだ。コードだ。パソコンに繋ぐコードをイメージ。これは慣れ親しんだものだからか、糸よりは上手くできる。それを俺の体から出し、コイツにぶっ刺す。いや、接続、と言った方がいいか。
すると、俺と前にいる分体とが、なにかのリンクに成功した感覚になる。
俺のイメージの中で、体が2個に増えた、という感覚だ。それでいてなんら不快感もなく、まるで右手と左手を同時に動かすように、俺は2体を同時に動かし始めた。
本体を前に進ませ、分体をその分下げさせる。
本体を右に動かし、それに合わせて分体を本体の正面からズレないように動かす。
2体同時に跳ねさせる。ぴょんぴょんと跳ねる姿は、俺から見てなにか微笑ましいものを──って、これ俺自身だ。やめよう、そういう思考をするのは。
とにかく、上手くいったみたいだ。俺が期待していたような結果ではないが、分体を動かせることが分かっただけでも大きい。気づかなければ、ただ単に魔力を浪費する肉(?)の壁を作る無駄スキルとなっていただろうから。そして、希少種に惹かれた俺を呪うことになっていただろうから。
《鑑定》で見れば、《分裂》のスキルレベルがなんと4にまで上がっていた。なるほど、スキルレベルの上昇条件は使用回数だけではないみたいだな。使い方が良ければかなり楽に上げられる、と。これまた良い情報を手に入れた。《鑑定》と《アイテムボックス》のレベル上げも効率よくできるかもしれない。
くーっくっくっく。やはり面白い。こういう強化、育成は楽しい。自分の可能性ってやつを模索することは、今の俺にとって生存確率アップに役立つ。楽しみながらの自己強化とか、この上ない贅沢。満喫しないとね。
分体を《吸収》するか悩み、次の戦闘で試したいと考えそのままにすることにした。
戦闘経験を積みたい。しかし殺られたくない。この背反する2つの願望を一片に叶える方法。それこそが、この分体を使って闘う、だ。
分体はあくまで分体であり、たとえやられても本体には影響が無い。また、分体を操っているのはあくまで俺であり、戦闘を行うのは俺。死のリスク無しに、経験を積むことができるという寸法だ。
上手くいくかは別として、折角《分裂》してしまったのだから使ってみたい、というものが本音でもある。




