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裏道小道

012


 乗合馬車を使って、初めて1人で王都の門にたどり着いたロルは、いつもとの違いをはっきりと感じていた。


「ん~! やっぱり、露骨に視線が無いだけでも最高!」


 獣人のままの姿で乗合馬車に彼と一緒に乗っているだけでも、他の乗客には舌打ちをされ、汚いものでも見るような視線を向けられる。彼はさり気なく私をかばうが、王国民はそれでも悪感情を押さえようとはしない。王国民、いや人という種族は本来こうなのだ。自分たちが最高の種だと言わんばかり、に自分たち以外全ての種族を蔑む。彼がおかしいだけで。

 しかし今の私は、彼がくれた魔道具のおかげで、どうやら人族の子供に見えているみたいで、やたらと色んな人に声をかけられる。

 例えば、保護者の有無を問われたり、励ましの言葉をかけられたりと、それは心から心配して声をかけているようで、いつも向けられる類のものではなかった。普段との違いにかなり戸惑ったが、いつもは見ることのできない彼らの側面を垣間見た。しかしその優しさや親しみが相手の姿形が変わったぐらいで、憎しみや蔑みに変わるのは人の不可解なところだ。


(でも最近、王国が1番その傾向が強いのよね、昔はさほど他と変わらなかったのに......)


 その点、彼は私達にそんなことお構いなしに接する。王都の中で見かけたハーフやクォーターに対しても人族と何ら変わらない対応をする。近頃は、彼が変わっているのではなくて、そもそも基盤としてる考え方が違うのでは、と思うようになった。彼自身、ここらでは珍しい黒眼黒髪だし、私は王国民の生活スタイルを大抵知っているが、彼はここらでは見慣れないことを習慣としていたこともあった。案外彼は遠く地の人族で、そこの人族は私達に対しても友好的なのかもしれない.......なんてことを考えながら、大通りを少し外れた通りを通っていた。


「あ、あった。この前来たとこ」


 そのお店は狭い裏路地にひっそりと構えていて、大通りからチラッと覗いただけでは見つからないようなお店であった。ここは前に彼と一緒に王都に来たときに見つけたものだ。

 私達のような種族は、こうした人の国の人通りの多いところや、階級の高い者たちが住むところには、絶対といっていいほど店を構えることができない。そのため、治安の悪いところや立地の悪いところに店を構えざる負えないといった事情がある。ただ裏を返せば、初めて行った人の国でも大通りを外れたところを探せば私達が利用できるお店がある、というわけだ。大抵そういう場所は治安が悪い場合が多いが、そこにいる彼らも似たような背景があるので、皆かなり友好的な場合が多い。

 .......そういった王国民が知らなそうな知識を何故彼が持っているのかについては非常に疑問ではあるが。


 私はカランコロンと小気味のいい音を立てながら、見た目とは裏腹によく手入れのされている扉を開けると、向かいのカウンターに座っていた若い女性がこちらに気がついたのが分かった。


「ん、なに? 人間の子供がくるようなところじゃないよ、さあ帰った帰った」


 彼女は私を一瞥すると、興味を無くしたみたいで手に持った本に再び目を向けた。


「ここに来たのは初めてじゃないですよ、私」

「は?何言ってんの?」

「これで分かりますか?」


 私が魔導具の腕輪を外すと、彼女は目を見開いた。彼女は急に立ち上がり、店内に派手にガタッと椅子が倒れた音が響く。


「あああああぁ! あのときの腐れ野郎の奴隷の子! あの子だったの!」

「分かって頂けたようで。あと私は成人してますから」

「え!え、貴女その腕輪どうしたの! 不味いんじゃない! ど、どうしよう! や、厄介ごとに巻き込まれる前に早いとこお店畳まなくちゃ!」


 彼女は見る間に取り乱して、本気で店仕舞いを始めようとしたので、私は慌てて彼女を宥めつつ事情を告げた。


「ふぅ...........悪かったね、取り乱して。確かに改めて良く見てみると、逃げ出して来たにしては軽装だし。ふむ......血色もいい、ちゃんと食べているみたいだね」


 彼女は私をしげしげと見つめるとそういった。


「もう十分でしょう。着けてもいいですか」

「ああ、悪いね。もう十分さ」


 私は再び腕輪を着けると、彼女は興味深そうに目を細めた。


「その腕輪。貴女の主人の人が作ったの?もしかしてその首輪も?」

「作ってる姿を見たことはないですけど、彼の自作の魔導具をいくつか目にしたことがあります」

「へぇそうなんだ、驚いた。さっきの言葉は訂正するわ。決して悪い人じゃなさそうね」

「ええ、まぁ」

「ねえねえそれと......っと、貴女ばかりじゃ不公平ね。私の名前はネイ。何か聞きたいことはあるかい?」

「ええっと、ネイさんはどうしてここにお店を? 見たところ人のようですが......」

「あー、私はね。純粋な人族じゃないのよ。曾祖父が鼠人族でね、ワンエイス、或いは亜獣人ってやつさ。他の都市にいたときは普通にお店出せたんだけどね。一攫千金を夢見てさ、王都に来たのはいいんだけど。いざ店を構えようとお役所にいったときね。あんの王都の連中といったら!私の家系からなんやらをやたらとねちっこく調べて『貴女には瑕疵が認められますので、出店の許可が出せません』とかのたまうの!ほんっと腹が立つ!お金なくて帰れないし、仕方ないからここに店を構えているってわけ」


 彼女は悔しそうに拳を握りながらそう語っていたが、はっとこちらをみると少し恥ずかしそうにした。


「ちょっと話が過ぎた......? 貴女は? 話したくないならいいけど」

「私は見てもらった通り兎人族。今はロルって呼ばれてるわ。私の祖国であるライオネルが滅ぼされた後、奴隷になって......まぁ、今に至るってわけ」


 わたしがそういうと彼女はニヤリとし、手を差し出してきた。


「へぇ中々大変そうだけど、穀物に関してのことならウチを頼りなさいな! お安くしとくよ」

「そうさせてもらうわ」


 私達は握手を交わすと、彼女は両腕を大きく広げた。


「それじゃ、改めて。ようこそ、私のお店『砂鼠』へ!歓迎するよ!」

ちょっと遅くなりましたね。あやふやだった記憶と設定を補完してたらこんな時間でした。中途半端ですが許して。

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